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  • 民族音楽 - Wikipedia

    民族音楽 (みんぞくおんがく、ethnic music)とは、民族土着の音楽、またはそこから発展した音楽のことである。

  • 社団法人 日本民族音楽協会

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民俗音楽

民俗音楽 みんぞくおんがく Folk Music
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

口頭伝承の音楽。楽譜よりも、実際の演奏を手本としてまなんだり、ききおぼえたりして伝承される音楽。作者不詳であることが多く、作曲者名が判明している場合でも、個人の名は重視されない。民俗音楽は世界じゅうの多くの社会に存在するが、その形態、社会的状況、文化的状況はさまざまである。この項目では、西洋諸国の民俗音楽を中心にのべるが、それでも様相が多岐にわたるので、あらゆる地域の民俗音楽とその特徴を包括的にのべることはせず、実例をしめして説明する。

II

共同体との関係

民俗音楽は、その民族共同体に所属する人々によって演奏されるもので、かならずしも音楽の専門家が演奏するものではない。そうした性格から、儀式、労働、子育てのような、実生活での出来事との密接な関連が、しばしば指摘される。民俗音楽に対比する音楽は、古典音楽、あるいは芸術音楽である。

民俗音楽である民謡の伝承においては、創造的な衝動のために変化がおこったり、まちがって記憶されたものがつたえられたりするほか、伝承者の美的な価値観の影響もうけやすく、ほかの音楽様式の影響によっても変化が生じる。こうして、ひとつの民謡にたくさんの変形が登場する結果をまねき、徐々に、そしておそらく意識することなく変化をくりかえし、多くの異形(ちがった形式)を生みだす。ひとつの異形の形成に大勢の人間がかかわるので、この過程は共同体による再創造とよばれる(この点は、個人名でつたわる音楽と決定的にことなる特徴といえる)。

また民俗音楽は、近隣の文化の中心地(たとえば、都市、宮廷、修道院)の芸術音楽の影響もうけやすく、古い芸術音楽が民俗音楽の中に長期間のこされることもある。しかし、民俗音楽は民族共同体ときわめて密接な関係にあることから、民族独自の音楽と定義することもできる。この種の音楽は、たいていの場合、学校や教会といった機関とのかかわりをもたず、民衆生活の中に根づいている。

上記のような定義は、基本的にはただしいもので、とくに20世紀以前の西ヨーロッパの田園文化については的確な定義といえるが、この規範にあてはまらない例外も多数みとめられる。まず、民俗音楽と、そうでない音楽に明確な境界線をひけない場合があげられる。民謡の中には古典音楽の歌が民謡となった例が散見されるからである。

都会の文化の中で発展し、マスメディアをとおしてつたえられるポピュラー音楽に、民俗音楽の特徴がみられることもある。ときには、民俗音楽の専門家(たとえば、長い叙事詩を演奏する器楽奏者や歌手たち)も存在する。また、民謡の音楽が口頭伝承されている場合でも、歌詞だけは文書や印刷物によってつたえられていることがある。

ヨーロッパ以外でも、洗練された音楽伝統をもつ文化の中に、民俗音楽は存在する。インド、中国、中東などがその例だが、社会における音楽の役割や、ほかの種類の音楽との関係は地域によってことなる。インドでは、古典音楽と民俗音楽の境界が明白である。中東では、ひとりの音楽家が民俗音楽にも古典音楽にも参加するようである。イランでは、民俗音楽は「ローカル音楽」とよばれるが、古典音楽の伝統をうけつぐ音楽家以上に専門化された音楽家たちによって演奏されている。民俗音楽という用語は、本来、音楽的な階層のない音楽文化、つまり、対極的な古典音楽をもたない文化の音楽という意味だが、現在のところただしく使用されていない。一般的に民俗音楽とは、口頭伝承によってうけつがれる比較的に単純な音楽で、民俗的なグループと関連をもつものと定義することができる。

