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項目構成
次に考えられるのは、ある図形を他から区別してとらえるうえに有効な複数の示差的特徴(distinctive features=水平・垂直・斜めの線分、閉曲線、交点など)を抽出してリストをつくり、個々の示差的特徴の有無によって、その形を代表させる(内的表現とする)というモデルである。このような特徴分析的な認知モデルとしては、セルフリッジのアルファベット文字を識別するためのパンデモニアム・モデルが有名である。 たとえば文字Rの識別は、その刺激パターンがまず「イメージ・デーモン」の層において内的表象(内部表現)に変換され、次にその変換されたデータが「特徴検出デーモン」の層(これは28個の特徴のリストからなる)において、それぞれの特徴の有無に関する並列処理をうけ、その出力が「認知デーモン」の層にいれられる。この「認知デーモン」は特定のアルファベット文字をみはっていて、特徴検出デーモンからの出力に該当するものがあれば活性化する。これによっていくつか活性化する文字があるなかで、特徴検出デーモンからの入力を多数ふくむものが「決定デーモン」の層で判別されて、「R」という文字の最終認知に到達する。 この特徴検出に関しては、神経生理学的水準でもそれに類するものがあることが知られている。たとえば前出のヒューベルとウィーゼルは、ネコの視覚受容野の神経細胞には、単純細胞、複雑細胞、超複雑細胞の3種があって、それらは線分、傾き、角、境界などの刺激特性に選択的に反応することをみいだし、これらを特性検出器とよんでいる。また、視覚神経系の中には、両眼視差や刺激の動きとその方向などの特性を抽出する神経回路があることも発見されており、それらは奥行き知覚や運動知覚に関連があるといわれている。
これまでみてきたのは2次元のパターン認知であったが、実際の物体の知覚は、ほとんどが3次元的である。ここで、網膜の2次元的なデータからどのようにして3次元的な特徴を再構成するのか(認知するのか)という問題が生じる。しかもその物体の同定は、観察者の移動や対象物の動きによって観察点が変化すれば、3次元の物体の2次元的像の形状がいちじるしく変化するという制約のもとでおこなわれなければならない。 とくに工学的な画像処理などでの対象の同定過程では、観察点に左右されない形状の特性抽出が必要になってくる。マーによれば、どのような物体も、長さと太さがことなる何個かの円筒形によって、内的表象(内部表現)をえがけるという。ちなみに人間は、頭部、胴体、両手、両足の合計6個の円筒形で表示される。同じくビーダーマンは、弧や線分から構成されるジオンgeonという名の36種の立体(のちには24個に縮減)を考え、これによって物体の内部表現を考えようとしている。
以上のモデルは対象の特徴を分析し、いわばボトムアップ型に情報処理を考えるものであった。そこでは背景や文脈効果、知覚主体の動機付けなど、周辺情報や主体的要因が顧慮されていない。これに対してナイサーは「総合による分析モデル」を提唱する。それによれば、刺激の予備的分析、背景情報や文脈情報との対照、既存の知識などにもとづいて、まず対象についての仮説が構成される(この刺激パターンはAである、という仮説的同定判断がなされる)。次に、その仮説的対象から予想される特徴が、あたえられた刺激にふくまれているかどうかの分析がおこなわれる(これが対象Aであるなら、それはその示差的特徴fをもっているはずだ)。それが検出されれば同定は確定し、仮説とことなる特徴がみいだされれば仮説が修正されて同じ処理がくりかえされる。 総合と分析が循環する情報処理がおこなわれ、最終的な認知に到達する。このモデルは、刺激の情報処理が仮説からトップダウン型に展開されるという点で、これまでのモデルとはことなり、選択的注意や刺激の特徴探索が、その暫定的仮説に規定されることを示唆している。
ナイサーのこのモデルは、パターン認知における文脈効果や選択的注意の問題を喚起して、多数の研究を生みだした。一般に対象の認知は、それが文脈に適合している場合には、促進され、適合していない場合には、妨害される。また、対象があいまいであるときほど文脈効果はいちじるしいことも知られている。ここに文脈とは、ある事物がどのようなものと同時にあらわれることが多いか、という空間的文脈、ある事象は、どのような継起においてほかの事象とつながっているか、という時間的文脈にわかれ、それぞれは、後出の経験的知識(スキーマやスクリプトあるいはヒューリスティクス)に依存している(→ シェム)。
感覚器で処理された情報がアイコニック・メモリーにはいっているときは、まだ前注意の状態にある。そこには外界の多様な情報がはいっているはずであるが、われわれの認知はそのごく一部分にかぎられるところをみると、そこに情報の取捨選択がはたらき、それを支配しているのが選択的注意の過程であると考えられる。この選択的注意は、視覚的にはたらくばかりでなく、聴覚的にもはたらく。大勢の人の声の中から特定の人の声をききわけることができるのは、選択的聴取の働きによる。 選択的注意の働きはさまざまなメタファー(比喩)によって考えられてきた。そのひとつはスポットライト・メタファーである。これは一定の注意領域内にある情報の処理が促進され、しかもその注意領域が移動するという考えにもとづくもので、このスポットライトの大きさや移動の速さなどがしらべられている。 もうひとつはズームレンズ・メタファーである。これは注意領域の大きさは知覚事態によってかわるのではないか、との考えにたち、カメラのズームレンズは、ひろい視野をカバーするときは、その空間解像度は低下し、視野がせまく限定されるときには、その空間解像度はあがるところから、注意にもこのズームレンズの働きに相応する働きがあるのではないか、というものである。このメタファーは、いろいろな点でスポットライト・メタファーと対立するので、種々の実験によってどのような事態にどちらのメタファーがより適切かの条件がしらべられている。
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