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項目構成
釧路湿原は海に近い平野にあるが、起源は沿岸にあったラグーン(潟湖)だといわれる。同じ北海道で海の近くにある湿原でも、霧多布湿原の場合は砂丘が起源だといわれる。内陸部の湿原の多くは湖沼が起源である。 沼が湿原になるには、どれほどの時間を要するか。つまり泥炭の堆積速度はどのくらいか。平均的には1年に堆積するのは1mm。したがって深さが2mの池が埋めつくされるには2000年かかるわけである。湿原生態系の成立には、これだけの時が必要とすれば、それだけでも湿原の重要性と価値は大きいといえる。
湿原とは総体的には栄養物質の存在量の少ない生態系である。そこで湿原の植生は、貧栄養に耐えられる種にしぼられる。高層湿原ではミズゴケが中心だが、ほかにミカヅキグサ、オオイヌノハナヒゲ、ツルコケモモ(→ コケモモ)などと、食虫植物のモウセンゴケ、ナガバノモウセンゴケ、タヌキモ、コタヌキモなどがみられる。すべて貧栄養的な環境条件に適応できる植物である。 ちなみに、水差しの形をしているウツボカズラは、熱帯の湿原の食虫植物として知られている。この食虫植物は「土壌」が貧栄養なので、動物を「食べて」栄養をおぎなっているのである。 湿原をよく観察すると、外縁部にはヨシやイワノガリヤスなど背の高い種の群落や、ハンノキなどの樹木が生え、中央部とは景観がちがうことがある。外縁部は中央部より栄養物質の補給があるからであろう。 湿原生態系の継持に必要な水分は周囲の森林からめぐまれ、湿原はまた下流の森林に水をながす。ことなる生態系が相互にたすけあっているといってもよい。
湿原と海の生態系とのつながりでは、磯焼けとの関係が注目をあつめている。 「磯焼け」は北海道では日本海沿岸に顕著な現象である。岩礁の表面に石灰藻類(→ 紅色植物)がはりついて白化し、岩礁の生態系を撹乱する。結果として有用なコンブやワカメ、ノリなどの付着を困難にし、アワビやウニの漁獲高も極端に減少する。ところが太平洋沿岸では磯焼けはほとんどみられない。松原勝彦北海道大学教授は、「磯焼けは鉄分の供給不足が原因であり、太平洋沿岸では、湿原の泥炭で生成される鉄イオンが供給されているので磯焼けはおこらない」と解説している。
湿原の生態系は、日本でも世界でも、かならずしもよく保全されているとはいえない。環境汚染や、周辺部の開発の影響をうけているケースはかぞえきれないほどである。世界有数のパンタナル湿原(ブラジル)も、日本最大の釧路湿原(日本の湿原の60%を占める)も例外ではない。
潮止め堤防の工事の進行をめぐって諫早(いさはや)干潟(→ 諫早湾)とムツゴロウの名は、あらためて全国に知れわたった。干潟の生態系がはたしている役割がささいなものならば、問題は大きくならなかったはずである。諫早干潟だけではなく、春になると日本の干潟にはシギやチドリの姿が急激にふえる。干潟にはかかせない風物詩である。 シギやチドリは、遠く熱帯アジアやオーストラリアから渡来して、翼をやすめ、ゴカイやカニなどを食べて体力をつけ、北方の繁殖地にむかう鳥たちである。すなわち日本の生態系が海外の生態系とむすばれていることをしめす1つの例であり、干潟の生態系の撹乱は国際的な問題といえよう。
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