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    代数学 (だいすうがく、 algebra )は 数学 の一分野で、「代数」 の名の通り数の代わりに文字を用いて方程式の解法を研究する 学問 として始まった。その意味では代数学という命名は正鵠を射ている。しかし 19世紀 以降の現代数学においては、 ヒルベルト ...

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代数学

代数学 だいすうがく Algebra
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

算数などの計算にでてくる基本的な関係を、文字をつかってあらわし、研究する数学の一分野。代数での演算も、基本的には算数と同じで、加法、減法、乗法、除法や、平方根や立法根(累乗根)といった解をもとめることなどである。ただ、算数の計算式だけでは、「直角三角形の直角をはさむ2辺の2乗の和は斜辺の2乗に等しい」というピタゴラスの定理のような数学的関係を、一般的な形でしめすことができない。算数では、この関係の特別な場合、たとえば、3、4、5に対する、

3² + 4² = 5²

を例示できるだけである。これに対し代数では、

a² + b² = c²

のような文字式によって定理がみたすべき条件をしめすことにより、純粋に一般的な主張ができる。なお、同じ数を2回掛けた(2乗した)数を平方数とよび、その数の右肩に2をつけてあらわす。たとえば3 × 3は3²と書かれ、同様に、a × aa²は同じ意味である。べき指数べき

古典的な代数学は、方程式を解くこととむすびついている。具体的な数の代わりに文字記号をつかい、文字記号は算数の演算方法にしたがって操作される(方程式方程式論)。現代的な代数は古典代数から発展してきたものだが、数学の中の構造、つまり代数構造に、より注意がむけられる。現代数学があつかう代数系とは、ある要素の集まりであって、要素間をむすびつける演算規則、つまり代数的な関係がそなわっているものである。もっとひろい意味では、代数は数学の言語であるともいえる。

II

歴史

代数学の歴史は、古代エジプトやバビロニアにまでさかのぼる。当時の人々は、

ax = b

といった形の1次方程式や、

ax² + bx = c

という2次方程式の解をもとめ、また、いくつかの未知数をふくむ

x² + y² = z²

のような不定方程式もあつかっていた。古代バビロニア人(バビロニア)たちは、任意の2次方程式があたえられたときに、今日われわれがおこなうのと同じ解法によって、それを解くことができた。さらに、不定方程式もいくつか解くことができた。

エジプトやバビロニアの伝統は、アレクサンドリアの数学者であるヘロンディオファントスにうけつがれた。ディオファントスの著書「算術」は高度な内容で、すばらしい解法によって、不定方程式のむずかしい問題をいくつも解いている。不定方程式ディオファントス解析

方程式の解法についての古代からの知識は、次にイスラム世界につたわって発展し、「復元とつりあいの学」とよばれた。アラビア語のal-jabruは、負の移項して「復元」することを意味していたが、それがalgebraつまり代数の語源となった。9世紀、アラビアの数学者フワーリズミーが、アラビア代数の最初の書物のひとつをあらわした。そこでは、方程式の基礎理論が、例と証明が付され、系統的にのべられている。9世紀末にエジプトの数学者アブ・カミルは、代数の基本的な法則や恒等式をしめし、証明もおこなっている。また、

x + y + z = 10



x² + y² = z²



xz = y²

を同時にみたすxyzをもとめよ、といった複雑な問題も解いていた。

古代人たちは、代数式をときに短く整理して書く程度だったが、中世イスラムの数学者は、未知数xの任意の「べき」をあつかうことができ、まだ現代的な記法ではないが、多項式についての代数演算もおこなっている。彼らは、多項式を掛けたり割ったり、平方根をみつけたりできたし、二項定理も知っていた。ペルシャの数学者であり、天文学者で詩人でもあるオマル・ハイヤームは、3次方程式の解を円錐曲線の交わりとしてえられる線分でしめす方法をみつけたが、その解をあらわす代数的な式は発見できなかった。

