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株式会社は営利を目的とする社団法人である。営利を追求することで、株式会社は出資者すなわち構成員に利益配分することを目的とする。また社団法人とは、株式会社がたんなる人の集団ではなく、団体としての公的組織、機構制度をそなえ、構成員(自然人)とは独立した別個の権利主体(法人格)を法的にみとめられていることを意味する。 従来、株式会社は商法の第2編会社で規定されていたが、それを独立させるとともに、従来の有限会社形態を株式会社に統合して再構成した会社法が2005年(平成17)に成立(施行は2006年5月1日)、株式会社は同法で規律されることになった(有限会社法は廃止)。 株式会社は、設立に際して資本金額相当の株式を発行し、出資者は、拠出額相応の株式を所有する仕組みである。したがって、株式会社を構成する社員を株主といい、株主の法的な地位は株式という割合的単位の形式をとる。
株式会社の特徴は、株式と有限責任の原則にある。株式会社という企業形態は、株式の仕組みによって出資者の責任を有限化し、そのリスクを軽減することで資金があつまりやすいようにした。それと同時に、株主は会社の実務に直接関与することはできなくなり、基本的には株主総会における判断以外は無機能化することになった。株主総会が会社の最高意志決定機関であることにはちがいないが、そこで決議できるのは会社法または定款でさだめられた基本事項に限定されているのである。 そこで株主は、株主総会で取締役を選任して経営実務を委託する。選任された取締役は会社を代表するとともに、実際の経営実務に関する意志決定をおこなう。会社法により、すべての株式会社に1人以上、取締役会設置会社には3人以上の取締役をおかなければならない。取締役会は、株主総会の招集や代表取締役の選任、あるいは新株や社債の発行を決議する機関である。このような経営判断のほかに、取締役会は代表取締役の業務執行を監督する権限があり、ひいては従業員全体を監督する権限がある。 株主総会で選任される監査役と権限が重なる部分があるが、取締役会の監督権限は企業の利益に関する経営判断からなされ、取締役の業務執行の適法性を監査する監査役とは視点がことなる。 取締役会または株主総会決議で選任された代表取締役は、取締役にかわって会社の代表権をもつ(会社法349条3項)。従来、代表取締役はかならずおかねばならなかったが、会社法により取締役会設置会社をのぞけば必須のものではなくなった。代表権とは、当該取締役の意思決定や行為は、対外的に会社の決定や行為であることを意味する。代表取締役に数の制限はないが、複数の代表取締役が共同で会社を代表する共同代表取締役制度は会社法で廃止された。 数に制限がないことから、社長のほか、会長、副社長、専務、常務などが代表取締役の場合もあり、彼らの代表権は対外的には不可制限的な権限であり、たとえ社内的に代表権に制限を課しても、それを知らずに契約した外部の善意の第三者に対しては対抗することはできない(会社法349条5項)。 ただし代表権の不可制限性が、取締役会の決議にそむいてはならないこと、またあくまでも会社の利益のために使用されなければならないことはいうまでもない。代表権を個人的利益の目的で使用することを権限濫用といい、経営者を監視する場合の重要な要素である。代表取締役の経営判断が結果として会社や株主に損失をあたえるものであったとしても、彼が善管注意義務と忠実義務という2種類の義務をはたしてさえいれば、事後的に責任を問われない(経営判断の原則)。だからこそコーポレート・ガバナンス(企業統治)とコントロールの合理性が問題になるのである。 とくに会社と経営者の間に利益相反関係がある場合、経営者は常に会社の利益を優先しなければならないという忠実義務(会社法355条)は、役員報酬を決定する場合など、さまざまな場面で問題となる。取締役が法令や定款に違反した場合、彼は会社に対して損害賠償責任をおうことがさだめられている(会社法423条)。
