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1925年に電気録音方式が導入されて音質がよくなると、音楽のレコード化が急速に進行する。クラシックでは、それまでソロや小編成楽団の演奏が多かったが、大編成のオーケストラによる交響曲などの録音がふえた。ポピュラー音楽でも、アルゼンチンのタンゴ、アメリカのジャズ、ブラジルのサンバ、キューバのソンなど、20世紀を代表する音楽のレコードが10~20年代に次々につくられた。日本では歌謡曲第1号とされる「カチューシャの唄」のレコードが14年に登場した。 レコード盤に音声を直接記録していたころは、歌手は声が大きくなければならず、レコード界初のスーパースターは声量豊かな美声で知られたオペラ歌手カルーゾーだった。しかし電気録音がはじまると、声量がなくてもマイクを効果的につかって表情が出せるようになり、ビング・クロスビーなどによってソフトにささやくようにうたうクルーン唱法(クルーンには感傷的にうたうという意味もある)が広まった。日本では藤山一郎がその唱法の影響をうけて、32年に「影を慕いて」をふきこんだ。
1920年代にアメリカでラジオ放送がはじまるが、当初はレコードと競合すると思われていた。しかしレコードはラジオの番組制作簡略化に貢献しただけでなく、音楽が放送されることによって、多くの新たな聞き手を獲得した。20年代後半にトーキー映画が、40年代以降にテレビが登場したときも、歌手や演奏者の出演がレコードの売れ行きを左右することから、主題歌や挿入歌のタイアップがすすんだ。
レコードの普及により、世界各地の音楽は時間や場所をこえてより多くの聴衆に聞かれるようになった。ニューヨークのブロードウェーの劇場、ロンドンのミュージック・ホール、パリのカフェ・コンセールなどでうたわれた歌や、コンサート・ホールで演奏されていた交響曲が街にながれ、家庭に入りこんできた。それは音楽のあり方の大きな変化を意味した。 生演奏や楽譜で音楽が流通していた時代とことなり、都市部で商業的に制作される音楽と地域に密着した民謡などとの分離がすすんだ。また、レコードやラジオや映画を通じて特定の演奏者や歌手とむすびついた曲がくりかえしながれることで、音楽家がスター化していく。新しいスターをつくりだそうとする音楽産業と聞き手の好みの移り変わりを反映して、流行のサイクルやスターの寿命がちぢまった。さらに、音楽が大量生産向けに均質化する傾向や、聞き手が受動的な消費者になる傾向も出てきた。レコードが音楽家と聞き手の健全な関係を破壊するという批判がなされる一方、ピアニストのグレン・グールドのように演奏会をおこなわずにレコードだけ発表する演奏家も登場した。
レコードの技術史は、音楽をできるかぎり生演奏に近いかたちで記録し、臨場感のある再現をめざす歴史だった。その中で、ハイファイやステレオ録音の技術が工夫され、発展していく。1950~60年代に日本で人気があったレコード・コンサートや音楽喫茶は、再現性の高さを売り物にしていた。その技術の追求は、おもにクラシックやジャズの分野で、今も盛んにおこなわれている。 1950年代に普及した磁気テープ録音でも、もちろん音質が重要視された。しかしテープ録音が画期的だったのは、生演奏だけによらない音楽づくりに道を開いたことにある。テープレコーダーの登場以後、現代音楽では録音素材をコラージュしたミュジーク・コンクレート(具体音楽)の作品やテープ・ループでくみたてた実験的な作品が次々に生まれた。ポピュラー音楽では、当初は演奏のやり直しや、出来のいい録音をつなげるのに利用される程度だった。しかしマルチトラック・テープレコーダーが登場すると、一人二重奏など生演奏では不可能だった多重録音への道が開かれ、数多くのトラックに録音した演奏を加工しながらミキシングする技術が重要視されるようになった。
1970年代のカセットテープの普及も、音楽や社会に大きな影響をあたえた。開発途上国では、比較的安価なカセットテープレコーダーが高価なレコードを駆逐し、各地で新しいポピュラー音楽の誕生をうながした。79年のイランでは、パリに亡命中のホメイニー師のメッセージがカセットテープで次々にダビングされて広がり、イスラム革命に影響をあたえた。また、同じ年に商品化されたウォークマン(ソニー)などのヘッドホン・ステレオは、都市景観や人間関係にまで影響をあたえると話題をよんだ。 1980年代に入ると記録装置のデジタル化がすすみ、CD、LD、DAT、MD、DVDなどが次々に商品化された。SP時代に片面数分だった収録時間が、LPでは片面24分両面50分程度に、82年のCDでは60~70分にまで拡大された。収録時間の拡大はポピュラー音楽では収録曲数や曲の演奏時間への制限を大幅に減少させ、アルバムの構成にも大きな影響をもたらした。 1980年代以降、ポピュラー音楽の世界では、人間が直接楽器を演奏しないで録音されるテクノのような音楽がふえていく。ヒップホップではレコードとレコード・プレーヤーがブレーク・ビーツを生みだす楽器としてあつかわれるようになった。マルチトラック・テープレコーダーやサンプラーなどスタジオの機材を楽器のようにつかい、一度録音された音楽をリミックスしてまったく別の音楽につくりかえることも多い。これはミュジーク・コンクレートやテープ・ループの手法の普及版ともいえる。
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