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項目構成
クレイクとロックハートは、コード化の種類は、情報の処理の水準、ないしその深さという点で同じではなく、そのことが記憶の保持の違いになってあらわれてくると考えた。 たとえば、音韻的コード化や視覚的コード化は、刺激の属性をそのままやきつける方略であるから、「浅い」処理の水準に属し、これに対して意味的コード化は、刺激の属性ばかりでなく、その意味や文脈情報をふまえてなされるものであるから、より「深い」水準の処理に属すると考えられる。そこから彼らは、コード化における処理水準説を提唱したわけである。この仮説を支持する研究者は多く、またその裏づけとなるかにみえるデータも多数ある。しかしながら、その処理の水準ないしは「深さ」の違いを、記憶の保持の違い(テストの成績)から切りはなしてとらえることがむずかしいために、完全に確証された考えにはなっていない。 処理の「深さ」ばかりでなく、「精緻化」や「差異化」など、横の広がりにおける処理との関連も考えあわせる必要がある。さらに、コード化は、単一の次元のコード化ばかりでなく、言語的コード化とイメージ的コード化が、同時におこなわれるという二重コード化説も提唱されている。
コード化された情報が、現在進行中の認知活動に利用されるために、短時間の間だけ記憶に貯蔵される事実は、比較的はやくから知られ、短期記憶とよばれてきた。手帳に書いてある電話番号をみて、そのとおりにプッシュボタンをおして電話をかけることができたのちに、たちまちその番号をわすれてしまうというようなことが、われわれの周囲には無数にあるからである。もちろんこの短期記憶という用語は、時間的に持続した認知活動に、いつでも利用できる可能性をもった、長期記憶と対比されるものである。 クラツキーは、この短期記憶の機能は、たんに情報を短時間保持するだけではなく、コード化された情報に、種々の心的操作をくわえることを可能にするところにもあるとみて、これを「作業記憶」とよんだ。いわば大工の作業台のように、あるスペースのもとでさまざまな加工が可能になるという意味である。 たとえば、音韻的にコード化された情報をリハーサルするとか、視覚的にコード化されたイメージ情報を、頭の中で空間的に回転させるとか、あるいはコード化された情報を再コード化するなどの心的作業である。これまでの研究によれば、記憶保持の容量と作業スペースという作業記憶のもつ二重の機能は、一方がふえれば、他方がへるというトレードオフの関係にあることが知られている。
短期記憶の記憶容量は、記憶すべき項目を提示順に、どれだけただしく記憶できるかをしらべる、「直接記憶範囲課題」によって研究されてきた。音声的に提示される数字列を復唱するような課題である。ミラーはひとまとまりになった記憶の単位を「チャンク」とよび、直接記憶範囲、つまり短期記憶の容量は7 ± 2チャンクであると主張した。11桁(けた)の数字列をそのまま記憶するのはむずかしいが、電話番号のように、地域番号、局番、戸別番号にわければ、それはチャンクにして3であり、じゅうぶんに短期記憶容量内にあるから容易におぼえられるというわけである。初期には、この短期記憶に7個の収納庫があるという考えもなされたが、今日では、記憶容量は情報処理能力とむすびつけて考えられている。
短期記憶の存在は、前にのべた手帳をみて電話する例のように、記憶にもとづいてある行為がなされたのちに、その記憶が、短時間後にうしなわれる事実によって、確認されてきた。そしてその忘却をふせぐうえで、リハーサル(頭の中での復唱)が利用されることも、われわれの日常生活から明らかである。 短期記憶の保持時間を知るためには、このリハーサルをおこなわせないようにする必要がでてくる。この妨害手続きとして、ブラウンとピーターソン夫妻はほぼ同じころに、独立して次のような手続きを考えた。すなわち、アルファベット3文字つづりを提示して記憶させ、その直後から、被験者にはメトロノームにあわせて3桁の数字(たとえば785)から3ずつ減じた数字を順々にいわせ、ある時間経過したのちに合図をあたえて刺激の文字つづりをいわせる。これは、短期記憶の保持時間を推定する典型的な実験手続きとして、ブラウン-ピーターソン法とよばれている。 その結果、文字つづりの短期記憶は、時間経過とともにうすれ、リハーサルを妨害されれば、およそ18秒後には再生できなくなることがわかった。この実験結果から、短期記憶は、一時的な記憶の貯蔵庫であり、その保持時間は、最大18秒で、そこでリハーサルなどの処理がくわえられなければ、その情報はうしなわれると考えられた。しかしその後の研究から、保持時間そのものは、提示される刺激の情報量や、利用できる処理容量と関連していることも、明らかにされている。
上記の短期記憶研究は、リハーサルやイメージの空間的回転などの心的操作が、そこに関与してくることを示唆し、それがクレイクらの作業記憶の考えをもたらすことになった。これをうけてバッドリーは、作業記憶の機能をより明確にしめした作業記憶モデルを提唱している。これは、中央制御部に、音声ループ(聴覚バッファー)部と視・空間スクラッチ・パッド部とよばれる構成要素をくわえた、3つの部門からなりたっている。中央制御部は、限度のある情報処理容量を2つの下位部門にそれぞれに配分し、その働きを制御する注意システムである。音声ループ部は、聴覚的情報の保持のための聴覚的バッファー(漏出防止装置)で、そこでリハーサルがおこなわれる。他方の視・空間スクラッチ・パッド部は、視覚的、空間的情報を短期的に保持する視覚的バッファーで、そこでイメージを形成したり、それを回転したり、走査したり、さまざまな心的操作が可能になる。このモデルは、中央制御部の機能など、まだ解明されていない点もあるが、作業記憶の機能を考えるうえに有効なモデルとして引用されることが多い。
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