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温泉

温泉 おんせん
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

地球内部の熱によってあたためられた地下水が、自噴することを温泉という。無機物を多く溶融しているものを鉱泉として、低温のものを冷鉱泉、比較的高温のものを温泉として区分する。地学的には、その土地の年平均気温より高温の湧泉(ゆうせん)を温泉とする。ただし、その温度は、国や制度によりちがっている。日本では25°C以上を温泉とし、未満のものを冷鉱泉としている。イギリスやドイツ・フランス・イタリアなどのヨーロッパ諸国では20°C、アメリカでは21.1°C(70°F)以上を温泉としている。

II

温泉法

日本では、温泉の定義として1948年(昭和23)に施行された、5章30条からなる「温泉法」が適用されることが多い(その後5回改正)。それは、以下でしめすように、地学的定義よりは広義の定義をしているため、より多くのものが「温泉」として公式に表記することができるからである。

温泉法では、「地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表に掲げる温度又は物質を有するもの」と定義している。したがって、低温であっても、さだめられた成分を含有することによって温泉とすることできる。また、温泉法にもとづけば、火山ガスや火山性水蒸気なども温泉とすることができることになる。

温泉法では、25°C以上のものを温泉としている。さらに、以下にしめす成分のうち、いずれか1種類でも含有していれば、温泉とすることができる。なお、以下の含有量は、温泉1kg中におけるものである。

溶存成分(ガス性のものをのぞく)、総量1000mg(1mg = 1000分の1g)以上
遊離炭酸(CO2)、250mg以上
リチウムイオン(Li+)、1mg以上
ストロンチウムイオン(Sr2+)、10mg以上
バリウムイオン(Ba2+)、5mg以上
フエロ(Fe2+)またはフエリイオン(Fe3+)、10mg以上
第一マンガンイオン(Mn2+)、10mg以上
水素イオン(H+)、1mg以上
臭素イオン(Br-)、5mg以上
ヨウ素イオン(I-)、1mg以上
フッ素イオン(F-)、2mg以上
ヒドロヒ酸イオン(HAsO42-)、1.3mg以上
メタ亜ヒ酸(HAsO2)、1mg以上
硫黄(S、HS- + S2O3S に対応するもの)、1mg以上
メタホウ酸(HBO2)、5mg以上
メタケイ酸(H2SiO3)、50mg以上
重炭酸ソーダ(炭酸水素ナトリウム:NaHCO3)、340mg以上
ラドン(Rn)、100億分の20キュリー単位以上
ラジウム塩(Raとして)、1億分の1mg以上

III

温泉の分類

温泉は、温度(泉温)や湧出状況、液体の性質(pH)、成分などによって分類されている。

1978年に出された環境庁(現、環境省)「鉱泉分析法指針」では、温泉を温度により、以下のように分類している。

高温泉:42°C以上
温温泉:34°C以上42°C未満
低温泉:25°C以上34°C未満
冷鉱泉:25°C未満
このうち、25°C以上のものをすべて温泉としている。

温泉は、湧出状況のちがいから地学的には以下のように分類されている。

自噴泉(または湧泉):自然に湧出する温泉
沸騰泉:泉水が沸騰し水蒸気とともに噴出する高温泉
間欠泉:沸騰泉のうち一定の周期をもって自噴する温泉
泡沸泉:二酸化炭素メタンガスなどの気泡とともに湧出する温泉
裂罅泉(れっかせん:または脈状泉):岩石中の割れ目から湧出する温泉
層状泉:礫層(れきそう)や砂層のような地層から湧出する温泉
汲み上げ泉(くみあげせん):自噴しないもの
などにわけることができる。本来、温泉は天然の湧泉を意味していたが、掘削や揚水、保温の技術的進歩によって深い地下水を掘削する人工的温泉も増加している。

「鉱泉分析法指針」では、温泉の液性を、湧出時のpHによって以下のように分類されている。

強酸性泉:pH2未満
酸性泉:pH2以上3未満
弱酸性泉:pH3以上6未満
中性泉:pH6以上7.5未満
弱アルカリ性泉:pH7.5以上8.5未満
アルカリ性泉:pH8.5以上
酸性の水は、無機物をとかす能力が高く、成分として温泉法に適合する泉質をもちやすい。一方、アルカリ性の水は物質が沈殿しやすいために、溶存物質量が少ないことが多く、冷たいものは温泉法の泉質をみたさないことが多い。

