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時間(哲学)

時間 じかん Time
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

過去、現在、未来の出来事は前後の関係によって一列にならぶので、物をならべることを可能にする空間にならって、1次元の連続体として時間をとらえるのは自然な発想である。しかし、意識は常に現在の意識であり、知覚によってとらえることができる出来事も現在の出来事にかぎられるが、その出来事は絶え間なく変化する。あたかも、意識の前を出来事の連なりが通過するかのようにみえることに関連して、空間の場合とはことなる問題が古くから議論されてきた。

II

時間の流れ

時間(時)がながれるという比喩はだれもが理解する。「今」が出来事に対して移動しなければ、出来事の流れもあらわれないからである。しかし時間の中でしか、たとえば水は、ながれない。したがって、時間がながれるためには、時間がその中でながれるもうひとつの時間が必要になる。この種の難問はさまざまに表現されるが、古くからみられるひとつの解決は時間は実は存在しないとするものである。エレア派のゼノンの逆説は、変化は実在しない、したがって、時間も実在しないことをしめそうとしたものであった。

もうひとつの解決は出来事の前後関係の系列はみとめるが、過去、現在、未来の区別はたんに主観的なものとして無視することである。自然科学では通常この姿勢をとり、空間に似た仕方で時間をあつかう。ただし、空間移動は比較的自由であるが、タイムトラベルはまだたんに理論の中だけの問題である。その意味では、行為との関連でみると、時間と空間は大きくことなる。こうした見方とは対照的に、ベルグソンは出来事の流れの直観を重視し、知性による時間の分析を誤りとした。

III

心理学的時間解釈

古くから、時間を時間的幅のない無数の瞬間がならんだものとみてよいか否かが問題にされた。数学の問題としては連続体の構成に関連し、現在では各瞬間を実数と対応させて、集合論であつかうことができる。心理学的(内的)時間としては、「今」を幅のない瞬間とみなすと変化の知覚もできないという問題が生じる。意識とむすびついている「今」の中にどれほどの時間の広がりがふくまれるかという問いに対して、すべてという答えがあたえられる場合がある。霊魂()の中に時間をおいたアウグスティヌスはその一例である。時間を人間主体の側にひきよせ、時間とは主観がそなえる形式のひとつとしたカントの考えもこれに近い。

IV

時間の関係説と実体説

時間は生起する出来事の系列にほかならないとする説(関係説)をとると、世界の出来事に限りがあれば、時間も有限である。ユダヤ教キリスト教の世界観はこの直線的時間構造の見方をとった。関係説では、時間の長さは出来事の繰り返しでさだまり、これがとだえれば、意味をうしなう。一方、反復する天体現象で時をはかった慣行を背景にして、古代からギリシャやインドでは世界の回帰説があった。その場合には、時間は元にもどり円環の構造をつくる。ただし、関係説では、出来事ごとの同一性は時の同一性を意味するので、厳密な回帰説は矛盾をふくむ。そこで時間を、たとえ物の影響はうけても、物がつくる出来事の関係とはことなるなんらかの存在である、とする説(実体説)をとるなら、世界が有限でも無限の時間を考えることができるし、厳密な世界の回帰説も矛盾しない。

ニュートンは力学の法則の基礎に物の影響をうけない絶対時間と絶対空間をおき、これを感覚をとおして知られる相対時間や相対空間と対比させる実体説をとった。認識論からみると、感覚の対象にならない時間や空間はこのましくないので、関係説をとるライプニッツらに批判された。しかし、回転運動にともなう遠心力は関係説では説明できなかった。

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