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軌道(天文)

軌道 きどう Orbit
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

宇宙空間での天体のとおる道筋。ほかの天体からの引力あるいは斥力によってこの通り道はまげられてしまう。一般的な軌道は、ある天体が引力の強いほかの天体の周りをまわっているときのものである。

太陽系の中で、地球の周りをまわり、地球などの惑星太陽の周りをまわるのは、引力のためである。いっぽう、原子の中で電子原子核の周りをまわるのは、電気力のためである。天文学では、引力によって生じる軌道を天体力学という分野であつかう。

軌道は、中心の天体を1つの焦点とする、楕円放物線双曲線といった円錐曲線の形をとる。地球を中心にして衛星、つまり月が軌道をえがいてまわるとき、もっとも遠い点を遠地点、もっとも近い点を近地点という。地表から近地点あるいは遠地点までの高度が、地球中心から近地点あるいは遠地点までの距離の代わりにもちいられることが多い。太陽の周りをまわる軌道では近日点・遠日点、星の周りならば近星点・遠星点、中心の天体が明記されないときには軌道近点・軌道遠点という。軌道近点と軌道遠点をむすぶ直線は近点軸という。

II

運動の法則

17世紀初め、ドイツの天文学者ケプラーは、太陽の周りをまわる惑星の運動について3つの法則を発見した(ケプラーの法則)。第1法則は、太陽の周りをまわる惑星の軌道は楕円である。第2法則は、惑星と太陽の中心をむすぶ直線がある時間内に軌道上でえがく面積はつねにひとしい。つまり惑星は太陽の近くにあるときははやくうごき、遠くにあるときはゆっくりうごく。第3法則は、惑星が太陽の周りを1周するのにかかる周期(年)の2乗は、天文単位で測定された太陽中心からその惑星までの平均距離の3乗にひとしい、というものである。

ケプラーの3つの法則は、のちにイギリスのニュートンによって、ニュートンの運動の法則(力学)と引力の逆2乗則の結論として物理学的に説明された。ケプラーの第2法則とは角運動量の保存についてのべたものである。さらに、ケプラーの第3法則は次のようにいうことができる。公転周期(年)の2乗と全質量(太陽質量であらわす)との積は、平均距離(天文単位)の3乗にひとしい。したがって、衛星軌道の大きさと周期を測定すると、惑星の質量が第3法則によって計算できる。

III

軌道要素

軌道は6つの軌道要素で記述される。1つめは大きさ、2つめは離角である。軌道の大きさは軌道近点距離(SP)で、離角は離心率(e)であたえられる。図の楕円の場合、CS/CP の比が離心率で、Sは焦点、Cは楕円の中心をしめす。楕円軌道の場合、eは0よりも大きいが1よりも小さい。円軌道だとeは0、放物線軌道だとeは1となる。双曲線軌道はeが1よりも大きな軌道で、中心の天体に一度近づいたあと、ひらいた軌道でとおざかり二度ともどってこない。

次の3つの軌道要素は軌道の向きと関係している。しかし、これを論じるためには、いくつかのパラメーターを定義する必要がある。太陽の周りをまわる軌道にある天体の基準面は黄道面(黄道)、つまり地球の軌道面である。春分点(g)は、地球の軌道と天の赤道面(赤道)とがまじわる点で、太陽が北向き通過する。昇交点(N)は天体の軌道と黄道面がまじわる点である(座標系)。

軌道の向きについて3つの軌道要素は、傾斜角(i)、昇交点の黄経(Ω)、近日点引き数(ω)である。傾斜角は黄道面と軌道面とがなす角度。昇交点の黄経は、黄道面での春分点と昇交点の間の角度である。近日点引き数は、軌道中心(C)と軌道近点(P)を結ぶ線と昇交点との軌道面における角度のずれをしめす。6番目の軌道要素は、天体が軌道近点にいるときの時刻である。

軌道の大きさは長半径(AC、CP、あるいはa)によっても記述される。長半径は長軸(AP)の半分、すなわち軌道近点(P)と軌道遠点(A)の距離の半分である。長半径は軌道遠点距離(AP)より短く、長半径と離心率の積にひとしい長さ(CS)だけ軌道近点距離(SP)より長い。

CS = e(AC) = e(CP) = ea

IV

摂動

軌道は、2つの球状天体の間ではたらく力のほかに別な力がはたらくと、摂動をうける。ケプラーの法則が正確であるのは摂動のない軌道の場合だけである。惑星間ではたらく引力のためにその楕円軌道は時間とともに変化する。たとえば、太陽は月の軌道を数千キロメートルも乱している。大気の引力によって人工衛星の軌道はちぢみ、地球が扁平な形をしているために人工衛星の交点と近地点の方向が変化する。水星の近日点でみられる摂動はアインシュタイン相対性理論で説明できる。

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