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病気、老齢、障害、失業、業務災害などに直面した人々に、現金を給付したり、社会サービスを提供して、生活を安定させることを目的とする公的保険であり、医療保険、年金、雇用保険、労働者災害補償保険、そして新しい制度として介護保険などがある。生活保護(→ 生活保護法)、社会福祉、公衆衛生および医療とともに社会保障を構成し、中心的な役割をはたす制度。 社会保険は、保険料ならびに国庫負担をおもな財源とし、強制加入を原則としている。
公的保険としての社会保険は、民間の営利企業が運営する私保険とは次の点でことなる。私保険は、保険事故にあわなかった者から保険事故にあった者に所得再分配がおこなわれるだけであるが、社会保険では、この私保険のもつ再分配機能にくわえて、所得の高い者から所得の低い者への所得再分配や、生活を不安定化させる要因を構造的に少なくかかえる者から多くかかえる者への所得再分配がくみこまれている。 さらに、公的保険としての社会保険は、財源として租税のみをもちいておこなわれる生活保護制度とは次の点でことなるといわれる。社会保険の給付をうける者は、保険料をしはらった者に限定されるために、租税のみを財源とする給付にくらべて自助的な性格をもつ。また、社会保険方式は租税方式よりも、保険料という一種の目的税を独自に確保できるために、制度の安定性が保証されやすいとも、しばしばいわれる。 19世紀後半に誕生した社会保険は、すぐ世界じゅうに広まった。なぜなら、19世紀後半から20世紀初頭に世界に普及した資本主義社会は、生活の自己責任の原則をつらぬくには問題をかかえすぎており、他方で、個々人の生活の維持、安定を社会的責任と完全にみなせば、怠惰(たいだ)や不道徳がはびこるという心配をかかえていた。それゆえ、近代の資本主義社会は、生活の自己責任と社会責任のひとつの妥協的妙案として、社会保険をうけいれたからである。
今日の社会保障制度の体系のうち、公的扶助とくらべても圧倒的に重要な柱となっている社会保険制度は、1880年代のドイツで第1歩をふみだした(図「おもな国の各種社会保険の成立年」参照)。 イギリスにおくれて産業革命を経験した後発資本主義国ドイツでは、先発資本主義国へのキャッチアップという国是(こくぜ)のもと、長時間・低賃金労働が支配的であった。労働者の生活水準は極度に低くおさえられ、労働災害がふえた結果、ドイツでは、労働者の生活改善をもとめる労働運動が高まった。 社会主義化へむかう労働運動をおそれた「鉄血宰相」ビスマルクは、1878年に社会主義鎮圧法を制定して、労働運動を禁止した。しかしその一方で、83年から89年にかけて、労働者のかねてからの要求であった生活保障を、医療保険(1883)、業務災害保険(1884)、年金保険(1889)の3つの保険制度の実現でこたえた。ビスマルクの硬軟両様をつかいわけた労働政策を、「アメとムチ」の政策という。 ビスマルクの社会保険は、失業を事故とみなして救済する失業保険を欠いていた。社会保険のうち、医療保険、年金保険とならぶ失業保険を、世界ではじめて実現したのは、1911年にイギリスで制定された国民保険法である。これには、医療保険と失業保険がふくまれていた。
日本では、労働者を対象とする健康保険法が1922年(大正11)に制定され、その後、38年(昭和13)には農村の住民を対象とした国民健康保険法が成立し、社会保険の対象が拡大していった(→ 健康保険)。 1941年には労働者年金保険が創設されたが、労働者災害補償保険と失業保険ができて社会保険のすべての部門がそろうのは、第2次世界大戦後の47年になってからである。さらに、国民全体を対象とする国民皆保険、国民皆年金が実現するのは、58年に制定された国民健康保険法と59年に制定された国民年金法が61年に実務にうつされてからであった。 これらにくわえて、2000年(平成12)4月からは、老人福祉と老人医療の両制度を再編した新しい社会保険の介護保険制度が実施にうつされた(図「日本の社会保険の体系」参照)。 日本の社会保険の特徴は、企業規模、職域などにより社会保険の格差が大きいことである。大企業はみずからを単位として年金と健康保険を創設することができ、法律でさだめられた以上の給付ができるため、企業の福利厚生の手段として、社会保険を利用してきた。 こうした点については、年金に基礎年金を導入して制度間の格差を是正するなど、一定の努力がはらわれてきた。しかし、社会保険全体としては、経済の低成長と少子化、高齢化社会の到来などがかさなって財源不足が深刻となり、社会保障のほかの諸制度とともに、社会保険のあり方もきびしく問われている。
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