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    自然法 (しぜんほう、 英: Natural law 、 独: Naturrecht 、 羅: lex naturae, lex naturalis )とは、事物の 自然本性 ( 英: nature 、 独: Natur 、 羅: natura )から導き出される 法 の総称である。

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自然法

自然法 しぜんほう Natural Law
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

自然(本性)にもとづいて成立する法則や規範。もとは哲学と倫理学の用語。法律学では立法や裁判、慣習などを通じて人間がつくる実定法に対置される。自然法は実定法よりも高次にあり、普遍的に適用できる法として、実定法のあるべき姿を表現して実定法を正当化しまたは批判する理念とされる。これに対して、自然法の存在をみとめず、実定法以外に法は存在しないとする立場があり、これを法実証主義という。自然(本性)をどう理解するかによって、自然法の内容や自然法に違反する実定法の効力などについては自然法論者の間でも見解がことなる。

II

古典的な自然法理論

自然法理論と類似の発想は老荘思想など東洋にもみいだせないことはない。しかしふつうは、古代ギリシャ以来の伝統をもつヨーロッパの政治思想・法思想の中から生まれた自然法をさす。アリストテレスは2種類の正義を区別した。「どこにおいても同じ妥当性をもち、われわれの承認を必要とはしない正義の法は、自然法的である。本来はどのようであってもさしつかえないが、いったんさだめられれば、そうでなくてはならないような正義の法は、人為法的である」。

体系的な自然法理論を構築したのは、ストア学派、とくにクリュシッポスであった。ストア学派によれば、全宇宙は、神、精神、運命などとよばれる能動的原理によって合理的に支配されている(ロゴス)。人間の本性(自然)もまた宇宙の一部であり、自然法則にしたがうことが善である。人間以外の自然物はその衝動にしたがうことが自然だが、人間にとっての自然とは理性にしたがうことである。このような自然法の観念はローマ帝国にもひろまり、自然法は人間であるかぎり平等に適用される理想の法として理解された。前1世紀の弁論家キケロは「国家論」において、自然法の有名な定義をあたえている。「自然と調和したただしい理性こそ真の法である。真の法は普遍的に適用可能であり、不変にして永遠である」。

III

キリスト教の自然法思想

ストア学派の自然法理論はキリスト教の信仰と一致した。パウロは、「律法をもたない異邦人も、律法の命じるところを自然に行えば、…自分自身が律法なのです」(「ローマの信徒への手紙」2章14節)とかたった。6世紀のスペインの神学者イシドルスは、自然法は自然の本能によってどこでも遵守されると断言した。イタリアの学者グラティアヌスは、1140年ごろにあらわした教会法の教科書「グラティアヌス教令集」の冒頭にこのイシドルスを引用し、スコラ学者たちの間に広範な論争をまきおこした。

トマス・アクィナスは「神学大全」(1265~73)において、神が被造物を理性的にみちびく働きを「永遠の法」とよんだ。永遠の法はすべての存在者に、それにふさわしい活動と目標への道筋をあたえる。おのれの活動を方向づけ、ほかのものの活動をみちびく理性的な被造物は、神の理性そのものをわかちもっている。理性的な被造物がわかちもつ永遠の法が自然法である。トマスの理論は後世にも影響をあたえ、現代の自然法論では基本的に彼の理論に依拠する新トミズムが主流となっている。

IV

近代の自然法理論

近代の自然法理論の創始者は、オランダの法学者グロティウスである。それまでは個人から独立に、神の意志などにもとづいて客観的に自然法が存在するとされていたが、グロティウスの、神が存在しなくても自然法は妥当性をもちうるという主張は、神学的前提と絶縁し、17~18世紀の純粋に合理主義的な理論への道を準備した。

17世紀のイギリスの哲学者ホッブズは、歴史の始まりに個々人が自然権をもつ自然状態を仮定し、そこから社会矛盾が生じ社会契約へいたるという理論をたて、万人の万人に対する闘争を克服し平和を維持するための自然法理論をつくりあげた。自然はどのような支配的権威もおかしえない権利を人間にあたえたというロックの自然法理論は、民主的政治体制と革命権を正当化することで市民革命の思想的な支えとなり、フランス革命やアメリカの独立宣言に具体化された。

いっぽう、ドイツの大学ではじめて自然法の講座を担当したプーフェンドルフらは、日常のこまごまとした規定までふくむ壮大な自然法の体系をつくりあげた。

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