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項目構成
正統派進化論(総合説)に対して、さまざまな異説や異論があるが、その主要なものについて、現代生物学の知識にもとづいて検討してみよう。
まず、第1に、進化の事実を否定する創造説がある。先にものべたように、進化の事実は科学的に確立されたものであり、科学一般を否定するのでないかぎり、なりたたない主張である。この変形として、進化はみとめるが、それは神あるいはその他の超越的な存在がさだめたものだという説がある。そうした議論は、信仰の問題ではあっても、科学が介在するところではない。
第2に、自然選択ないしは生存競争を否定し、集団のすべての個体が一斉に変化するという主張がある。ネオ・ラマルキズム、定向進化説、今西進化論などがこの範疇(はんちゅう)に入る。その場合、変化にむかう要因として考えられているのは、生命力のような内在的な力か、獲得形質の遺伝である。内在的な力は、それが具体的に提示されないかぎり、科学的に検証することができない。 獲得形質の遺伝は、現代遺伝学の知識にてらして否定される。逆転写現象(→ レトロウイルス)の発見によって、DNA→RNA→タンパク質というセントラルドグマに例外のあることが明らかになったとはいえ、一般的に個体が生涯に獲得した形質が、子供に遺伝的につたえられるメカニズムはみつかっていないからである。ただし、個体のレベルではなく、集団のレベルでは、適応的な遺伝子が世代を重ねるごとに集団内に広がっていくので、集団として獲得した適応的形質が遺伝していくようにもみえるが、これは見かけだけのことにすぎない。
第3に、遺伝子変異の原因に対する異論がある。従来の総合説では、突然変異と交配の際の遺伝的組み換えのみを想定していたが、遺伝学の発展によって、それ以外の形による変異も知られるようになった。ひとつは木村資生が指摘した生体分子の中立的進化で、この説(中立説)は、分子が環境とは無関係に進化するという意味において、自然選択説に衝撃をあたえた。しかし、その分子進化の原因は、突然変異と遺伝的浮動によって説明され、また機能的に重要なタンパク質における分子進化は、自然選択によって抑制されることが明らかになり、現在では総合説の枠組みと矛盾しないと考えられている。 また、マクリントックらが発見した跳躍遺伝子や分子駆動の存在は、染色体間あるいは個体間の水平的な遺伝情報伝達があることをしめした。これらは、親から子への垂直的な遺伝情報の伝達のみを考慮にいれていた総合説に、深刻な見直しをせまるものである。しかし、それらは、進化の基本的なメカニズムとして、自然選択説にとってかわるものではない。
第4に、進化の漸進性に対する異論がある。グールド=エルドリッジの断続平衡説がもっとも典型的なもので、種が段階的に変化する小進化には総合説が適用できても、新しい種やそれより上位の分類群が出現する大進化には、大量絶滅などの環境の激変と、新しい形質の爆発的な発現が必要であると説く。この説は古生物学的な事実とはよく一致するが、生物学的なメカニズムは明確ではない。ただし、近年の分子遺伝学では、ゲノム中に、機能をもたない膨大な遺伝子や、多くの生物に共通する遺伝子群、多数の遺伝子を制御するマスター遺伝子などの存在が明らかにされており、これらの遺伝子が激変期に重要な役割をはたしている可能性はある。
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