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奈良初期に成立した日本最古の歴史書(→歴史と歴史書の「日本」)。序文をふくむ上巻および中・下の3巻からなる。上巻は神話で、中・下巻で神武天皇から推古天皇までをあつかう。成立時の奈良時代にとって現代にあたる時代をしるさないため、「古き事を記」した書としたとされる。「日本書紀」とあわせて記紀ともいう。
成立の事情は序文によれば、天武天皇が国をおさめる基本ともいうべき帝紀・旧辞があやまりつたえられようとしているのをおそれ、ただしくつたえるため、舎人(とねり)の稗田阿礼にそらんじさせた。天武天皇の死で中断したが、元明天皇の命令により、阿礼の暗誦(あんしょう)していたものを、太安麻呂が撰録(せんろく)し、712年(和銅5)に献上したという。帝紀は皇位の継承を中心とする皇室の系譜をのべたもので、旧辞(本辞)は帝紀以外の神話、伝説、物語をさすといわれる。「続日本紀」には「古事記」についての記述がないため、かつては後人による偽書説もあったが、文体・表現ともに奈良時代以前のものとされる。
上巻は天地の創成からはじまり、多くの神々が活躍する。中巻は神武天皇から応神天皇まで、下巻は仁徳天皇から推古天皇までをしるす。ほぼ同時期にしるされた「日本書紀」とくらべると、天皇の即位順などは一致するが、「日本書紀」が年紀をたて(→ 編年体)、本文のほかに多くの異説をしるすのに対し、「古事記」は編年をせずに、天皇の代ごとに記事を一説にまとめている。また「日本書紀」にくらべて、近い時代になるほど記述が簡単になり、「古き事を記す」という書名が内容を反映しているといえる。 神話をしるした上巻より中・下巻は、よりいっそう「邦家の経緯」(国家の根本)や「王家の鴻基(こうき)」(天皇徳化の基本)を明らかにするといった国家意識があらわになるが、その一方で、多く収録されている歌謡には当時の民謡をそのまま、もしくは多少あらためて説話の主人公の作としてとりいれたものがあり、当時の民衆のナマの声を聞くことも可能となっている。
文章上でいえば、伝来して間もない漢字の音や訓を利用して、当時の言葉をどうとりいれていくかに苦心がはらわれている。たとえば、大国主神(オオクニヌシノカミ)の別名をしるしたところをみると、宇都志国玉神(ウツシクニタマノカミ)については「宇都志の三字は音を以(もち)ゐよ」と注記され、こういった表現はひじょうに多くみられる。地名や人名などの固有名詞の書き方、韻律をもっていたであろう歌謡を意味をそこなわずに漢字で表現する工夫は、後につづく「万葉集」にひきつがれていったと思われる。この表現方法が現在につづく仮名となっていることを考えあわせれば、「日本語の表記法の発生」をこの書物から考えることも可能といえよう。 なお、「古事記」の編者である太安麻呂は「日本書紀」の編纂(へんさん)にもかかわったといわれるが、1979年(昭和54)奈良市此瀬町の火葬墓から墓誌が発見され、本貫(本籍地)、位階、没年月日などがしるされていた。
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