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    分子生物学 (ぶんしせいぶつがく、Molecular biology)は、生命現象を分子を使って説明(理解)すること目的とする学問である。現在では、脳、再生、免疫、癌などに研究対象が広く拡大しており、21世紀の現在、生物学の主流ともいえる。

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分子生物学

分子生物学 ぶんしせいぶつがく Molecular Biology
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

生体の分子的な構造や機能にもとづく生物現象の基盤を解明しようとする生物学の新しい研究分野。とくにタンパク質核酸(DNAとRNA)、酵素など、生命現象に不可欠な分子の構造と、これらの分子が細胞や器官の中ではたす機能的な役割との関連を研究する。

II

DNAの構造

分子生物学の実質的な幕開けは、1953年のクリックワトソンによるDNA(デオキシリボ核酸)の構造の発見だった。この発見が重要なのは、DNAが世代から世代へと遺伝情報をつたえていく分子だと解明したことにくわえ(→遺伝学の「遺伝子の活動」)、DNAの構造の発見が遺伝情報伝達のメカニズムの解明に直結したからでもある。

DNAはらせん形構造をした2本鎖の分子で、2本の単鎖がアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の塩基でつながっている。相手鎖との間で、アデニンはチミンのみと結合し、またグアニンはシトシンのみと結合する。

DNAが複製されるときは、2本鎖がわかれて単鎖になる。この単鎖に新たな塩基が結合していくわけだが、アデニンにはチミン、グアニンにはシトシンというふうに結合相手がきまっているので、新しくできあがった2本鎖のDNAは、もとのDNAとまったく同じものになる。

このようにして、細胞や器官の性質を支配する遺伝情報が、細胞分裂なら新しく生じた娘(じょう)細胞に、生殖なら子に、それぞれ正確につたえられる。

1

DNAがRNAをつくり、RNAがタンパク質をつくる

DNAの複製によって遺伝情報が正確にコピーされることがわかると、次に、これらの情報が細胞の活動に実際にどのような影響をおよぼすのかを解明する研究がはじまった。

まず、DNAが転写という過程をとおして、RNA(リボ核酸)という単鎖の分子にコピーされることがわかった。DNAの複製の場合と同じように、DNAの塩基配列が正確に転写されてRNAができるのである。このRNAが、転写後の処理過程をおえると、媒介分子としてのメッセンジャーRNA(mRNA)ができあがる。

mRNAは核外にでて、細胞質中のリボソームに移動する。そしてリボソームでは、mRNAが翻訳されてタンパク質が合成される。mRNAにふくまれる、3つの核酸塩基からなるコドン(トリプレット)が、それぞれ特定のアミノ酸を指定し、はこばれてきたアミノ酸が結合してタンパク質ができあがる。→デオキシリボ核酸の「タンパク合成」

たとえばACCトリプレットはアミノ酸のトレオニンを、CCCはプロリンを意味する。こうしてDNAの塩基配列にふくまれていた遺伝情報の指定どおりに、アミノ酸がつながってタンパク質が合成されることになる。

したがってDNAの塩基配列が変化すれば、合成されるタンパク質にも変化がおこる。たとえばACCトリプレットのAがCにかわると、トレオニンではなくプロリンがつながってしまう。タンパク質はそれぞれ特定の役割をもっているので、タンパク質の機能に影響をおよぼすような変化がおこれば、生物の形態や機能に変化が生じる。

DNAにふくまれる情報の違いによって、目の色や、血友病などの遺伝性疾患といった、個人がうけつぐ形質に違いがでる。こうした遺伝情報の流れからでてきた「DNAがRNAをつくり、RNAがタンパク質をつくる」という結論は、「分子生物学の中心ドグマ」とよばれている。

2

遺伝子クローニングとハイブリダイゼーション

以上のような大きな進展が、1950~60年代にみられたわけだが、分子生物学が飛躍的な発展をとげたのは、遺伝子クローニングの方法が開発された70年代だった。遺伝子クローニングによって、生物のゲノム(染色体にふくまれる全遺伝子)を構成しているDNA配列から、DNA断片を分離することが可能になり、したがって、特定の遺伝子をふくむと推測されるDNA断片を同定できるようになった。

DNA断片の同定には、ハイブリダイゼーションhybridization(遺伝子型のことなる細胞を融合させて雑種細胞をつくる)という手法もつかわれる。ハイブリダイゼーションの過程では、クローニングしたDNAを放射性同位体で標識した後、単鎖にわける。この単鎖は、相補的な塩基配列をふくんだDNAやRNAならどんなものとでも結合するので、プローブとしてつかうことができる。トレーサー

まずDNA断片を大きさによって分画し、フィルターにうつして固定する。次に、目的のDNAを放射性同位体で標識し、これをプローブとしてハイブリダイゼーションをおこない、これと相補性のあるDNA断片を検出する。この方法は、開発者のエド・サザンの名をとってサザンブロット法ともよばれている。

このサザンブロット法と似た方法にノーザンブロット法がある。サザンブロット法がDNAをフィルターにうつすのに対し、ノーザンブロット法では、さまざまな組織からとったRNAを利用する点に相違がある。このRNAと、標識したDNAプローブとでハイブリッドをつくる。これによって、ことなる組織内にふくまれる、問題の遺伝子と相補性のあるRNAが検出、定量される。

これらの方法が開発されたことによって、遺伝子の構造や発現に関して多くの情報がえられた。

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