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地球の歴史を総合的にとらえようという考えは古くからあったが、地球全史を地球外の天体との関連もふくめて解析しようという試みが近年なされてきた。いわば、ヒトゲノム計画の地球版である。そのひとつに、1995年から3年計画でおこなわれた文部省科学研究費補助金重点領域研究「全地球史解読—物理的地球環境の日常性とイベント—」がある。通称「縞々学」(しましまがく)ともよばれる。
全地球史解読では、解読のための試料採集をする「とる」、とった試料の分析をする「とけい」、分析結果の解読をする「よむ」、えられた結果の総合的な分析と解釈をする「もでる」という4分野の技術的な基礎を確立し、40億年前(太古代)までの主要な地質時代における地球の日常的環境を知ること、そしておもに太古代(始生代)—原生代(A—P)境界とペルム紀(二畳紀)—三畳紀(P—T)境界の事件(イベント)の実態と原因を究明することを課題とした。
「とる」はすべての基礎となる試料の確保をめざした。2億年前(ジュラ紀)以降の試料は、DSDP(深海掘削計画)やODP(海洋掘削計画)ですべて確保されているので、大陸にのこされた地層で、40億~2億年前の深海底堆積物の採取をおこなった。深海底堆積物は、地球と宇宙の歴史を連続的に記録している。そこには、地球の日常的環境と地球史上の大事件も記録されているはずである。 「とけい」では、地層にあらわれる縞模様を時空間系列データとみなして、そこにタイムスケールをつけようという試みをおこなった。放射性年代測定だけでなく、潮汐やミランコビッチ・サイクル(→ 氷河時代)などの天体運動が原因となる日常的現象によって縞模様ができ、それもまた時計になると考えた。 「よむ」では、試料の縞模様から、宇宙と地球の環境変動を解読する。実物試料の化学的、物理的分析からさまざまな次元で縞模様を読むことになる。 「もでる」では、「とる」「よむ」「とけい」であつめた情報を整理解釈したり実験できない系を理解するために、数値モデルをつくり、シミュレーションをおこなう。その結果から、地球の多圏(気圏、水圏、生物圏、地圏)の相互作用を明らかにしようというものである。→ 地球化学:地球物理学:地質学
全地球史解読では、地球史上における特筆すべきイベントとして、地球史七大事件(E1からE7)をあげている。 46億年前に成層した地球の形成があった(E1)。40億年前以降に形成された岩石が保存されるようになった(E2)。27億年前(太古代と原生代の境界)にはげしい火成活動があり地球磁場強度が急増した(E3)。19億年前(原生代)に超大陸が形成された(E4)。6億年前(顕生代と原生代の境界)に巨大太平洋プリューム(→ プリュームテクトニクス)が出現し多様な生物が発生、進化しはじめた(E5)。2.5億年前(ペルム紀と三畳紀の境界)に、約1000万年にわたって海洋が酸素欠乏状態となり、生物の大絶滅がおこった(E6)。そして現在、人類が出現して人類自身や地球、宇宙の歴史やその摂理を科学によってさがしはじめた(E7)。 このプロジェクトでは、このうちのE3、E4、E6が重点課題と位置づけられ、さまざまな取り組みがなされた。地球史上の重大事件の詳細はまだじゅうぶんに解明されていない。地球史上で1度しかおこらなかった現象も多い。しかし、そういった現象でも、科学的に普遍化された方法論で追究可能であることを全地球史解読はしめしている。歴史上、1度しかおこらなかった出来事は、古い時代固有の物質や現象として大地に記録されており、このような証拠から事件や過去の日常性を読みとることが可能なのだ。 この試みは多分野の研究者がまったく新しい視点と新しい手法を開発し、きわめて新しい方向性をめざした点で画期的であり、大きな成果をあげた。これからの地球惑星研究の大きなパラダイムとなるであろう。
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