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南極大陸は氷の大陸でありながら、湿度は低く、年降水量は150mmにすぎない。そのうえ風は強く、気温は低い。中央高地に生じた冷気をふくむ密度の高い空気が、斜面をすべるように吹きおりていく。この風は重力風(カタバ風)とよばれ、風速は平均14mだが、海上10~30km付近まで吹きだしていく。 大陸の東部沿岸は、冬の間に7回も8回も、風速45mにも達する台風並みの強風にみまわれる。強風は極度の低温と乾燥をもたらすから、生物の生存上、大きなマイナスになる。 気温は内陸および高地にいくにしたがって低くなり、内陸部には年平均気温が-55°C以下の超寒冷地がある。地球上で観測された最低気温は-89.2°C(1983年)で、中央高地のウォストーク基地(旧ソ連)で記録されている。沿岸部と南極半島の平均気温は、冬は-20°C、夏は-2°C~+1°Cである。
南極半島は内陸ほど強風にさらされることもなく、しかも沿岸は、大陸全体で3%の氷床におおわれていない部分の大半を占めている。岩や凍土(→ 永久凍土層)が露出していれば、太陽エネルギーを熱エネルギーとして吸収され、凍土も解ける。南極大陸の中で、南極半島に生物の多様性がみとめられるのは、このような環境条件があればこそである。 南極大陸の緑色植物は地衣類、コケ植物、藻類(緑色植物や藍色植物)であり、これらが光合成をおこなう生産者である。大陸の広い範囲にみられる藻類以外は南極半島に集中しており、ここには固有種をふくめ種数も多い。南極半島のほかでは沿岸部にみられるだけである。 南極大陸には種子植物(顕花植物)は2種しか知られていない。イネ科のナンキョクコメススキ(英名はグラス)と、ナデシコ科のナンキョクミドリナデシコ(英名はピンク)。いずれも南極半島だけに分布している。 南極大陸の陸上生態系の中で、もっとも生産量が多い生産者は、45種のコケ植物で、南極半島や周辺の島々の砂地に群落がみられるが、それも海で魚を採食する海鳥類の糞(グアノ)によって土地が肥えているからであり、南極大陸の陸上生態系は海洋生態系との結びつきがたたれれば崩壊しかねない。けたはずれの氷と寒さと風という、きびしい環境のもとでは、種の多様性が高く複雑な食物網(→ 食物連鎖)ができる生態系の形成はありえないのである。
サバナは熱帯に特有の草原で、まばらに生えた低木が景観にアクセントをつけている。その低木の樹種は大陸によってことなる。アフリカでは主としてアカシア類であり、ところによってはバオバブが多い。サバナが北部にかぎられるオーストラリアでめだつ灌木(かんぼく)はユーカリ種である。
サバナをおおっているのは、圧倒的に優勢なイネ科の植物である。サバナ生態系の栄養循環とエネルギーの流れは、イネ科の植物を軸にしてなりたっている。サバナのイネ科の植物は強い日照と高温のもと、少ない水分で多くの二酸化炭素を固定させる特異な光合成システムを発展させている。また貧栄養の土壌でも成長し、野火にも強い。 そのうえ、低木の進出をさまたげるため、バクテリアの繁殖を阻害する化学物質を生成して、土壌を窒素不足(栄養不足)にする種まである。こうして第1次生産者として優位をたもっているイネ科の植物は、多種多様な大型の第1次消費者である草食動物をやしなっている。それは東アフリカのサバナで、とくに顕著であり、アフリカゾウやキリン、シマウマ、アンテロープ類、スイギュウ、イノシシ類など、大型草食動物の個体数と多様性は世界に例がない。 サバナは草が主体のバイオーム(生物群系)なので、バイオマス(生物体量)は大きくなく、最大約5kg/m²にすぎないが、生産量は0.2~2kg/m²で、10倍のバイオマスをもつ亜寒帯林におとらない。つまり効率の高いバイオームといえよう。
サバナの草食動物は、一様にイネ科の植物を食べているわけではない。たとえば東アフリカでは、ゾウは草も木もなんでも食べるが、しばしば灌木を根こそぎにしてしまう。木がたおれれば、そこには草が生える。ほかの草食動物にとっては有利である。 もっぱらイネ科の植物を食べている動物も多い。しかし、同じ植物をシマウマやヌー、トムソンガゼルというように、体の大きな順に部分をちがえて食べていく。しかも葉だけを食べて移動するので、草の食べられた部分の再生が可能になる。 サバナ生態系には、草食動物を食べる第2次消費者の肉食動物も多い。アフリカでもっともライオンの個体数が多いといわれるのは、タンザニアとケニアにまたがるセレンゲティ・マラ草原で、約2000頭。ほかにヒョウもいるが、大型肉食獣のバイオマスは全体の1~2%である。ライオンは、いかに草食動物の多い所で生きているかがわかるが、ライオンが実際に消費するのは草食動物のバイオマスの約15%にすぎない。 またサバナ生態系は、腐肉を食う動物によって汚染や撹乱をまぬがれている。サバナの掃除屋はハイエナとかジャッカルだけではなく、大型鳥類にもいる。ハゲワシやハゲコウである。 人口の急増による農地や牧場の拡大、住宅地の増加など、サバナには深刻な破壊要因が多くあり、保護区を設置するなどして、のこされた自然度の高いサバナ生態系の保全をはからないと、取り返しがつかなくなるだろう。 → 保全生物学
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