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中国や日本では梵語(ぼんご)ともいう。インドのヒンドゥー教徒の神聖な古典文語で、インド・ヨーロッパ語族、インド語派(→ インドの言語)に属する。サンスクリットは「かざられた、洗練された、完成された言語」の意味で、紀元前の昔から20世紀の今日まで、インドの聖職者、学者、教養層の文語としてうけつがれてきた。サンスクリットの文法は前4世紀ごろのインドの文法家パーニニによってまとめられたが、この文法書は19世紀以前のもっとも科学的な文法書とみなされている。サンスクリットはデーバナーガリー文字で書かれる。
サンスクリットが成立する以前のインドには、ベーダ聖典にのこされたベーダ語とよばれる言語が存在した。それはサンスクリット同様人工的な「高尚な言葉」で民衆の話し言葉にもとづきながらも、何世代にもわたって僧侶の歌い手によってつたえられてきたものだったが、サンスクリットのように整理されておらず、時代的にも地理的にも多様だった。前4世紀ごろにパーニニがあらわれて、それまでの言語を整理して文法をまとめ、古典サンスクリットを成立させた。ひろい意味ではベーダ語もふくめてサンスクリットとよぶが、より厳密な意味ではこの古典サンスクリットをもってサンスクリットの成立とする。 古代のインドには、これら「高尚な言葉」以外に各地でつかわれたプラークリットとよばれる通俗語が数多く存在した。その中でよく知られているのはパーリ語である。プラークリット諸語とサンスクリットの関係は、大まかにいって、ロマンス諸語とラテン語の関係にひとしい。 ベーダ語と古典サンスクリットとの違いは、ほぼホメロスのギリシャ語と古典ギリシャ語との違いに相当する。文法形式の点で、ベーダ語はサンスクリットにくらべてより複雑だが整理されてはいない。サンスクリットは、ベーダ語の文法形式の多くをそぎおとした。たとえば、名詞では、8つの格のそれぞれことなる語尾は、もっともふつうにつかわれる名詞の単数形にしかみられない。ベーダ語の接続法はなくなり、約12あった不定法は単一の形になった。中世までに、パーニニの時代にはまだ機能していたベーダ語の高低アクセントをうしなった。このような簡略化にもかかわらず、サンスクリットは複雑な言語であることに変わりはなく、屈折(→ 屈折語)を多用するばかりでなく、母音交替や文中での音の複雑な変化をもつ。文法性は男性、女性、中性の3つで、数も単数、両数、複数の3つある。サンスクリットはおそらく、古典ギリシャ語についでインド・ヨーロッパ祖語の言語状態をよく保存している。
16世紀以降、ヨーロッパの宣教師たちは、サンスクリットとその文学をある程度知るようになった。ヨーロッパで最初のサンスクリット文法書が出版されたのは1790年である。西欧の学者がサンスクリットの存在とインド人によるその教授法を知ったことから、インド・ヨーロッパ語族が確定され、パーニニの方法に刺激をうけて科学としての比較言語学が確立されることになった。またサンスクリットの文献は、比較神話学と比較宗教学、比較法学の研究に大きな影響をおよぼした。 サンスクリットは仏教とともに中国、そして日本につたえられ、奈落、伽藍など日本語にはいった単語も数多い。
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