アル・フワーリズミーの著書「代数」がラテン語に翻訳されたのは、12世紀のことである。13世紀の初め、偉大なイタリアの数学者フィボナッチ

x³ + 2x² + cx = d

という形の3次方程式に対するひじょうによい近似解をえている。フィボナッチはイスラムの地を旅しているので、おそらくアラビア人の逐次近似法をつかったものと考えられる。

16世紀の初め、イタリアの数学者タルターリアとカルダーノは、どんな3次方程式についても、係数から解をもとめる方法をみいだした。その後、カルダーノの弟子のルドビコ・フェラーリは、正確に4次方程式を解いた。その結果、何世紀かの間、数学者は、5次以上の方程式の解の公式をみつけようとこころみる。しかし、そんなものは存在しないことが、19世紀初め、ノルウェーの数学者アーベルとフランスの数学者ガロアによって証明された。

未知数を文字であらわすだけでなく、「べき」などの代数演算に対する記号を発達させ、さらには方程式の係数も文字であらわす方法をみいだしたことは、16世紀の代数のきわめて大きな成果であった。記号代数の確立に多大な貢献をしたヴィエトは、「代数学の父」とも称されている。この発展の結果、フランスの哲学者であり数学者でもあるデカルトのあらわした「方法序説」(1637)第3巻をみると、現代の代数書の表記にかなり近くなっている。

だがデカルトが数学に対してもっとも大きく貢献したのは、幾何の問題を代数の問題に翻訳して解く解析幾何学の発見である(幾何学)。デカルトの本には、彼が「真の解」(正の解)、「偽の解」(負の解)とよんだ方程式の正負の解の個数をかぞえる「符号律」など、方程式論もふくまれている。

方程式論の研究は18世紀を通じてつづけられたが、1799年になってドイツの数学者ガウスは、どんな代数方程式もかならず複素平面上に解をもつことを証明した。

ガウスの時代になって、代数は現代的な局面に突入した。代数方程式を解くことよりも、抽象的な数学体系の代数構造を研究するほうに注意がうつっていった。方程式論の研究の中であった複素数のような数学的対象の性質が、新しい代数演算の公理のもとになった。こうした体系の例として、や4元数がある。どちらも、記数法の性質の一部をもってはいるが、それにとどまらない性質をもつという点が重要である。

群は、代数方程式の解を置換する操作の体系としてはじまったが、やがて19世紀の数学全般をつなぐおもな概念のひとつになった。この研究に対して重要な貢献をしたのは、フランス数学者のガロアとコーシー、イギリスの数学者アーサー・ケーリー、それにノルウェーの数学者アーベルとソファス・リーである。イギリスの数学者で天文学者であるハミルトンは、複素数の性質を拡張して4元数を発見した。複素数がa + biの形をしているのに対し、4元数はa + bi + cj + dkという形をしている。

ハミルトンが4元数を発見してまもなく、ドイツの数学者ヘルマン・グラスマンがベクトルの研究をはじめた。その特徴は抽象的であったが、アメリカの物理学者ギブズは、ベクトル代数が物理学にひじょうに役だつ体系であることをみとめた。ちょうど、ハミルトンが4元数の有用性をみとめたように。こうした抽象的な研究方法がどんどんひろがり、ジョージ・ブールは論理の基礎を代数的にあつかった「思考の法則についての研究」を1854年に書いた。

それ以降、現代の代数学はますます発展をつづけている。抽象代数ともよばれるこの分野では、重要な新しい成果が次々と発見され、数学のあらゆる分野はもちろん、さまざまな科学に対しても適用されるようになった。

III

代数の初歩と基本的な考え方

代数学では、数のほかに文字をつかい、文字をふくんだ式の計算がおこなわれる。また、いくつかの演算記号や、式を書くときの約束事がある。しかし、古典的な代数学では、文字についても数と同じ扱いで計算をすすめていくと考えてよいし、演算記号も算数でつかうものを簡潔にするか、少し拡張するかした記号にかぎられる。

現代の代数学では、数の四則演算とはかなりちがうタイプの演算も導入され、文字もたんなる数の代わりではなく、より抽象的な数学的対象をあらわすことが多い。代数の表記の約束事は、基本的には文字のはいった式の意味をみやすくするものであり、古典代数学の場合は算数の表記をより明確に整理したものとして理解できる。