経営組織としての株式会社の特徴は、第1に基本的には大量生産と大量販売に適した産業に成立したということである。鉄鋼、鉄道、自動車、電機、石油、化学など、生産技術上、大量生産による「規模の経済」が機能する産業で巨大な組織としての株式会社が生まれた。 競争をかちぬくためには、ライバル企業よりも巨大化して規模の経済性を追求しなければならず、企業は垂直統合を志向した。たとえば自動車会社は、たんに車を製造するだけでなく、原材料の調達や販売も自社でまかなうようになった。この「統合の経済」によって、中間マージンやさまざまな取引コストを節約し、企業はさらに巨大化していった。 巨大化した企業は、複雑化した財の流れを調整するための管理機構を必要とするようになった。これが階層的な経営組織としての株式会社の第2の特徴である。多数の工場で生産される自社製品を材料購入から製造、販売、アフターサービスまで一貫して管理し「規模の経済」を生かすためには、権限と責任が集中された集権的な管理組織が必要となる。 株式会社の第3の特徴は、所有と経営の分離である。株式会社以前の経営組織は、個人企業あるいは複数の所有者がつくるパートナーシップだった。19世紀のイギリスでは、個人企業やパートナーシップは法人格や有限責任をみとめられてはいなかった。株式会社のメリットは、会社の所有者すなわち出資者のリスクの分散である。資産家が無限責任をもっておこなう企業形態とはこの点で明確に区別される。 企業が技術的に巨大な設備投資を必要とするようになるにつれて、有限責任の株主は大衆化し、経営実務に関する意思決定は取締役(会)に委託されるようになった。1920年代末には、A.A.バーリとG.C.ミーンズが明らかにしたように、アメリカのトップ企業(非金融会社)200社の3分の2は、所有によらない経営者によって管理されていた。また63年、R.J.ラーナーの調査によれば、アメリカのトップ企業200のうち85%が所有者ではない経営者(専門経営者)によって経営されていた。 この所有と経営の分離は、典型的なアメリカ社会の現象であり、パートナーシップの多いイギリスや財閥支配の戦前の日本ではそれほど顕著ではなかった。しかし経営組織の長期趨勢(すうせい)としては、所有と経営の分離は現代企業の普遍的特徴である。 株式会社の第4の特徴は、人的資源や熟練を内部化する傾向である。小規模な個人企業は労働をスポット的な短期雇用契約で購入する。ある年、当該企業が製品Aを生産販売していたとする。そのときに必要な熟練技術Xをもった労働者を、企業は労働市場から短期契約をむすんで調達する。その製品が流行遅れになり新製品Bが生産されるようになると、企業は新技術Yを労働市場から調達しなければならない。 このように外部労働市場に依存する企業は、技術革新の時代には膨大な取引コストを負担することになる。技術革新に対応するために、企業はむしろ自社内部で長期雇用によって熟練した人を育成するようになった。労働者と長期雇用契約をむすび、企業の内部で熟練した人をそだて、どのような技術革新にも対応できるようにすることは、もちろん小規模な企業では不可能であり、大規模な株式会社によってはじめて可能になった。 現代の株式会社は、価格理論におけるたんなる「質点」というよりも、社会全体のシステムにかかわる重要な「制度」として認識されるようになった。「市場」という需要供給メカニズムの海にうかぶ、大小の島。それが現代の企業であり、多国籍企業の中には小国家の国家予算をこす売上高をあげるものも少なくない。 古典派経済学(→ 経済学)は、企業を木にたとえ、どのような企業も正常の高さに達すればあとは活力をおとろえさせ、自然に朽ちていくものだと考えた。しかし20世紀後半、巨大な株式会社が、市場の「見えざる手」(アダム・スミス)にかわって産業内の分業をみずからコントロールするようになると、経営者は「見える手」(アルフレッド・チャンドラー)として組織をうごかすだけでなく、経済社会全体に影響をおよぼすようになった。経営者の経営倫理や企業の社会的責任がきびしく問われるようになったのも、当然の結果であった。
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