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生物の交配をコントロールして遺伝形質を人為的に変化させること。育種のおもな目的は、人間にとって利用価値の高い生物をつくりだすことで、食料(→ 食料需給)、畜産、ペットや園芸品種観賞用(観葉植物)などの作出のためにおこなわれる。 もっとも素朴な育種は、人類の歴史と同時にはじまった。古代エジプトのピラミッドに描かれた壁画から、イヌの育種は少なくとも4000年前からおこなわれていたことがわかっており、可能性としてはその1万年前からおこなわれていただろうと推測されている。古代文明の時代においても、すでにウシやヒツジ、ヤギなどが家畜化され、また現在あるコムギやイネなどの穀類の大半が品種化されていた。 しかし古代社会における育種は系統だったものではなく、今日一般的な農作物の育種はほとんど16世紀以降、とくに20世紀の近代遺伝学の登場とともにはじまった。
育種の歴史は、メンデルの法則がド・フリースらによって再発見された1900年を境に、2つの時期にわけることができる。
メンデル以前の育種は、集団選抜とよばれる方法で、動植物の各世代からすぐれた形質をしめす個体を選別し、繁殖させた。しかし、これには問題点もあった。 第1は時間がかかり、確実性にかけることである。小規模な動物の群れや小区画の植物の場合、ときには数世代にわたって獲得されてきた形質が1世代でうしなわれてしまうこともあった。第2は、選抜によってある形質(たとえばウシの泌乳能力)が向上しても、ほかの形質(多産性や耐病性)がそこなわれる場合があるということ。第3はとくに植物の場合、雑種が同一形質の子孫をのこすように固定せず、いずれかの親の型にもどることがあるという点。第4の問題点は近親交配に関するものだった。のぞましい形質を固定するために近親交配をくりかえして、大多数の遺伝子座でホモ接合体となっている近交系をつくりだす方法が一般におこなわれていたが、近交系は生存力や繁殖力が低下する場合が多かった。 → 遺伝学の「集団における遺伝子」
しかし、メンデルの業績が再発見され、1930~40年代に集団遺伝学が発展してからは、より予測性のある科学的な育種が実践されるようになった。メンデルは、形質は個別の単位形質(現在、遺伝子とよばれるもの)として遺伝し、次の世代においてもまじりあったり他の形質によって侵害されたりしないことを指摘した。 メンデルの法則の意義は、育種の結果を分析すれば次世代にはどの部類の個体がどのくらいの割合で発生するかを予測できることをしめしたことだった。 メンデルは単純な質的形質(エンドウの背丈の高低やマメのしわの有無など)をつかったが、20世紀の遺伝学によって、量的な形質(たとえばムギの穂が無色から赤茶までのどの色調に該当するか)も形質を遺伝するメンデル因子をくみあわせて予想できることがしめされた。 現代の育種は分散分析などの統計学を活用して、数多くの主要な農作物や家畜の改良にめざましい成果をあげている。その反面、のぞましい形質をもつ個体を交配し、次世代の中からすぐれた個体を選別する基本的な方法は18世紀からほとんど変化していない。
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