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インド固有の宗教。開祖をもたず、地理的にも歴史的にも多様な信仰と習俗を総称する言葉である。インドの大部分の人々と各地にわたったインド人移民たちが信仰している。インド人移民は東アフリカ、南アフリカ、東南アジア、中南米、イギリスなどに多く、固有の文化への帰属意識の強い印僑とよばれる集団をつくっている。 ヒンドゥー教は、7億を上回る信者数もさることながら、ほかの多くの宗教に深い影響をおよぼした点で、世界宗教のひとつである。ヒンドゥー教の側もほかの宗教から多くの影響をうけ、混交宗教の典型となっている。インドの風土に根ざした宗教であるため、人間生活のあらゆる側面におよぶ社会的慣習、習俗にしみこんだもろもろの信仰が、高度に発達した哲学にまけずおとらず意義深いものとなっている。
ヒンドゥー教徒であることは、思想よりは行動で判別される。それは行動面でのほうが、信仰内容についてよりも共通性、統一性を指摘しやすいからである。 次のような習慣は、ほとんどすべてのヒンドゥー教徒にまもられている。バラモンと牛の尊崇、肉とくに牛肉を食べないこと、ジャーティとよばれる社会的実体をもったカースト集団の中でのみ婚姻することなど。ほとんどのヒンドゥー教徒は明け方に、リグ・ベーダにある太陽神をたたえるガーヤトリー賛歌をとなえるが、ほかにどのような賛歌をもちいるかは一致していない。また彼らはシバ、ビシュヌ、あるいはこれら両神の妃である女神たちを信仰するが、同時に各村や家に固有のかぞえきれないほどの小さな神々を信仰している。 ヒンドゥー教徒たちは、明らかに矛盾することを信じたり行動したりすることがあるが、それらはその宗教によって形式と意味をあたえられ、秩序だてられたものなのである。明文化した教義や絶対的権威をもった教団のさだめる序列などはないが、宗教と不可分なこみいった社会的な階層制度が、個人を全体の中に位置づけている。
ヒンドゥー教徒にとって規範の根拠となる究極の権威は、ベーダである。ベーダは、さまざまな文献をふくむ文献群の総称で、前13~前10世紀に成立したものである。シュルティすなわち天啓聖典とよばれ、神から直接さずかったものだから一字一句もかえてはならないとされる権威をもっている。 しかし実際は、ベーダの内容はヒンドゥー教徒に正確に理解され行動の指針にされているわけではない。ヒンドゥー教の指針となる実質的な聖典はスムリティ、すなわち「いにしえの聖仙の教えをつたえたもの」とよばれる一連の文献である。これらについては新解釈をつけくわえていくこともゆるされている。「マハーバーラタ」、「ラーマーヤナ」の2大叙事詩、18種の大型プラーナを中心とした多くのプラーナ文献、そして「マヌ法典」を代表とする多くの法典文献がこれにあたる。
前節にあげたような多様で大型の文献の中に、ヒンドゥー教の複雑な世界観がちりばめられている。
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