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項目構成
アルカンalkaneは、メタン系炭化水素、パラフィン系炭化水素ともよばれる脂肪族の鎖状飽和炭化水素であるが、この族のもとになるもっとも簡単な化合物がメタンmethane CH4である。この族の化合物には、さらにエタンethane C2H6、プロパンpropane C3H8、ブタンbutane C4H10などがふくまれるが、この族の化合物はすべて一般式CnH2n+2であらわされる。5つ以上の炭素をふくむ化合物の名称は、ふくまれている炭素原子の数をしめすギリシャ語の数詞の語尾に接尾辞-aneをつけてペンタンpentane、ヘキサンhexane、ヘプタンheptane、オクタンoctaneなどとよぶ。
しかし、ブタン、ペンタンといった名称だけではその分子の構造をあらわせない。たとえば、C4H10の分子式をもった化合物には、2つのことなる構造式が書ける。同じ分子式をもっているがたがいに構造式がことなる化合物を異性体という。ブタンの場合には、2つの異性体があり、それぞれ一般にはノルマルブタン(n–ブタンと表記する)、イソブタンとよばれる。尿素とシアン酸アンモニウムもCH4N2Oの分子式をもつ構造異性体である。
C8H18であらわされる化合物には18個の異性体があり、C20H42であらわされる化合物には、理論的には36万6319個の異性体が存在する。新しい化合物が発見されると非体系的な名称がつかわれることが多いが、すべての言語に共通する体系的な名称をつけるようにすることが必要である。国際純正・応用化学連合(IUPAC)はこのような命名体系について合意し、新しい発見にあわせて改訂をおこなってきた。
IUPACの命名体系では、側鎖の位置をしめす番号の合計が最小になるように、もっとも長い炭素鎖の炭素原子に端から順に番号をつける。図4の3つの側鎖は、2、2、4の位置の炭素原子と結合している。もし炭素鎖にこれと逆向きの番号をつけたなら、側鎖は2、4、4の位置の炭素原子と結合することになる。したがって、この場合の正しい名称は、側鎖の位置をしめす番号の合計が最小になる2,2,4–トリメチルペンタンとなる。
炭化水素の族のひとつであるシクロパラフィンは、環状の構造をもつ。もっとも小さな環は3つの炭素原子で構成される。シクロパラフィンは、一般式CnH2nであらわされ、IUPAC名はアルカンの場合と同様であるが、シクロの接頭辞をつける。
アルケンalkeneは、エチレン系炭化水素、オレフィン系炭化水素ともよばれる脂肪族の鎖状不飽和炭化水素であり、そのIUPAC名の語尾には、アルカンの-aneにかえてアルケンの-eneをつける。この族はシクロパラフィン(シクロアルカン(→ 脂環式炭化水素)とよばれることもある)の異性体であり、やはりCnH2nの一般式であらわされる。もっとも簡単なアルケンであるエチレンethane C2H4のIUPAC名はエテンetheneである。この族の炭化水素の特徴は、分子内に炭素原子間の二重結合を1つ以上もつことである。たとえば、プロペンとシクロプロパン、あるいは、3, 4–ジメチル–2–ヘキセンと1, 3–ジメチルシクロヘキサンはたがいに異性体である。二重結合の位置は、その名称中の「2–ヘキセン」の部分でしめされている。二重結合は、たとえば松脂(まつやに)の一成分であるa–ピネンやビタミンAといった環式化合物の場合にもおこりうる。
環状有機化合物の構造式はふつう簡略化して表記する。これらの構造式における頂点は炭素原子をあらわしている。それぞれの炭素原子には、他の原子(炭素であることが多い)との結合の数が2個であるか3個であるか4個であるかにしたがって、2個、1個あるいは0個の水素原子が結合している。たとえば、a–ピネンの構造式を、すべての原子をいれて表記すると図8のようになる。
アルキンalkyneは脂肪族鎖状炭化水素の第3の主要な族であり、アセチレン系炭化水素ともよばれる。そのIUPAC名の語尾には、アルカンの-ane、アルケンの-eneにかえて-yneをつける。この族の化合物は、一般式CnH2n-2であらわされ、ふくまれる水素原子の数は、同じ炭素鎖をもつアルカンやアルケンよりも少ない。もっとも簡単なアルキンであるアセチレンacetylene HC:CHのIUPAC名はエチンethyneである。
