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大量の電離放射線(→ 放射能)をあびたためにおこる障害。放射線は細胞に損傷をあたえ、組織によっては重大な障害がおこる。X線やガンマ線など、外部からの放射線が原因となることが多い。また、放射線で汚染された食べ物などが体内にはいると、放射性物質が細胞に密着し、付着した細胞や周囲の細胞を変化させる場合もある。 放射線をあびることを被曝(ひばく)という。被曝すると初期症状として、食欲不振と吐き気がおこり、まもなく嘔吐、下痢がはじまる。その後の症状は、放射線の量や被曝していた期間、どんな組織が被曝したのかなどによってことなる。骨髄(→ 骨)が損傷をうけると、赤血球の数が減少し、感染の危険がふえる。生殖器官(→ 生殖器系の「性器」)の場合は永久不妊になる。短時間に大量に被曝すれば髪の毛がぬけたり、やけどをしたり、出血がある。その場合は、治療しても生命が危険な状態になる。被曝が長期にわたれば癌になる危険性がます。
一度に大量の放射線をあびると、死亡することがある。死亡しない場合でも数週間以内に障害があらわれる。それを急性放射線障害という。急性の症状は、急性放射線症候群とまとめてよばれることがある。 消化器官、とくに胃や小腸が損傷をうけると、血管収縮作用のあるセロトニンが血中に放出される。セロトニンは脳の嘔吐中枢や体内のほかのセロトニン受容体を刺激する。そのため吐き気や嘔吐がおこる。そして、損傷をうけた粘膜に胆汁酸が作用して小腸の動きがはげしくなり、下痢がはじまる。 これらの症状は、個人の感受性によって大きくことなる。また一度に大量の放射線をうけるのは、たいていが爆発や事故によるものであり、現場にいた人が同じ量の放射線をあびるとはかぎらない。 放射線治療(→ 放射線医学)の場合は、必要な組織だけに照射されるようコントロールされているので、全身に多量の照射をうけた場合のみ、吐き気と嘔吐がおこる。たとえば、骨髄移植をするために患者の骨髄を放射線で消失させるときなどに、このような障害がおこる。
電離放射線をあびた物質が単位質量あたりに吸収するエネルギーをあらわしたものを吸収線量という(→ 放射線の単位)。1ジュール/1kgあたり、グレイ(Gy)という単位であらわす。以前はラド(rad)という単位がもちいられていたが、現在ではGyをつかうことが多い。1radは0.01Gyである。 明らかな症状があらわれるのは1Gy以上の被曝で、骨髄でつくられる赤血球の数がへり、感染、出血、貧血などがおこる。直接皮膚が放射線をあびたり、放射性物質で汚染されるとやけど状になり、体液がうしなわれて危険な状態におちいる。合併症がおこると、予後はひじょうにわるく、集中管理が必要になる。 4Gyの被曝があるとき、適切な治療をうけないでいると、50%が60日以内に死亡する。10Gy以上では、治療をうけてもまもなく死亡する。同じ量でも、少しずつ長期にわたってうけた場合は、細胞や組織が回復する時間があるため、致死率は急性の場合にくらべて少ない。 どの程度の量を被曝したのかをその場で判断するのは、きわめてむずかしいことである。しかし、広島、長崎の原爆(→ 核兵器)、また核実験や原子力発電所(→ 原子力発電)の事故などによる多くの人々の犠牲をもとに、被曝してから症状があらわれるまでの時間、照射量、放射線障害の持続期間など、重要なことがわかるようになった。たとえば、成人では、食欲不振は0.4Gyで5%、3Gyで95%にみられる。吐き気は0.5Gyで5%、4.5Gyで95%。嘔吐は0.6Gyで5%、7Gyで100%。下痢は1Gyで5%、8Gyで20%以上にみられる。また、これらの症状が被曝後1時間以内にあらわれたら、3Gy以上の吸収線量だったということになる。3時間以上たってからなら1Gy以下と考えられる。これらの指標によって、医師はただちに治療をはじめられるようになった。
1954年マーシャル諸島のビキニ環礁でアメリカがおこなった水爆実験(→ ビキニ水爆実験)によって、周辺住民は全身に1.75Gyの放射線をうけた。死者はでなかったものの、住民の10%ほどに下痢などの初期症状があらわれ、赤血球の数がへった。また皮膚が汚染されたため、影響をうけた人の20%に皮膚潰瘍(かいよう)ができた。このときには日本の漁船第五福竜丸も「死の灰」をあび、半年後に無線長が死亡したほか、船員が後々まで障害にくるしめられた。
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