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項目構成
ロッシュはさらに同一カテゴリー内の成員間の関係を考え、個々の成員は「族類似性」(family resemblance)によってむすばれているとみる。この考えの背後には、あるカテゴリー内の成員は、その典型性の程度において順位づけられる、という考えがある。たとえば、「鳥」というカテゴリーにおいて、スズメやウグイスは、その形状や飛翔(ひしょう)の形態などの点からして、だれもが「鳥」カテゴリーの典型的成員だと考えるが、定義の上ではたしかに鳥カテゴリーにふくまれるものであっても、フクロウやニワトリ、さらにはダチョウになると、典型性の点では、順位は明らかに低くなると考えるだろう。 典型性の高い成員どうしは、共通属性を多くもち、したがって族的類似性が高い。この原理にもとづけば、同一カテゴリー内の成員を2次元空間に配置することが可能になる。実際、ある個物があるカテゴリーの成員であるかどうかをできるだけはやく判断させるとき、その反応時間は、典型性が高いほどはやいことが知られている(典型性効果)。
概念や名詞の意味を考えるときに、意味特徴semantic featureの集合によってそれを表現することが、これまで幾度となくこころみられてきた。たとえばスミス、およびショーベンとリップスは、コマドリとニワトリと鳥の意味を意味特徴によって表現することをこころみた。それによれば、そのいずれも「うごく」「翼をもつ」「羽毛がある」という共通する意味特徴をもついっぽう、「飛翔する」は、コマドリと鳥に共通するが、ニワトリは、この意味特徴をもたないこと、また「さえずる(→ 囀り)」や「小さい」という特徴もニワトリはもたないことなど、先のロッシュの属性の集合という考えに近い整理が可能になる。 彼らはさらに、それぞれの特徴に0から1の間の数値による重みづけを考えた。つまり数値の1.0は、その事物を特徴づけるうえで、その意味特徴が、本質的に重要であることを意味する。たとえばニワトリの意味の理解にとっては、それが「飛翔する」という特徴の重みづけが低いというばかりでなく、むしろ「あるく」とか「トサカをもつ」などの特徴の重みづけが高い、ということが重要だということになる。この確率論的意味特徴説は、われわれの言葉の意味理解の一端を比較的よく説明するものとうけとめられている。 意味(命題)ネットワーク・モデルを、コンピューターによる言語理解モデルとして、最初に提唱したのはキリアンで、このモデルはのちの研究に大きな影響をおよぼした。この意味(命題)ネットワーク・モデルには、いくつかの特徴がある。まず意味ネットワークの要素は、ノードとよばれる「点」でしめされ、それは上位カテゴリーや基礎カテゴリー、あるいは下位カテゴリーなど、記憶における個々の概念をあらわす。そのようなノードとノードが、矢印(方向性)をもった線でつながれて、ネットワークが構成される。まず個々の概念(ノード)は「もつ」「できる」「である」の3種類によって表示される。つまり、ある概念はいくつかの属性を「もつ」。またその概念は、いくつかの機能や働きをすることが「できる」。また、ある概念と他の概念との関係は、一方が他方の事例「である」という関係や、一方が他方の部分集合「である」という関係によってしめすことができる。
こうして階層構造をなすネットワークが構成される。一例としてカナリアとダチョウ、鳥、動物の意味的ネットワークを考えてみよう。まず動物は、生物の部分集合であり、頭や足をもち、食物を食べることができ、代謝や生殖の機能をもつ。鳥は、動物の部分集合であり、羽や翼をもつが、とぶことができるものもあれば、できないものもある。カナリアは、その鳥の部分集合であり、黄色い色をもち、とぶことができ、目の前のカナリアはその事例である。他方、ダチョウは同じく鳥の部分集合であり、羽と翼をもつが、とぶことができない。 このネットワークの特徴のひとつは、カナリアの場合、食べ物を食べることが「できる」という特徴が、そのノードに直接記入されていないにもかわわらず、間接的に規定できることである。つまり、動物は、食べ物を食べる。鳥は、動物の部分集合であり、カナリアは、鳥の部分集合である。それゆえ、カナリアは、物を食べるという関係が規定されてくる。このように、部分集合の考えによって、意味が階層化されていると考えれば、コンピューターに言葉や知識を記憶させるときに好都合であることは明らかである。
コリンズとロフタスは、キリアンのネットワーク・モデルにもとづいて、活性化拡散モデルを提唱した。このモデルでは意味的に類似したものが、接近して、配置され、共通特徴をより多くもつ概念ほど、多数の項目とむすびあわされている。この理論では、このようなネットワークにおいて、ある概念が活性化されれば、それがネットワークにそって拡散していくと考える。したがって、ひとつのノードが活性化されれば、その近隣にあるノードも活性化されることになる。 この理論モデルによって、「カナリアは鳥だ」と「ダチョウは鳥だ」の文章の真偽判断の速度が、前者のほうが後者よりもはやいという典型性効果など、種々の実験結果が、よりよく説明できることがしめされてきた。 この活性化拡散モデルは、文章理解にも有効である。たとえば「カナリアは鳥である」という文章を理解するときに、まず主語の「カナリア」によってカナリアの意味(ノード)が活性化し、それが鳥概念ノードに拡散する。したがって、読みが鳥のところにきたときのその処理速度は、すでに鳥の意味が活性化しはじめているので、鳥という刺激を単独であたえられたときよりもはやいと考えられる。つまり、先のカナリアが後の鳥の意味処理にある種のプライミング効果をもつわけである。 カナリアとダチョウが鳥であるかどうかの真偽判断速度の違いも、活性化拡散の度合いがカナリアとダチョウとでことなると考えれば、うまく説明がつく。同じことは、言語刺激についてもいえる。2つの言語刺激を少しの時間間隔をおいて提示し、それぞれの言語刺激が有意味であるか無意味であるかの判断をもとめる実験で、2つの言語刺激が意味的に連関していれば、2番目の刺激への反応が有意にはやくなる。このような意味的プライミング効果を説明するうえに、この活性化拡散モデルが有効であることは明らかである。
長期記憶にたくわえられた知識や意味の情報処理を考えていくうえで、ラメルハートのスキーマ理論やシャンクのスクリプト理論はきわめて重要な意味をもち、またこれらの概念はほかの研究分野にも大きな影響をあたえてきた。とくに認知心理学においてこれらの概念が重視されるようになったのは、それがコンピューター言語で表現できる知識表現システムにおきかえられるからである。
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