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サル目(霊長目)ヒト科ヒト種の個体、ひいては種全体をさす総称。また、進化の過程におけるヒトの先祖(→ 人類の進化)をさすこともある。現在生きている人々は、みなひとつの種であるとされている。
分類上、動物の1種(動物界)で、背骨(脊索動物門)と分節した脊柱(脊椎動物亜門)をもち、子に乳をあたえるもの(哺乳綱)と定義されている。胎盤の助けによって子をみごもり(獣亜綱)、手足の先端が5本の指にわかれている。また鎖骨をもち、胸部には1対の乳腺がある(サル目)。頭部の前面に立体的な視野をそなえた目と、相対的に大きな脳をもっている(類人猿)。
ゴリラ、チンパンジー、オランウータンなど、近縁の霊長類との骨格構造の違いは、おもにヒトがひじょうにはやい時期から、完全な直立姿勢をとり、2本足で大またにあるいていた(→ 直立二足歩行)ことからきている。独特のS字形をした脊柱(せきちゅう:いわゆる背骨)が、体をささえる足の真上に位置し、ヒトの重心と重なっているので、バランスのとれた直立姿勢をとることができる。二足歩行によるそのほかの構造的な変化としては、ひざの接合部がかみあっていること、かかとの骨が発達していること、足の指が長く大きなつま先がそろっていることなどがあげられる。程度の違いはあるものの、ほかの類人猿にも二足歩行がみられる。ただしどの類人猿も、脊柱がまっすぐか彎曲(わんきょく)しているだけで、ひざはまがっており、足は物をつかむのに適しているが、移動の際には手をつかって体重の一部をささえる必要がある。 完全な二足歩行によって自由になった手が、物をつかんだり、あやつったりするためのひじょうに感覚のするどい道具となった。これによってもたらされた構造上の重要な変化は、親指が長くなったことである。親指を自由にまわすことができ、ほかの4本の指と完全に向かい合わせになる。さらに、それらのことから、言葉をはなすための生理的機能も二次的に確立された。直立することによって声帯の位置がかわり、息を調節できるようになった。また、手をつかうことによって、脳の一部(ブローカの言語中枢)が発達、分化し、それにともなって、くちびると舌を微妙に調節する必要条件がととのった。 大きな脳(平均1400cc)は、道具をつくりはじめた初期の人類より約2倍の大きさになった。脳の巨大化は、幼形成熟(ネオテニー)とよばれる過程によってわずか200万年の間になしとげられた。幼形成熟とは、さまざまな形質が未熟な状態のまま長い間たもたれることである。 ヒトの発達過程では、脳と頭蓋(ずがい)の未熟な時期が長くなり、性的成熟にも長い時間がかかるようになった。傾斜した額と発達した顎(あご)をもつ初期のヒトのおとなの頭蓋とことなり、現生のヒトの頭蓋は、生物学的にあまり重要でない変化以外に、体のほかの部分にくらべて大きな脳のサイズ、高くまるくなった円蓋、まっすぐで平面的な顔、小さくなった顎など、成熟しても、未熟なチンパンジーの頭蓋と同じような特徴をもちつづけている。 頭が大きくなると、それにあわせて産道もひろくなければならない。そのため、メスの骨盤は成長するにつれて幅がひろくなり(代わりに、うごきまわるときの速度はおそくなったが)、子供は未熟な状態で生まれるようになった。 チンパンジーはおとなの脳の能力に対して65%の成熟度で生まれるが、よりヒトに近く、直立していた300万年前のアウストラロピテクスは50%の成熟度、ヒトの新生児はわずか25%の成熟度で生まれてくる。そのため助けの必要な時期が長くなる。おとなの助けをかりて刺激をうけながら長い時間をすごし、脳を成長させ、多くの神経経路が組織されていく。生まれたばかりの時期にこのような外部との密接なつながりがないと、新しい脳は発達せず、未熟なままにおわってしまう。
以上のような生理的な機能をそなえるようになったため、ヒトはほかの霊長類よりも柔軟な行動と、幅ひろい能力を発達させた。その行動には無類の多彩さがみられる。ヒトの脳は大きく複雑で、ゆっくりと成長する。生まれてから12歳ぐらいの間に、またそれ以降も、神経のつながりを追加してゆくので、学習によって獲得した行動は、生まれつきの型にはまった反応を大きく修正したものになる。新しい環境にぶつかったとき必要なのは、ゆっくりした遺伝的選択よりも、すばやい適応なのだ。こうしてヒトは、新しい種に分化しないまま、さまざまな土地や極端な条件で生きのびることが可能になった。新生児はたくさんの能力を秘めているとはいえ、先天的な形質としてもっているものは比較的少ない。そのため、それぞれの幼児から、ヒトとしての生物的潜在能力をひきだしてやらなければならない。
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