1

文字の働きと操作

未知の数を文字であらわすことから、代数ははじまった。たとえば、ある未知の数を2倍したものに3を加えると7になったとしよう。この未知の数をもとめるには、それをxという文字であらわして、ふつうの数と同じように計算しながら、等式を変形していく。これが、方程式の考え方である。この例であれば、まず最初の条件を、

x × 2 + 3 = 7

とあらわし、等式の両辺から同じ数を引いても、両辺を同じ数で割っても、等号はなりたつという性質を利用して、式を変形していけばよい。

x × 2 + 3 - 3 = 7 - 3



x × 2 = 4



x × 2 ÷ 2 = 4 ÷ 2



x = 2

こうして、未知の数は2であることがわかった。途中の計算で、文字xは、ふつうの数とまったく同じようにあつかわれたことがわかる。ただ、xがどんな数であってもいいように、すべての数がしたがう計算規則だけをもちいて操作するわけである。たまたま計算の結果、2という特定の数であることがわかったが、xが別の数であったとしても途中の計算過程はかわらない。

文字をつかう利点を生かして、最初の式の数字の部分も、こんどは文字であらわしてみよう。ただしaは0でないとしておく。

x × a + b = c



x × a + b - b = c - b



x × a = c - b



x × a ÷ a = (c - ba



x = (c - b) ÷ a

計算の方法は、まったく同じである。今度は、abcはどんな数だと思ってもよい。たとえばa = 2、b = 3、c = 7とすれば、いちばん上の式は、最初に考えた方程式をあらわすし、a = 6、b = 11、c = 29の場合であれば方程式

x × 6 + 11 = 29

をあらわす。そして、いちばん下の式のabcに同じ数字をいれる、つまり代入することによって、この場合の未知数xの値がただちにわかる。つまり、

x = (29 - 11) ÷ 6 = 3

が、この方程式の解である。文字を使うことによって、この形の方程式すべてにあてはまる、一般的な解の公式がえられたのである。

ふつうの数と同じ扱い方で文字の計算をすすめていくことで、さまざまな一般的公式がえられる。すべての数がしたがう計算規則のほかは何の前提条件もなしに、その公式がえられたとすれば、その中の文字にどんな数を代入しても、その公式はなりたつ。こういう性質をもつ公式を、恒等式という。たとえば、

a - a = 0



(n - 1) + n + (n + 1) = 3 × n



(x + y) × (x - y) = x × x - y × y

などはそれぞれの文字の所に、どんな数を代入してもなりたつ恒等式である。真ん中の式についてみると、nに、どんな自然数(1, 2, 3, ...)を代入してもなりたつことから、「引きつづく3つの自然数の和は、かならず3で割り切れる」ことがわかる。もちろん、この式はnが自然数でない2.7のような数であってもなりたつ。これに対して、

a + x = 1

のような式は、aに1、xに0を代入した場合はなりたつが、axともに1を代入した場合はなりたない。このように、無条件にどんな数を代入してもなりたつとはかぎらないものを条件式という。条件式のうち、特定の文字が未知数をあらわし、その未知数をもとめるための条件をしめしているようなものを、方程式という。

このように、代数の式にあらわれる文字は、未知の数をあらわしたり、既知のきまった数をあらわしたり、すべての数を一般的にあらわしたりと変幻自在の働きをする。同じ式の同じ文字でも、見方をかえれば、別の意味に理解できることも多く、新しい数学的な関係に気づくきっかけにもなる。また、数と同じ扱い方で文字を計算していくといっても、どんな数にも共通する規則にしたがって計算しなければならない。このことが、数の演算規則を自覚させ、有理数から実数、さらに複素数の概念を明確にし、ひいては現代代数学へとつながっていったのである。

なお、歴史的な慣習で、未知数をあらわすときはアルファベットの最後のほうの文字xyzなどがつかわれ、既知の定数や一般的にすべての数をあらわすときはabcなど最初のほうの文字がつかわれる。

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