アルカンの水素原子は、塩素、酸素、窒素など他の原子で置換することができるが、このとき、それぞれの原子にゆるされる化学結合の数は厳密にまもられる。たとえば、塩素は他の原子と1つ、酸素は他の原子と2つ、窒素は他の原子と3つの結合を形成する。塩化エチル中の塩素原子、エタノール(エチルアルコール)中のOH基、エチルアミン中のNH2基のように、同じグループに属する化合物がしめす共通の反応性の原因となる原子団を官能基という。官能基によって化合物の化学的性質の多くがきまる。
炭素原子の結合が四面体構造をとるために、空間的な位置関係によってしか説明できないような有機化合物のいくつかの性質がでてくる。中心の炭素原子にそれぞれことなる4つの基が結合すると、空間的には2つのことなる分子が構成される。たとえば、乳酸(図9参照)には2つの分子の形態が存在する。この現象を光学異性とよぶ。光学異性体は、たがいに重ねあわせることができない鏡像関係にある。乳酸の1つの分子構造を鏡にうつすと、一方のCH3基の位置はもう一方のCH3基の位置と、また一方のOH基の位置はもう一方のOH基の位置と重なるようになる。この関係はちょうど、右利き用のグローブを鏡にうつすと左利き用のグローブになるようなものである。
光学異性体どうしはまったく同じ化学的性質と、ただ1つの点をのぞいてはまったく同じ物理的性質をもっている。それぞれの異性体が直線偏光の偏光面を回転させる方向がことなるだけである(→ 光学)。右旋性の乳酸(D–乳酸)は直線偏光の偏光面を右に回転させ、左旋性の乳酸(L–乳酸)は、偏光面を左に回転させる。両者の等量混合物であるラセミ乳酸(酸乳にふくまれる)は、右旋性と左旋性とがうちけしあうために偏光面を回転させない。
炭素化合物中の二重結合にことなる基が結合している場合には、この二重結合によって幾何異性が生じる。これは光学異性との関連性はない。二重結合の部分では分子は回転できない。そのため、たとえば2–ヘプテン分子の場合、空間的に配列のことなる2種類の分子が存在する。同一の基、たとえば2–ヘプテンでは水素原子が、二重結合している炭素原子の反対側にあるときの異性をトランスとよび、水素原子が同じ側にあるときの異性をシスとよぶ。
化合物中に二重結合あるいは三重結合がある場合、この化合物は不飽和であるという。不飽和化合物はさまざまな試薬と付加反応をおこし、その二重結合あるいは三重結合は単結合にかわることができる。
付加反応によって不飽和化合物は飽和化合物になる。一般的に飽和化合物は不飽和化合物より安定であるが、同一分子内に単結合をはさんで二重結合が2つあると安定性は大きくなる。このような構造を共役二重結合とよぶ。天然ゴムの主成分であるイソプレンやビタミンAはこのような構造をもっている。
6つの炭素原子が共役二重結合によって環状に結合すると、もはや不飽和化合物とはいえなくなるほどその安定性が増大する。ベンゼンC6H6や芳香族炭化水素とよばれる環式化合物では、イソプレンやアルカン、アルケンとは反応するような試薬との付加反応がおこらない。
このように、芳香族化合物はひじょうに特異な性質をもっており、ベンゼンの特徴をもっともよくあらわす記号は、図13の左側と中央のような6角形ではなく、むしろいちばん右側にしめすような6角形となる。6角形の内側の円は、3つの共役二重結合を形成している6つの電子が、6角形を構成する個々の炭素原子に属するのではなく、6角形全体に属していることをあらわしている。その他の芳香族化合物の例を図14にあげる。
分子の環状構造に炭素以外の原子をふくむものもある。硫黄S、窒素N、酸素Oをふくむものが多いが、このほかにも、たとえばホウ素B、リンP、セレンSeなどをふくむものも知られている。このような化合物を複素環式化合物という。
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