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BSE

BSE ビーエスイー Bovine Spongiform Encephalopathy
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

牛海綿状脳症のことで、いわゆる狂牛病ともいう。神経細胞が変性、脱落して、スポンジ状に変化し、運動のコントロールができなくなって、しだいにやせおとろえて死亡する病気。1986年にイギリスのイングランド南部でこのような牛が発見され、ヨーロッパ、カナダ、日本などでもみつかっている。飼料に混入された動物由来の肉骨粉(にくこっぷん)が原因と考えられている。2003年12月にはアメリカでも感染牛がみつかり、日本など複数の国がアメリカ牛の輸入規制をおこなった。

II

病原体プリオン

BSEはヒツジの病気「スクレイピー」と同様、プリオン病原体とされている。プリオンは従来の病原微生物とことなって遺伝子をもたず、変性したタンパク質がその本体とされている。正常なプリオンタンパク質は、脳の神経細胞でつくられ、いったん細胞表面に姿をあらわしたのち、ふたたび細胞の中にとりこまれる。その役割はまだよくわかっていない。これに対して異常なプリオンタンパク質(プリオン)は正常なプリオンタンパク質と結合して脳の中に沈着し、神経の変性脱落をもたらすとされる。1982年にアメリカ合衆国のスタンリー・プルジナーがスクレイピーを研究しているときにプリオンを発見し、97年にはその功績によりノーベル賞を受賞している。しかし、異常なプリオンタンパク質がなぜできるのかはまだよくわかっていない。

III

日本の発生状況

2001年(平成13)9月、日本ではじめてBSEにかかった牛が千葉県で発見された。直後の10月に法律が改正され、食肉として市場に出まわる前にすべての牛についてBSEの検査をおこなうようになった。その結果、01年はほかに2頭が北海道と群馬県でみつかった。

その後も、散発的に発生が報告されている。翌2002年は北海道、神奈川県で各1頭ずつ、03年は和歌山県、北海道、茨城県につづき、広島県でもみつかり、はじめて西日本での発生となった。04年には九州でもはじめて発生し、05年12月末までに合計21頭の感染が確認されている。

なかでも8頭目と9頭目は生後23カ月と21カ月で、これまで安全と思われていた2歳にみたない若い牛だった。さらに8頭目は従来の異常プリオンタンパク質とは糖鎖のパターンなどがことなるタイプ。また、感染源としてうたがわれる肉骨粉の製造や販売を禁止したあとに生まれた牛の感染でもあり、感染ルートの解明がいそがれる。

2003年11月には、BSEが発生した国の牛の背骨やTボーンステーキなど背骨がついた肉、背骨を材料にした食品などの販売・製造を禁止することをきめた。脊髄などとくらべると少ないものの、背骨の背根神経節にもプリオンが蓄積するとされている。

IV

ヒトへの感染

BSEのプリオンがヒトにも感染することがわかったのは、BSEの牛が発見されて10年後のことである。1996年3月、イギリスで、クロイツフェルト=ヤコブ病(CJD)に似ているが、臨床経過や病理像がことなる変異型クロイツフェルト=ヤコブ病(vCJD)がみつかった。そして原因がBSEに由来するプリオンであることが明らかにされた。イギリスではすでに100人以上がこの変異型クロイツフェルト=ヤコブ病で死亡した。BSEにかかった牛の脳や脊髄、眼、回腸()などを食べたためと推測される。これまで、イギリスを中心に160人程度が感染したと考えられている。2005年2月には、日本でもはじめてvCJD患者の発生と死亡が確認された。

変異型クロイツフェルト=ヤコブ病は、不安、感覚障害ではじまり、認知症(痴呆:ちほう)、妄想、運動障害などをへたのち、約1年後には起立、歩行が不能になり、無動無言状態になる。生前には臨床症状やCTなどの画像(画像診断)から診断する以外方法はないが、髄液中にあらわれた異常プリオンタンパク質の検出が有効との報告もある。プリオンに感染してから発病までには数年かかる。

治療法はまだ確立されていない。プルジナーらの研究室では、キナクリンという抗マラリア薬や抗精神病薬(向精神薬)のクロルプロマジンが有望だとして研究をすすめている。また、アメリカのデービット・ペリッツらは、異常プリオンタンパク質と正常プリオンタンパク質の結合を阻止する抗体を開発している。抗体が有望ならワクチンの開発へとすすむ可能性もある。

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