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項目構成
感覚器における細胞レベルの処理や分析は、感覚器に固有の制約をもち、視覚の場合は、光エネルギー(電磁波)だけが処理され、聴覚の場合には、音波だけが処理される(これを感覚器に対する適刺激という)。また古典的研究が明らかにしてきたように、適刺激であっても、それが処理可能となるためには、一定の範囲内の強度であることが必要である。処理されて知覚をもたらすのに必要な下限の強度の刺激を刺激閾(しげきいき)または絶対閾、上限の強度の刺激を刺激頂といい、また知覚可能な最小の刺激間強度を弁別閾という。刺激閾と刺激頂については、人間の耳に聞こえる音波は16~20000Hz(ヘルツ)の間であって、それを下まわるかあるいは上まわる振動数の音はきこえないという例がわかりやすい。また、弁別閾はそれぞれの感覚の様相によってことなるが、一般に基準となる刺激をS、弁別閾をΔSとするとき、ΔS/Sの比は一定であることが知られており、これはウェーバー比とよばれている。
さて、このように末梢器官で処理され、心的表象(頭の中の記号)に書きかえられた多様な情報は、感覚記憶とよばれる機構に短時間保持され、そこでどの情報をより高次の処理にかけるか選択される。選択され処理された情報は、次の短期記憶に貯蔵され、それ以外の情報はそこで消失する。このことは、情報はたんに感覚過程から知覚過程へと、一方通行にながれるものではなく、すでに稼働している知覚過程から感覚過程の情報が、逆向きの影響をうけることがあること、したがって両過程は、相互作用することが示唆される。 視覚の場合の感覚記憶をアイコニック・メモリーiconic memoryとよび、そこに保存される情報をアイコンiconとよぶ。この記憶容量はきわめて大きく、またその保持時間はスパーリングの実験から、およそ0.2秒前後といわれている。また、聴覚の場合の感覚記憶をエコイック・メモリーechoic memoryとよび、そこに保存される情報をエコーechoとよぶ。エコーはアイコンよりもかなり保持時間が長いことが知られている。
先の音楽会風景で、今、指揮者の向かい側にいるビオラ奏者のビオラに注意をむけるとしよう。視覚の場合、まず網膜において処理された輝度とスペクトルから、どのようにしてビオラという物体の認識が、可能になるかが問題になる。ビオラは奏者の動きによって、あるいは聴衆である自分のちょっとした姿勢の変化によって、その形態のさまざまな側面をみせる。それは奥行きのある特有の形をもった3次元の物体としてみえ、こい茶色のつやのある肌理(きめ:テクスチャー)をもつものとみえる。 今日の認知心理学では、まずこれを「面」の再構成の問題と考える。3次元の面は形、両眼視差、陰影、肌理、色、明るさ、動きなどの次元をもっているが、網膜で処理された段階の情報では、これらの次元に関する情報が一体になっており、次の処理段階でこれらの次元(視覚モジュールという)がある程度独立して並列処理され、それらが最終的に統合されて、ビオラの知覚をもたらすと考えられている。
第1に、古くはゲシュタルト心理学が明らかにした図と地の分化である。選択的注意がビオラにむけられるとき、それが図になって前景にでて、その周辺の人や楽器は背景となって後景にしりぞく。最近の研究によれば、図の処理には解像度の高い低速処理がおこなわれる視覚チャンネルがつかわれ、地の処理には解像度の低い、しかし高速処理が可能な視覚チャンネルがつかわれるという。もちろん図と地の処理は、図の領域を図として明確に分化させるばかりでなく、輪郭や奥行き(→ 奥行き知覚)の情報処理など、ほかの処理過程と密接にむすびついている。 第2は欠落情報の補完の問題である。網膜の乳頭(いわゆる盲点)には光に反応する視細胞がないので、外界刺激がそこを横切って像をむすぶ場合には、われわれは途中でとぎれた形を知覚するはずであるが、実際にはそうはならない。そこから、視覚には欠如した情報を視野のほかの情報から補完するような働きがあることが予想される。 補完には断続した線分を1本の連続した線分にする完結化、欠落した色の部分をうめあわせる充填(じゅうてん)化があることが知られている。今、円形の一部に正方形をのせるとき、そこにできる図形は、正方形全体と円の一部が切れた図形とが、ぴったり隣接してできた図形とはみえない。むしろ正方形の背後に円図形があるとみるほうが自然である。欠落した部分を補完してその「固有輪郭」を構成することは、パターン認知には欠かせない働きである。 ある刺激パターンがあるとき、そのパターンが外的対象の何に対応するか、いいかえれば、そのパターンの意味は何かを知る働きをパターン認知という。これは、脳内あるいはコンピューターの場合は、システム内に書きこまれている概念(ある対象についての内的表象、コンピューターの場合はその対象についての知識表現)と、入力情報とをマッチングさせる過程でもある。
その中でも、もっとも単純で以前から考えられてきたのは、頭の中にいくつもの鋳型があらかじめあって、それと入力情報とが照合されるという鋳型照合template matchingの考えである。実際、カエルの網膜には、虫の像(あるいはそれに似た形)がうつったときに応答する細胞があることが知られている。また、初期のコンピューターの図形認識は、この鋳型照合のモデルにもとづいておこなわれるものが多かった。 このモデルは、刺激パターンの大きさや傾きなどが鋳型とずれた場合にどうするかに問題をのこしている。すなわち、ことなる条件それぞれに対応する鋳型を考えるのは、鋳型の数が膨大にならざるをえない点で問題であり、また刺激パターンのほうをあらかじめ正規化するように前処理がほどこされるのだと考えるのも、その正規化の複雑な処理を考えなければならない点が問題である。 こうして、鋳型照合モデルはさまざまな難点をもつと当初から考えられてきたが、最近では鋳型を実空間の中で考えない、新しい鋳型照合モデルも提出されている。
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