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デジタル信号をもちいたテレビやラジオなどの放送のこと。従来のアナログ信号による放送とくらべて雑音(ノイズ)や反射電波に強いため、ハイビジョンテレビと同等の高画質や、高音質の放送が実現できる。また情報を圧縮(データ圧縮)しておくることができるため、アナログ放送にくらべてより多くの番組をおくることができる多チャンネル化や、映像や音声以外にもデジタル・データを付加したデータ放送が可能となる。また、データ放送により必要な情報をよびだすだけでなく、オンライン・ショッピングなどのように双方向化を実現することもできる。 このように、デジタル放送にはアナログ放送にくらべて数々のすぐれた特徴があるため、欧米では、1990年代前半から衛星放送、地上波放送ともデジタル化がすすめられてきた。一方、日本はテレビ技術で世界をリードしているという自負もあって、総務省や日本放送協会(NHK)が中心となり、国策としてデジタル放送を推進しようという機運がもりあがり、96年(平成8年)にCS(Communication Satellite:通信衛星)デジタル多チャンネル放送が、また2000年からはBS(Broadcasting Satellite:放送衛星)デジタル放送が開始された。
アナログとデジタルの違いは、たとえば音楽再生におけるレコードとCDとの違いとして考えることができる。レコードの場合は、音をそのままレコード盤にきざむことで記憶させていたが、CDの場合は、コンピューターに利用されているのと同じ「0」と「1」というデジタル符号に変換したものを記憶させている。そのように情報データをデジタル化することで、外部から混入するノイズに対して強くなり、きれいな映像や迫力がある音声を送信することができる。また情報データを圧縮してコンパクトにすることも可能で、デジタル放送では、高画質放送(デジタルハイビジョン放送)などの大容量の情報を送信することができる。さらに、デジタル化することで、記録の中から必要な情報をさがしだすことも容易となる。 デジタル放送の技術は、画像や音声の国際的な圧縮方式を制定したMPEG(Moving Picture Experts Group)とDVB(Digital Video Broadcasting)によってさだめられたDVB-S規格を基礎としたものとなっている。また放送に関する技術仕様としては社団法人の電波産業会(ARIB)が標準規格をさだめている。そのため、情報データを圧縮、符号化して伝送する技術や放送設備、受信機に関しても国際的に標準化されたものを利用することができる。 実際の番組の映像や音声は圧縮、符号化され、さらに選局のためのPSI(Program Specific Information)とよばれる制御情報と電子番組ガイド(EPG:Electronic Program Guide)を表示するための情報がくわえられる。さらに、有料放送を正規の契約者のみが受信できるようにするためのスクランブル処理の情報と誤り訂正符号が付加されたものが、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調され、送信される。受信側では、こうした送信側とは逆の処理をおこなうことで、番組の映像や音声を視聴することができる。 また、CSデジタル放送の有料放送チャンネルでは、正規の契約者だけが視聴できるように、映像や音声などのデータにスクランブル処理をほどこして送信している。スクランブル方式は、MULTI2とよばれるデータを暗号化する方式のひとつで、BSデジタル放送などにも採用され、日本におけるデジタル放送の標準スクランブル方式となっている。
1995年8月に日本サテライトシステムズ(現、スカパーJSAT)がうちあげた軌道位置東経128度の静止衛星「JCSAT-3」をつかい、日本デジタル放送サービス(現、スカパーJSAT)が、96年6月に「パーフェクTV!」の名称で国内初の本格的な衛星デジタル多チャンネル放送を開始した。また、97年11月からは宇宙通信(現、スカパーJSAT)が東経144度の静止軌道にうちあげた「SUPERBIRD-C」をつかい「ディレクTV」を開始したが、2000年10月に放送を中止。その後、01年5月から有線ブロードネットワークス(現、USEN)のサービス開始にともない放送が再開された。 CSデジタル放送におくれて、2000年12月から日本放送協会(NHK)およびWOWOWなどのBSデジタル放送が、東経110度に放送衛星システム(B-SAT)がうちあげたBSAT-1bを利用してはじまった。02年4月からは衛星放送と同じ東経110度にある通信衛星を利用して、BSデジタル放送と同じ受信機で受信可能な東経110度CSデジタル放送がはじまった。04年10月からは、日本初の衛星による移動体向け放送である2.6GHz(ギガヘルツ)帯衛星デジタル音声放送(→ モバHO!)も開始されたが、08年7月に放送サービスを09年3月末で終了することが発表された。 → デジタル衛星放送
一方、総務省の放送普及基本計画(1988年郵政省告示)にもとづき、2003年12月から関東、近畿、中京の一部地域で地上デジタル放送が開始され、その他の地域でも06年末までにデジタル化が終了した。その一方で、06年4月からは携帯電話向けの地上デジタルテレビ放送(→ ワンセグ)が開始されている。現在のアナログ放送は、11年7月に終了することが決定している。 これにともない、現在、飽和状態の地上波テレビ放送の周波数を整理し、デジタル放送用チャンネルを捻出(ねんしゅつ)するアナログ周波数変更作業(アナアナ変換)も2003年2月から開始された。しかし、アナアナ変換は426万世帯、放送事業者中継局が801局にのぼるため(全国地上デジタル放送推進協議会のまとめ)、総額1800億円の国費が投入される。 一方で、地上デジタル放送を受信する場合、テレビ受像器については各視聴者が個別に対応する必要がある。一般視聴家庭では受像器がアナログテレビ、BSデジタルテレビいずれであっても数万円する専用チューナーの購入が必要になる。ケーブルテレビ(CATV)加入者の場合は、CATV会社が対応するのでチューナーの必要はない。なお、衛星放送や地上デジタル放送と同様に、ケーブルテレビに関しても、2010年までには完全にデジタル化するよう、総務省の指針が出されている。 しかし、デジタル放送の特徴である高画質映像や双方向番組を受信するには、専用の地上デジタル放送対応のデジタルテレビを購入する必要がある。これらのデジタル放送テレビにはBS、CS放送用チューナーも内蔵されており、地上デジタル放送の普及によってデジタル放送が本格化するとみられている。 一方、デジタル放送に対応するために、日本放送協会(NHK)と民放をあわせて約1万4000もある中継局のデジタル化や、デジタル放送向け機器の導入費用、完全にデジタル化に移行するまで同一の内容をもつアナログ放送を平行してながす、いわゆるサイマル放送のための費用などで総額1兆円以上が必要とされている。そのため、経済効果としては、デジタルテレビの国内需要拡大などメリットがあるものの、民放の地方局には将来の経営に対する不安材料も指摘されている。
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