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項目構成
元素はそれぞれ特定のスペクトルをもつ。ただ、ことなる元素なのに波長の近いスペクトル線をだすこともあり、測定をあやまる可能性がある。たとえば、波長430.8nmのフラウンホーファーC線は、2つのことなるスペクトル線によってできる。カルシウムによる波長430.7749nmと、鉄による波長430.7914nmとである。 ふつうの分光器ではこの区別は困難である。しかし、カルシウムがだすほかのスペクトル線は、鉄がだすほかのスペクトル線とは明らかにことなる。したがって、スペクトル全体を、わかっているスペクトルと比較すれば、どちらか決定できる。未知の物質のスペクトルを、炎色試験のように炎で発生させたり、アークや火花などで発生させたりして、分光写真を1枚とるだけで、どの元素があるかないかを判断することが可能である。化合物の同定には、吸収スペクトルが役にたつことが多い。 紫外線領域の外のX線およびガンマ線のスペクトルは、適切な電離検出器をつかって検出する。ガンマ線のスペクトルは、中性子放射化分析でよくもちいられる。これは、原子炉の中である物質に中性子を照射すると、物質が放射性になってガンマ線をだすようになることを利用する方法である。これらのガンマ線のスペクトルによって、物質の中の微量な化学元素を同定することができる。この技術は従来の分光法とならんで犯罪捜査にももちいられている。 ラマン分光法は、1928年にインドの物理学者ラマンが発見した分析法で、化学の分野でひろく適用されている。ラマン・スペクトルは、ある条件のもとで可視光線あるいは紫外線が初めに吸収され、分子を回転または振動させたあとで、より低い振動数でふたたび放出されるときにできるスペクトルである。→ ラマン効果 赤外線領域よりもさらに波長の長い電波の領域のスペクトルには、磁場をもちいた2種類の分光法がつかわれる。ひとつは核磁気共鳴(NMR)と電子スピン共鳴(ESR)であり、分子の化学情報をしらべたり、細かい構造を明らかにするのにもちいられている。これらの方法では、電子や原子核のこまのようなスピンを利用する。まず試料を磁場の中におき、スピンの方向をそろえる。適当な電波でエネルギーをあたえると、試料の中の電子や原子核が反転して、スピンの軸が逆になるという現象がおこるのである。
光源から分光器までの距離には制限がない。したがって、太陽の光を分光分析にかけることによって、太陽の構成元素を正確に化学分析することができる(→ 分光太陽写真儀)。フラウンホーファー線は19世紀の初めに太陽のスペクトルの中の吸収線として発見され、同じ線を地球上で発生させられるとわかったのは、その後のことである。ヘリウムは地球にも存在することがわかる何年も前に、太陽(ギリシャ語でヘリオス)の中に発見され、命名された。最近では、太陽の分光学的研究によって、水素の陰イオンが存在することをうらづける証拠もえられている。このように、星の分光学的研究をとおして多くの知識がえられる。星は超高温、超高圧、低圧など、地球上ではつくることもできない条件がそろっている実験室といえるからである。たとえば、星雲のある種のスペクトル線は、地球で未発見の元素によるものだと考えられ、仮にネブリウムとよばれていたことがある。しかし今ではこれは、よく知られた元素がひじょうに高い真空状態においてだすものだということがわかっている。 また1969年には、アリゾナ大学の月惑星研究所が土星をとりまく環をスペクトル分析し、ほとんどアンモニアの氷でできていることがわかった。94年7月に木星にシューメーカー・レビー彗星のかけらが衝突したあと、木星とその大気の組成を分析するのに分光学が利用された。衝突によって内部の熱いガスが木星の大気の表面にもちあげられ、それが望遠鏡でくわしく記録されたのである。
観察者に対して光源が近づいたり遠ざかったりしているときは、スペクトル線の位置がずれる。この波長のずれがドップラー効果(→ 赤方偏移)であり、ずれをもちいて光源の相対速度を正確に測定することができる。一般に、ある星からのスペクトル線がすべて赤のほうにずれているときはその星が地球から遠ざかりつつあり、星の速度はずれの大きさから計算できる。逆に、星が地球にむかってうごいているときスペクトルが紫のほうにずれる。外宇宙の銀河のスペクトルにみられるドップラー効果は、宇宙が膨張していることをしめしている。→ 宇宙論 遠方にある星で、スペクトルが周期的に2つにわれるものがある。そして二重線になったあと、ふたたび1本の線にもどる。この現象は、2つの星が、望遠鏡で区別できないほど近くをたがいにまわるためにおこる。 このような星を連星または分光連星という。一方の星が地球に近づき、もう一方が遠ざかりつつあるとき、一方の星のスペクトルはすべて紫のほうにずれ、もう一方は赤のほうにずれる。両方の星が地球からの視線と直交してうごくときに2つの星のスペクトルは一致し、1本にみえるのである。→ 星
気体の分子は、つねに運動しており、どの瞬間をとっても分光器に近づきつつある分子と遠ざかりつつある分子とがある。したがって、すべての分子が静止しているときとくらべ、波長の短い光子や長い光子がある。このように波長が変化するため、それぞれのスペクトル線は少し幅がひろくなる。 温度があがると分子の平均速度がはやくなり、スペクトル線の幅がさらにひろくなる。したがって、特定のスペクトル線の幅を測定することで、太陽などの光源の温度を推定することができる。多くの場合、星の内側のほうが温度が高いため、幅のひろいスペクトル線が生じ、外側でスペクトルが吸収される。 星の外側のほうは低温であるため、吸収スペクトルの幅はせまい。結果として、このスペクトル線は、明るい部分の中心に暗い線がはいったようになる。この現象を自己反転という。 ドップラー効果と関連するものに、メスバウアー効果がある。ドイツの物理学者メスバウアーが、1958年に発見した。メスバウアー効果とは、1つの原子核から放出されたガンマ線を、もう1つの原子核がはねとばされずに吸収する現象である。吸収がおこるためには、放出されるガンマ線のエネルギーのスペクトルが、吸収する側の励起エネルギーのスペクトルとほぼ一致していなければならない。 放出する側と吸収する側とが少しでも相対的にうごくと、吸収する側にとってはガンマ線のエネルギーがちがって「みえる」。そこで、どちらかをうごかすことによって、ガンマ線のエネルギーを高精度でもとめることができるのである。この方法は、固体における原子核の電場および磁場の研究に重要である。この原理をつかうと、相対運動を正確に測定することができるため、宇宙船のドッキングなどに応用される。→ 宇宙探査:放射能 原子物理学の分野では、高分解能の分光分析をおこなって、原子核の大きさや形によって原子の構造がどのようにかわるのかを研究している。また、光源を磁場や電場におくとスペクトル線がわかれたり幅がひろくなったりする現象から、光源の原子構造や電場や磁場について、ほかの方法ではえられない情報をえることができる。 オランダの物理学者ゼーマンは1896年に、磁場の中においた光源からの光線を分光学的に分析し、スペクトル線の幅がひろくなったり数本になったりすることを発見した。この現象をゼーマン効果とよぶ。ドイツの物理学者ヨハネス・シュタルクが1913年、強い電場をもちいるとスペクトル線がいくつかにわかれる現象を発見した。これはシュタルク効果とよばれている。
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