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19世紀に自然科学の影響をうけた実証主義が優勢になると、永遠不変の自然法という実証不可能な想定が疑問視され、正義と法を具体的に研究しようとする傾向が強まった。ドイツの法学者サビニーを中心とする歴史法学派は、法もまた永遠ではなく、民族と運命をともにする歴史的存在にすぎないとした。 20世紀の法学者ケルゼンも自然法に反対する。ユダヤ人であるためにナチス支配下のオーストリアをおわれた彼は、法学をいっさいの倫理的・政治的価値判断から厳密に切りはなそうとする。彼の純粋法学は、その対象を実証可能な実定法だけにかぎる。そして、正義は個人の主観的な価値判断にもとづくという相対主義の立場をとる。だがそうなると、正義は時代や社会とともにかわることになってしまう。 これに対して、アメリカの哲学者ロールズは「正義論」(1971)において、正義を個人の選択にゆだねるような正義論に反対する。彼はふたたび社会契約説を復権させて、「公正としての正義」を主張する。彼によれば、正義は、自由で平等な契約当事者が社会的ルールを相互承認するという意味での「公正」にもとづく。そのためには正義は2つの原理にしたがわなければならない。ひとつは、「各自が最大限に平等な政治的・精神的自由をもつ」という原理と、もうひとつは「経済的不平等が許容されるには、機会均等の原則が前提となる」という原理である。 民族対立や宗教戦争が頻発している現在、正義に関する議論は今も盛んにおこなわれている。
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