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スキーマという概念そのものは、バートレットの古典的な研究にすでにみられる。人はある事柄を記憶するときに、それを何かに関連づけて記憶しようとするが、その関係づけをもとめるときの既得の知識構造のことを、バートレットはスキーマとよんだ。それを認知心理学の枠組みの中でつかえる概念に練成したのがラメルハートやシャンクである。たとえば、「買い物をする」というのは、店にでかける、品物をさがす、どれを買うかきめる、お金をはらうという一般的な構造をもつから、ひとつのスキーマである。 一般的に何かを買うということはなく、買い物はどこかで何かを買うという行為のはずである。店はいくつもあり、買うべき品物も無数にあるから、具体的な購買行動は、この一般的スキーマの各項を変数とみて、それを一定の値(デフォルト値)でおきかえていく行為だと考えられる。 さらに、スキーマは、埋め込み構造ないし包含関係によって、いくつかのスキーマが相互に関連する形にでき、その意味で、スキーマは知識のかたまりである。これがラメルハートのスキーマの定義である。
他方、シャンクは、レストランで食事をするという行為は、店にでかける、いすにすわる、メニューをみる、ウエイターにオーダーするなど、一連の連鎖した行為、つまりスキーマからなりたっており、したがって、通常のわれわれのレストランでの行為は、このレストラン・スキーマのプログラムにしたがってなされていると考え、このようなスキーマを俳優が台本にあわせて演技するときの台本になぞらえて「スクリプト」とよんだ。 われわれは世界でのさまざまな経験をスキーマやスクリプトの形に統合して長期記憶にたくわえ、また、今現在の認知や行動を、既得のそのようなスキーマやスクリプトをガイドに実行している可能性がひじょうに高い。つまり、過去の経験を知識として統合してたくわえつつ、現行の認知をそれによって枠づけるというように、スキーマやスクリプトは二重の機能をもっている。 こうして、スキーマやスクリプトに関する認知研究が多数生みだされることになった。また、文章読解など、心理学的に重要な認知研究のテーマでありながら、古典的な研究の枠組みのもとではじゅうぶんにとりくめなかった問題が、これらの概念をもちいることによって徐々に解明されつつある。
これまで、知覚過程や記憶過程など、今日の認知心理学研究の中でももっとも基礎的な部分について解説をこころみてきた。この領域にかぎっても、最近の新しい研究動向を詳細に紹介することはむずかしい。知覚や記憶の領域以外でも、言語心理学の領域や思考心理学の領域で数多くの認知研究がなされており、とくに近年はコンピューター・シミュレーションをもちいた研究が盛んになってきている。そのような認知心理学をその全体にわたって知ろうと思えば、いくつか出版されている認知心理学シリーズを通読する必要がある。またさらに、ここに紹介したモデルもふくめて、今日の最先端研究における認知モデルをじゅうぶんに理解するためには、狭義の認知心理学だけでなく、よりひろい認知科学の基礎知識、つまり情報処理理論(→ 情報理論)や人工知能など、コンピューター科学の基礎知識が必要になり、さらに神経生理学などの基礎知識も必要になってくるだろう。
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