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ヨーロッパ人がはいってくる以前から南北アメリカ大陸の各地にすんでいた先住民の神話。 中世ヨーロッパでは現在のインド、中国、日本一帯をスペイン語でインディアスと総称していた。そして西方航海にのりだしたイタリアの探検家コロンブスが1492年、バハマ諸島のワトリング島(サンサルバドル島)に到着したとき、彼はそこをインディアスと信じていた。しかし、ヨーロッパ人がおとずれる以前から、このアメリカ大陸には先住しているさまざまな民族がいた。諸説あるが、彼らは数万年前にユーラシア大陸のシベリアからベーリング海峡をわたってアラスカに渡来したと推測されている。 おおまかにいえば、長大な南北アメリカ大陸の両端には狩猟採集民族がくらし、中央部にはアステカ、インカ、マヤの古代文明がさかえて、南北アメリカそれぞれの中央域には未開農耕民族の文化がひろがっていた。「インディアス」の住人として、北アメリカ先住民をインディアン、南アメリカ先住民をインディオとよぶ慣習が、コロンブス以来定着しているが、これはヨーロッパを中心とした見方の反映にすぎない。 → アメリカ先住民
東グリーンランドからシベリア東部にかけての極北地方で狩猟・漁労生活をおくるイヌイット(エスキモー)の伝承では、原初世界は次のようにかたられている。 太陽はうつくしい女性で、弟である月と同じ家にすんでいた。毎晩、彼女のもとに男がかよってきたが、正体はわからない。あるとき彼女はそれがだれなのかをたしかめるためにランプの煤(すす)で男の背中をなでておいた。夜が明けると、弟の着ていたトナカイの毛皮に煤がついていた。おこった姉は、ナイフで自分の胸を切りとり、弟になげつけて家をでていった。弟も姉のあとをおい、こうして、太陽と月は空でたがいにおいかけあうようになった。
巨人から生まれた1つ目の海の女神セドナは、おさないときから貪欲(どんよく)で、ねむっている両親の手足を食べはじめたので、沖合で舟からほうりだされてしまう。セドナは必死に舟べりにつかまったが、父親に指を切られて海底にしずんでしまう。このとき切られた指はクジラやアザラシや魚になった。その後セドナは海の生物たちをきびしく監視して生きているとされる。 おそろしいセドナの姿は、ふつうの人間はみることができないが、アンガコックというシャーマンになると、みることができる。アンガコックになるには、トルナックという守護霊の加護が必要とされる。トルナックには、人間の姿をしたもの、石の形をしたもの、クマの中にすむものの3種類があり、クマの中にすむものがいちばん呪力が強い。このトルナックの呪術作用によって、シャーマンは病気をなおしたり、天候を変化させたり、狩猟の恵みをえたりすることができるという。
文字をもたなかった北アメリカ先住民の神話は、すべて口承による。それをはじめて記録したのは17世紀のイエズス会修道士だとされるが、本格的な神話の採集は19世紀後半にはじまった。17世紀には2000以上の独立した諸部族がいたといわれ、現在でも300の諸部族が保護区でくらしている。 彼らの宗教の多くは汎神論的で一神教の傾向はあまりみられず、その崇拝の対象は、神々や精霊から動物、木、森、山、海におよび、ヨーロッパ人をおどろかせるほどの深い信仰心にささえられた日常生活をおくっている。彼らは、木も山も人間と同じ存在であり、人間同様に知性や感情や意志をもつものと考えている。
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