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生物学用語。ニッチ、ニッチェともいう。生物の種が、生息する環境においてはたしている、生態的な役割あるいは地位。 具体的にはその生活史、すなわち、1年のどういう時期にどういう場所で、どういう時間にどういう活動をしているか、何を食べているか、何に食べられているか、ほかの生物にどのような恩恵や損害をあたえているか、といったことである。 なお近年、この言葉が経済学に転用され、ニッチ産業(すきま産業。それまで供給のなかった市場をねらう産業)といったつかわれ方がされている。
生態系内における生物どうしの関係を解明するうえで、生態的地位という概念はきわめて重要である。同じ生態的地位をもつ種の間での競争や、生物の活動によって、新しい生態的地位が生まれる。その観点から、生態系や生物群集のあり方をダイナミックにとらえることが可能になるためである。 また、生物のすみわけや食い分けも、ひとつの生態的地位をことなった種が共有するためのニッチ分化として考えることができる。
生態的地位、すなわちニッチという用語を最初に生態学的に定義したのは、アメリカの動物学者J.グリンネルである。1917年および24年の論文で、最小の分布単位としての生息場所(ハビタット)という意味でもちい、1つのニッチを複数の種が占められないことを強調した。 これに対してイギリスの動物生態学者エルトンは、1927年に、食物連鎖の中における地位を重視する定義をした。47年にはイギリスの生態学者ラックが、ニッチを「ひとつの種が生息環境内で採食する場所」と定義し、ニッチをめぐる競合が進化における種の多様化の基本的な要因であることに注目している。 グリンネルの定義では、1つの種は1つのニッチしか占められないことを前提とする。これに対して、エルトンの定義では1つの種がことなるニッチを占めたり、ことなる種が1つのニッチをことなった空間や時間に占めたりすることがみとめられる。 その後、1957年になって、アメリカの生態学者G.E.ハッチンソンが、両者を統合するようなかたちのニッチ概念を提唱した。すなわち、種の生態的地位を、環境条件に対する対応能力と定義。種の包括的な能力としての基本的ニッチと、現実の個体群がもつ能力としての実現ニッチにわけ、ニッチの定量的な解析の道を切り開いた。
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