III

音楽構造

ヨーロッパ文化の民俗音楽は変化にとんでいるが、ある共通の特徴をもっている。たいていが有節形式の歌で、音楽は比較的単純である。有節形式とは、詩を数行の節にわけ、各節で同じ音楽をくりかえす形式である。もっとも典型的なものは、各節が4行で形成されるタイプであり、4行とも歌詞がことなるもの(ABCD)と、歌詞の繰り返しのあるもの(たとえばAABA, ABBAなど)がある。反復をふくむ場合のほうが多い。交唱、つまり1行または1節ごとにリーダーと合唱が交互にうたう習慣はヨーロッパ全域に共通してみられる。複雑な物語をうたう叙事詩の歌では、ひとつの旋律型がくりかえされて、長大な物語となる。器楽曲は、節を何度もくりかえしたりせずに、音楽を進展させるが、同じ旋律を2度演奏したり、少しかえて変奏する場合が多い。民俗音楽の作曲家たちは特別な音楽教育をうけていないが、音楽素材をくみあわせる手腕は洗練されている。東ヨーロッパの民俗音楽には、移調して旋律をくりかえす技法が浸透している。たとえばハンガリーの典型的な形式は、前半の旋律を5度低くして後半部分でくりかえす。

ヨーロッパの民俗音楽においては、旋律素材が芸術音楽の旋律素材と密接な関連をもっている。音階も7音音階がつかわれており、ときには、中世の教会旋法のような旋法が使用されていたり、調性をもつこともある。ドリア旋法、ミクソリディア旋法とイギリスの民謡の旋法には共通点があり、スペインの民謡にはフリギア旋法がみられる。ただしヨーロッパ全域にみられる、もっとも一般的な音階は5音音階である。3音音階、4音音階など、より簡単な音階の歌は子供の「わらべうた」にみられる。

リズムは詩の韻律構造と関係がある。イギリス民謡の詩は短長格、もしくは弱強格の韻をふんだ詩がしばしばもちいられ、旋律のリズムにも詩の韻律を反映した3つのリズム・パターンがつけられる。

東ヨーロッパでは、2 + 2 + 2 + 3拍のような複合拍子や、5拍子、7拍子、11拍子、13拍子のような拍子がみられ、このような拍子はバルカン諸国でとくによくみられる。この地方の器楽曲は同じリズム・パターンをくりかえす傾向にあり、それは西ヨーロッパの音楽にも共通する。ただし、バイエルンの民俗舞踊などでは、4拍子と3拍子の部分が不規則に交替するような複雑なリズム構造がもちいられている。

ほとんどの民俗音楽は単旋律で、器楽の伴奏は単純な和音をつけるだけであったり、しばしばドローン(1音または1和音を持続してならす)である。多声歌曲はたいてい2~3声のポリフォニー(同じ旋律を各声部が模倣する歌唱法)であり、ドイツ、オーストリア、イタリア、スペイン、バルカン諸国、そのほかの東ヨーロッパ諸国にみられる。

ひじょうにまれではあるが、同じ旋律をちがった音高で同時にうたう音楽も存在し、3度あるいは6度(ドイツ、イタリア、スペイン、西スラブ諸国)、4度あるいは5度(ロシア、ウクライナ)、2度(バルカン諸国)などの音程で、歌い手が同じ旋律をうたう。このほか、輪唱は世界にひろくみられ、ドローンつきの歌(イタリア)や、もっと複雑な複旋律の歌(ロシア、バルカン諸国)も知られている。このような多声の民俗音楽はアジアではほとんどみられない。しかし、イラン、アフガニスタンなどでは、古典音楽よりも民俗音楽でポリフォニーが一般的につかわれている。

発声法や楽器の音色も、民俗音楽と芸術音楽ではきわめてちがっている。訓練されたオペラ歌手のもちいるベル・カント唱法はめったにもちいられない。それぞれの文化、あるいは地域に独特の発声法が発展し、民俗音楽を特徴づけている。スペイン、イタリア、バルカン諸国では、鼻にかかったような声をだし、旋律には多くの装飾をつける。ドイツ、チェコ、スロバキア、ポーランド、ロシアでは、のどをひらいてはっきりした声をだし、旋律を装飾することはあまりない。両方を混合したような様式は、イギリスやフランスの一部の地域にみられる。アメリカ合衆国の民俗音楽の歌の様式は、東部、西部、南部、黒人の伝統のものに明確に区別できる。

