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漆工芸の技法。漆(→ ウルシ)で模様を描き、かわかないうちに金銀や色粉(いろこ)などを蒔(ま)いて付着させたことから、「まきえ」とよばれる。
蒔絵は、工程上から研出(とぎだし)蒔絵、平(ひら)蒔絵、高(たか)蒔絵の基本的な3技法がある。研出蒔絵は、漆で模様を描いて粉を蒔き、乾燥後に全面に透(すき)漆や黒漆をぬって、木炭で研いで模様をあらわしたもの。平蒔絵は、絵漆(ベンガラをまぜた漆)で模様を描いて粉を蒔き、かわいてから模様の部分だけ樟脳でうすめた漆を付着させてみがいたもの。高蒔絵は、模様の部分を漆や木炭、錆(さび)漆などで適当な高さにもりあげて立体感の効果をねらった蒔絵である。 模様以外の余白に蒔いたものを地蒔といい、塵(ちり)蒔、平塵(へいじん)、沃懸(いかけ)地、平目(ひらめ)地、梨(なし)地などがある。これらの技法は複合してほどこされ、さらに螺鈿、平文(ひょうもん)、切金(きりがね)、色漆などが併用される。
蒔絵に使用する粉は、金、銀が主であるが、そのほかスズ、銅、青金(あおきん)、赤銅、黄銅、白鑞(びゃくろう)などの各種合金、顔料を粉末にした色粉などがもちいられる。また粉の製法や形状から平目粉、梨地粉、丸粉、消粉などにわけられる。 蒔絵の主要な用具には、根朱(ねじ)筆(ネズミ毛をもちいた細線用の筆)、地塗筆(線書以外の広い面をぬるのにもちいる猫毛製の筆)、塗込刷毛(ぬりこみはけ:地蒔をするときの地塗の刷毛で、ネコあるいはウサギの毛をもちいる)、爪(つめ)盤(水牛の角、べっこう、セルロイドなどでできた一種の小型パレットで、親指につけて、絵漆をだしておくもの)、粉筒(ふんづつ:粉を蒔くのにもちいるもの)などがある。
日本の初期の蒔絵は奈良時代にみられ、正倉院の金銀鈿荘唐太刀(でんそうのからたち)は後世の研出蒔絵と同じである。また法隆寺献納宝物の利箭(とがりや)、平城宮(→ 平城京)跡出土の草花蒔絵八角棒断片、また京都西野山古墳出土の漆器断片など、奈良時代にはすでに蒔絵技法が完成していたことが知られる。 平安時代は、文献的にも蒔絵の語があらわれ、平安前期の代表作に919年(延喜19)の宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱(ほうそうげかりょうびんがまきえさっしばこ)がある。この冊子箱の特徴は、平塵に金銀の研出蒔絵で迦陵頻伽(極楽の鳥)や宝相華(唐草文様の一種)などが左右に描かれ、とくに平塵と文様粉との区別がなく、また粉はあつく立体的である。平安後期には、青金と蒔暈(まきぼかし)、螺鈿が併用され、沢千鳥蒔絵螺鈿小唐櫃(さわちどりまきえらでんこからびつ)、片輪車(かたわぐるま)蒔絵螺鈿手箱はこの時期の代表作で、純和風の世界をつくりだしている。平安末期には平蒔絵が出現し、1175年(安元元)銘の蓮池(れんち)蒔絵経箱はその初出例として知られる。
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