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丸薬などの薬をいれ、腰にさげる小型の容器。室町時代に中国からつたえられた。楕円形で3段か5段重ねに仕切られたものが多く、左右に紐(ひも)をとおして連結した。紐には各段の開閉を調節する緒締(おじめ)がつき、根付けで帯にはさんで使用した。段重ねは、ことなる種類の薬をいれるための工夫と考えられる。
1843年(天保14)に刊行された「貞丈雑記」(ていじょうざっき)によれば印籠は中国では印判や印肉をいれていた段重ねの容器をさし、印籠によく似た薬をいれる薬籠というものも存在したとある。また中世には、室内の調度や飾りとして、印籠や薬籠は棚などにいっしょにおかれ、印籠を薬籠の代用とするのを吉とした記録もある。これらのことから、薬籠代わりにつかわれた印籠が、やがて薬をいれる容器の呼称として一般化したと考えられる。
江戸時代以前には、薬が必要だったのはおもに戦場で、陣中の武士は火打ち袋などに薬をいれて腰にさげた。その後、薬の容器や提物(さげもの)としての体裁をととのえ、印籠に発展した。 戦乱のない江戸時代になると、武士は裃着用の際にかならず印籠を腰にさげるのが慣例化する。印籠が武士の間でもてはやされるようになると、日本刀同様に装飾化し、さまざまな工芸技法をもちいた多様な印籠が数多くつくられた。このころには、非常時のために応急の薬を携帯するという本来の用途も形骸化(けいがいか)し、武士など上層階級のぜいたくな装身具へと変化していった。 現在では、完全にその用途はうしなわれ、江戸時代を代表する美術工芸品として評価されている。素材も装飾もさまざまだが、江戸時代にはほとんどの蒔絵師が印籠を手がけていたため、漆地(うるしじ)に蒔絵をほどこしたものにすぐれたものが多い。
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