IV

成分による分類

温泉の溶存成分の特徴をしめす特殊成分や、副成分による分類がすすみ、泉質の種類は、80種にも達した。しかし、現在では溶存する主要イオン名をもちいて、泉質をあらわすようになり、類名をもちいた泉質名は使用しないようになっている。溶存成分は、温泉中にはイオンとして存在しており、陽イオンの場合にはナトリウムイオン(Na+)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、鉄(II)イオン(Fe2+)、鉄(III)イオン(Fe3+)などがあり、陰イオンとしては、塩素イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、フッ化物イオン(F-)、ヨウ化物イオン(I-)などがあるが、溶液の電気的性質は中性となっている。

「鉱泉分析法指針」では、泉質を以下のように分類している。

塩類泉:溶存物質量が1000mg/kg以上のもの
単純温泉:ガス性のものをのぞく溶存物質量が1000mg/kg未満であるが泉温が25°C以上のもの
特殊成分をふくむ療養泉:温泉法にかかげる特定物質を限界値以上ふくむもの
に区分されている。また、それぞれの泉質は、1979年の鉱泉分析法指針の改正にともない、それまでの11種(旧泉質)から溶存成分の量によって9種類(新泉質)に細別されている。

塩類泉は、塩化物泉や炭酸水素塩泉、硫酸塩泉にわけられる。水1kg中に固形成分1000mg以上ふくむ塩化物泉は、

陰イオンがCl-イオンで、陽イオンとしてNa+イオンの塩からい味がするナトリウム–塩化物泉(旧泉質名は食塩泉)
陽イオンがCa2+イオンのカルシウム–塩化物泉(旧泉質名、塩化土類泉)
陽イオンがMg2+イオンのマグネシウム–塩化物泉(旧泉質名、塩化土類泉)
などに細別されている。

炭酸水素塩泉は、

陰イオンが炭酸水素イオン(HCO3-)で、陽イオンがNa+イオンのナトリウム–炭酸水素塩泉(旧泉質名、純重曹泉)
陽イオンがCa2+イオンのカルシウム–炭酸水素塩泉(旧泉質名、重炭酸土類泉)
陽イオンがMg2+イオンのマグネシウム–炭酸水素塩泉(旧泉質名、重炭酸土類泉)
にわけられている。

硫酸塩泉は、

陰イオンがSO42-イオンで、陽イオンがNa+イオンのナトリウム–硫酸塩泉(旧泉質名、芒硝泉(ぼうしょうせん))
陽イオンがCa2+イオンのカルシウム–硫酸塩泉(旧泉質名、石膏泉(せっこうせん))
陽イオンがMg2+イオンのマグネシウム–硫酸塩泉(旧泉質名、正苦味泉)
陽イオンがFe2+イオンの鉄(II)–硫酸塩泉(旧泉質名、緑礬泉(りょくばんせん))
陽イオンがアルミニウムイオン(Al3+)のアルミニウム–硫酸塩泉(旧泉質名、明礬泉(みょうばんせん:ミョウバン))
などに細分されている。

単純温泉は、泉温が25°C以上で、固形成分が水1kg中1000mg未満で、一般に無色透明、無味、無臭である。あるいは、pHが8.5以上のアルカリ性単純温泉も単純温泉に区分されている。

特殊成分をふくむ療養泉として、水1kg中に硫黄を2mg以上ふくみ、硫化水素をふくまない単純硫黄泉(旧泉質名、硫黄泉)と、硫化水素をふくむ硫化水素泉、水1kg中に水素イオンを1mg以上ふくみ、塩酸硫酸のような遊離鉱酸をふくむため酸味がある単純酸性泉、水1kg中に遊離二酸化炭素を1000mg以上ふくむ単純二酸化炭酸泉(旧泉質名、単純炭酸泉)、水1リットル中にラドンを100億分の30キュリー単位以上、またはラジウムを1億分の10mg以上ふくむ放射能泉などがある。

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