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すぐれた自然景観やそこにすむ動植物、そこにある史跡などを保護するとともに、その地をおとずれる人々に豊かな自然と接する喜びをあたえることを目的として、国によって特別に指定された区域。一般大衆向けのレクリエーション施設がもうけられている場合も多い。
16~18世紀には、ヨーロッパの都市などで、国王や貴族が所有する狩場(パーク)、庭園の一部が公共に開放され、いわゆる公園となっており、貴族らの中には農村部の狩場や私有地の自然環境保護につとめている者もいた。しかし、人口がわずかで自然が豊かな、開発がすすんでいない地域に関しては、特別に保護を要するとは考えられていなかった。 都市からはなれた土地の自然を保護するため、国立公園や自然保護区をもうけるという発想は、19世紀初頭の西ヨーロッパやアメリカにおいて、工業化による大規模な自然環境の損傷、破壊に対応するために生まれた。1832年、アメリカの画家ジョージ・キャットリンは、自作の風景画の題材となった西部の未開地を保護するよう提唱。イギリスでも35年、詩人ワーズワースが故郷の湖水地方(レークディストリクト)について書いた書物の中で、うつくしい自然を「ある種の国有財産」にすることを提案している。 世界最初の国立公園は、アメリカのモンタナ、ワイオミング、アイダホ各州にまたがるイエローストーン国立公園で、1872年に連邦議会の指定をうけた。ただし、「国立公園」という名称がはじめてもちいられたのは、79年にオーストラリアのニューサウスウェールズ州にもうけられた王立国立公園(ロイヤル・ナショナル・パーク)である。 1880年代になると、国立公園という概念がニュージーランドやカナダにもつたわり、これら4カ国でさらにいくつかの地域が国立公園に指定された。1909年にはヨーロッパ初の国立公園がスウェーデンに設置された。30年代には日本、メキシコ、旧ソ連、複数のイギリス植民地に、さらに50年代にはイギリス、フランス、その他のヨーロッパ諸国にも生まれた。 その後、インド、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドを中心に、多数の国立公園およびそれに準じた地域がもうけられている。今日、「国立公園」という言葉は、自然保護のためにもうけられた小さな区域についてもつかわれ、これらの指定地域では保護基準がさほど厳格でない場合も多い。スコットランド、アイルランドの森林公園、アメリカ国立公園局の運営する国立野生保護区、国立記念物、カナダ、アメリカ、オーストラリアの州立公園などがこれに該当する。
自然の景観保護や国民の保養といった当初の設置目的にくわえ、絶滅の危機に瀕(ひん)した動植物をまもり学術的研究を促進するためにも、多くの国立公園が指定されている。これらは「自然保護区」とみなされるもので、動物、植物、あるいは生態系全体が保護、研究の対象である。狩猟など生態系に悪影響をあたえる行為は制限もしくは禁止され、一般人の立ち入りもきびしく制限され、まったく許可されないことも少なくない。インド北部のカンハ国立公園内にあるカンハ虎(とら)保護区は、絶滅の危機にあるベンガルトラ(→ トラ)保護のためにもうけられたが、このように、国立公園内にこうした区域を設置する場合もある。 国立公園は国あるいは州政府が所有、運営することが多いが、イギリスでは民間の寄付からなるナショナル・トラストが1895年に誕生し、現在、景勝地や自然保護、史跡保護などを目的に土地約2500km²、海岸線1130km以上、歴史的建造物などを所有している。オーストラリアなどでも、同様の組織が活動している。 自然保護区については、イギリスの自然保護区、アメリカの国立海岸公園、国立保護区などのように行政府が運営にあたるものもあるが、多くはナショナル・トラスト、動物保護団体のように、非営利の民間組織が運営している。 世界の国立公園は2つのタイプに分類される。1つは、公園地域の大部分を国有地が占め、国が完璧(かんぺき)な管理および統制をおこなう国立公園で、「造営物の公園」とよばれる。これはアメリカ、カナダをはじめ広大な土地を有する国々にみられる形態で、理想的な自然公園といえる。もう1つは、土地所有に関係なく法的に公園地域を設定し、その土地上でおこなわれる行為を規制するタイプの国立公園で、「地域制の公園」といわれている。後者は古くから国土開発がおこなわれ、人口密度も高いイギリスや日本などにみられる形態で、比較的、公園の指定は容易であるが、公園内に居住する住民や産業活動との共存が大きな課題となっている。 また、国立公園の多くでは、自然保護とレクリエーションの両立が問題となっている。人々が大勢おとずれることにより、たとえ意図しなくとも景観を破壊したり、動植物に悪影響をあたえてしまうのである。そのため、区域内の一部を閉鎖したり、入場者数を制限することで、こうした問題を回避しようとすることも多い。また、歩行や自動車の乗り入れを特定の道路に制限したり、インドの国立公園のように入場にあたって係員の同行を義務づけたりすることもおこなわれている。 うつくしい自然、文化的遺産、学術的価値などを有する土地の保護は、発展途上国にとってはとくにやっかいな問題である。先進諸国とことなり、これらの国々にとって開発を抑制することによる経済的損失は大きく、またそのような政策には国民の支持もあつまりにくいという事情もある。 国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連環境計画(UNEP)、FAO(国連食糧農業機関)などでは、発展途上国の国立公園、自然保護区に財政的援助をしている。このほか、ユネスコは価値ある自然環境をもった地域を総括して「世界遺産」リストをつくり、先進国、発展途上国を問わず、201件(2009年7月現在の自然遺産と複合遺産の合計)をこれに登録している。経済活動の拡大と人口の増大により、国立公園や自然保護区の指定、運営などの重要性は高まる一方であるが、解決すべき問題点も多い。
はっきりとした四季の変化をもつ日本の自然景観は、多様性にとみ、歴史的な景観との調和もとれ、世界的にも高い評価をえている。それら風景の中から、日本を代表するような風景地として環境大臣が指定する公園が国立公園である。1957年(昭和32年)に制定された自然公園法にさだめる3種の自然公園のひとつで、その指定目的は、すぐれた風景地を保護するとともにその利用の増進をはかり、国民の保健、休養および教化に資することにある。 指定にあたっては、環境大臣は、自然環境保全審議会の意見を聞くことが必要とされている。現在、各国立公園には環境省よりレンジャーとよばれる公園管理官が配置され、また、多くの民間組織が管理業務に協力しているが、公園内は法律的に次の4種の規制によって、自然が保護されている。 (1)特別地域:風致の維持がとくに必要とされる地域で、その必要に応じて、第1種、第2種、第3種に区分される。景観の改変につながる行為は、最小限に制限される。 (2)特別保護地区:特別地域内でも、とくに自然景観や文化景観の保持が義務づけられている所。落ち葉や枯れ枝の採取さえも規制の対象となっている。 (3)海中公園地区:国立公園内に海域がある場合の規制で、特別保護地区の海域版である。 (4)普通地区:上の(1)~(3)以外の地域。指定目的を逸脱しない範囲内であれば、環境大臣の許可と認可のもとに施設をつくることもできる。 なお、自然公園法にさだめる自然公園には、このほか、国定公園と都道府県立自然公園がある。前者は、国立公園に準じる自然風景地として、都道府県知事の申請にもとづいて環境大臣が指定するもので、原則として管理は都道府県がおこなう。後者は、都道府県知事が指定し、管理に責任をもつものである。
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