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釉(ゆう:うわぐすり)ともいう。焼き物の表面をおおうガラス状の被膜。その基本的な原料は岩石と灰で、1000°C以上の高温で焼成されることにより溶融してガラス状の膜となり、器の表面などに付着する。施釉の効果は、吸水性のある陶器素地(きじ)が液体や気体を吸収しないようにする、もろい器体の強度を高める、器の表面をなめらかにして汚れを落ちやすくする、美的装飾など、さまざまある。 釉薬は、西アジアでガラス製造技術を応用して誕生したとされ、東へはシルクロードやインド洋経由でアジア諸国につたえられ、西へは地中海を経由してヨーロッパに伝播(でんぱ)した。このように東西に広まった施釉技術は、各地の風土によって多彩に変化し、独自の発展をとげた。 一方、ユーラシア大陸の東部に位置する中国でも古くから緑釉、褐釉の陶器が生産されたとされるが、その起源は明らかでない。中国では高温での焼成技術が早くから発達して硬質な焼き物がつくられ、独自の施釉がおこなわれた。原料にふくまれる金属成分で1000°C以上の高温に耐えるものはかぎられるため、鉄や銅を呈色剤とした単色釉の陶器や、青花(せいか)とよばれる磁器染付などがつくられた。この施釉技術は朝鮮半島をへて日本にもたらされる。
日本における自然釉の出現は5世紀代といわれ、大阪府の陶邑(→ 陶邑古窯跡群)や、名古屋市東山地区などから、表面にガラス状物質が付着した須恵器が出土している。須恵器は当時、山の斜面を縦にほった窖窯(あながま)で高温焼成されたもので、燃料となる草木中にふくまれるケイ酸塩化合物や金属などの成分がとけて自然釉の現象をもたらしたと考えられる。 燃料となる草木は、水分のほか、有機質の脂肪酸類や繊維類、無機質成分などからなり、ほかに、成長過程で根から吸収した土中の有機質成分をもふくむ。そのうち、ケイ酸塩、アルカリ金属類のカリウムやアルカリ土類金属のカルシウム、鉄、ニッケルといった金属成分は植物の体内で分解されずに蓄積される。これらが釉の主成分であり、焼成時の熱化学反応によってガラス状物質に変化するのである。なお、自然釉が淡黄色または淡青色を呈するのは、土中に多くふくまれている鉄成分のためである。
自然釉の発見により、灰を器面にふりかけて焼成する技術へ発展した。その古い例として、7世紀後半に猿投山(さなげやま)周辺(現、名古屋市の東方)でつくられた灰釉陶器(かいゆうとうき)がある(→ 猿投窯)。これは「原始灰釉」ともよばれており、釉の原料として灰をくわえる「灰釉」の調合、施釉技術が生まれるのはさらに後のことである。
灰釉陶器の普及と同じころ、中国、朝鮮地方から色あざやかな緑釉陶器の製造技術が日本に伝播する。金属成分をふくむ岩石を呈色剤として原料にくわえた最初の釉薬である緑釉は、銅を呈色剤とした鉛ガラス系の釉で、1000°Cをこえない低温で焼かれた。飛鳥地方(現、奈良県明日香村を中心とした一帯)の7世紀代の遺跡から出土したものが古い例である。これらの緑釉陶器は中国の唐からの伝来品を模倣したもので、おもに祭祀器(さいしき)としてもちいられた。緑・褐・白の3色でいろどられた唐三彩を模倣した「奈良三彩」といわれる陶器もつくられた。緑色の釉は銅を呈色剤に、褐色の釉は鉄成分を多くふくんだ赤土などを呈色剤にしており、基礎釉となる白とかけあわせて三彩としている。このように、中国から伝来した器を模倣することによって、釉薬の開発、施釉や装飾の技術がめざましく発展することになった。
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