民俗音楽では、バイオリンに似た弓奏の楽器(フィドル)がしばしばつかわれるが、この奏法もコンサート・バイオリンの奏法とはかなりことなっており、ビブラートやスラーは使用せず、そのかわりに各音をはっきりとひく。

IV

今までにのべたような様式的な特徴は、地域や国を特定する重要なポイントとなる。民謡は、たえず旋律の微細な変化曲を生むが、国をはなれてつたわることはめったにない。しかしながら、ひとつの曲が、ある国からほかの国につたえられ、その伝承の過程で様式さえも変化してしまうことがたまにある。ある国では独唱される歌が、他国では合唱されたり、5音音階の音楽が、ほかの国では長調となっていることがある。

実際に、遠くはなれたスペインとハンガリーで、ひじょうによく似た旋律が発見された例がある。しかし、両国の旋律はそれぞれの国に特有の様式も反映している。このように、地理的にはなれた国や共同体から類似した旋律が発見されることはあっても、その関係を明らかにすることはたいへんむずかしい。

それにもかかわらず、ひとつの国につたわる多数の民謡の中には、たがいの関係を確認できるものもある。それらのすべては、元となるひとつの旋律を口頭伝承したり、再創造した過程で変化を生じた曲と考えられる。そのような関係のみとめられる曲のグループは曲調家族(チューン・ファミリー)とよばれる。民俗音楽の曲の多くは、確かに数百年の歴史をもつが、レコードや採譜集によって現在知られているバージョンで、100年以上たっているものはまれである。現在のいくつかのバージョンを比較してみると、ひとつの曲調家族がどのように発展するかを明らかにすることができる。たとえば、ある旋律が短くされている例が目につく。本来、4行の歌詞をもつ曲の前半部分が欠落し、後半2行だけで新しい曲となっているものがある。つぎに、欠落した部分に新しい歌詞と音楽をつけくわえた曲も存在する。また、対比的な2つの旋律から構成されていた曲の2番目の旋律がわすれられたり、たんに最初の旋律の反復におきかえられているものも観察される。さらには、まったく関係のない曲調家族に属する曲の一部が借用されたり、AABA形式の曲のB部分が独立して、新たな曲になることもある。

曲調家族の数は、地域によってさまざまである。ハンガリーの民俗音楽には何百もの曲調家族があると考えられる。アングロアメリカの民俗音楽には、約40~50の曲調家族があるが、そのうちの7つはひじょうに大きいものである。イランでは、英雄的な戦士の歌、イスラムの聖者の殉教の歌というように、歌詞の内容がきまった旋律のタイプをとるため、曲調家族の数は少ない。

バラードのように、歌詞がいくつもの節をもち、長い物語をかたる歌は、たいてい1つの旋律ないしその変形した旋律だけをもちいて、全曲がうたわれる。しかし、ときにはいくつかの曲調家族の旋律がもちいられたり、同じ曲調家族であるのに歌詞がまるでちがうことがある。こういうケースは、ヨーロッパとアメリカ諸国に流布したバラードのように、ひろい範囲につたわった旋律に生じる現象である。しかし、これらの旋律はすべて1つの曲調家族とみなされるものであり、どの国につたわっても曲調家族の枠をこえることや、ほかの種類の旋律と混同されることはほとんどない。

各地の民俗音楽はひじょうに多くのレパートリーをもつが、それらの成り立ちは千差万別であるため、厳格な分類をおこなうことはたいへんむずかしい。伝承の過程で変化するものと、変化しないものを定式にあてはめて整理することができないことは、イギリスでは旋律の進行が、ハンガリーではリズムがかわらない要素であることからも容易に理解できる。したがって、すべての旋律の分類は、今後の研究の成果にゆだねなければならない。

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