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天然ゴムは11世紀のマヤ文明のころから、中南米で使用されていたと考えられている。1492年、コロンブスのアメリカ大陸「発見」当時、天然ゴムは先住民の間で、スポーツ用のゴム球や、衣服の防水、履物、容器などに利用されていた。アメリカ大陸を征服したスペイン人は、これらのゴム製品を模倣しようとしたが成功せず、およそ2世紀の間、ゴムはヨーロッパ人にとってはたんなる珍重品であり、学術的な興味の対象にしかすぎなかった。 1731年、南アメリカを調査したフランスの地理学者ド・ラ・コンダミーヌは、アメリカ先住民につたわるゴムの原始的な製法を、学術報告書としてヨーロッパにつたえた。70年にはイギリスの化学者プリーストリーが、ゴムで鉛筆の文字をこすると文字がきえることを発見した。ゴムの英名rubber(こするもの)は、このときの発見に由来している。このころ、松脂(まつやに)からえられるテレビン油が、ゴムの溶剤につかわれるようになった。91年にはイギリスのS.ピールが、ゴム引きの防水布を開発し、ゴム製品ではじめての特許をとった。1823年、イギリスの化学者C.マッキントッシュは、ゴムの溶剤にナフサを使用して、すぐれた品質のゴム引き布を開発した。
ゴムの樹液(ラテックス)を出す植物は400種以上もあるが、東南アジアをはじめとして世界じゅうで栽培されているゴムノキのほとんどは、トウダイグサ科に属するパラゴムノキである。パラゴムノキはアマゾン地方が原産であり、採取されたゴムがアマゾン川の港であるパラ(現、べレン)から輸出されたのでこの名前がつけられている。 19世紀、ゴムの供給地は、アマゾン川流域にかぎられ、生産はブラジルが独占していた。ゴムは熱帯雨林に点在する野生のゴムノキから採取されていたため、ひじょうに労力を要し、ゴムの需要が増加すると、ゴム価格の暴騰と供給量の不足をまねいた。当時の先進工業国イギリスはゴム産業の合理化をはかり、1876年に探検家H.ウィッカムは、禁輸品だったゴムの種子をひそかにブラジルからもちだした。ゴムの種子はロンドンのキュー・ガーデン(王立植物園)で発芽し、77年にセイロン島(現、スリランカ)の植物園に移植された。ゴムノキはさらにマレー半島などにうつされ、東南アジアの各地でプランテーションによるゴム生産がはじまり、1913年には東南アジアでの生産量が南アメリカにおける生産量をこえるまでになった。 一方、南アメリカ各地でもゴム生産のプランテーション化がこころみられたが、枯れ葉病のため失敗におわった。ゴムノキの生産適地は、赤道周辺の地域の中でも年間降雨量が2000~4000mmに達する熱帯雨林地帯といわれていたが、現在では北緯30度付近でも栽培が可能になっている。 天然ゴムの生産量は2003年では797万tで、もっとも多いタイ、インドネシアをあわせると世界じゅうの6割を、また、それにマレーシアや中国南部、南アジア(インド、スリランカ)などをくわえると世界の9割以上を生産している。一方、南アメリカでの生産量はきわめて少なくなっている。
アメリカでは1830年代からゴム製品が普及しはじめたが、そのころのゴムは気温がさがると硬化し、気温があがるとべとついて異臭をはなつ欠点があり、製品の寿命も短いものだった。しかし34年、ドイツの化学者F.リューダースドルフとアメリカの化学者N.ヘイワードは、硫黄をくわえることでゴムの性質がいちじるしく向上することを発見した。この現象は39年、アメリカの発明家C.グッドイヤーによっても発見された。それ以後、硫黄を添加した加硫ゴムによって、自動車のタイヤや、列車のバンパーなどにもゴムの用途が広まった。
プランテーションによる大量生産がはじまるまで、ゴムは貴重品としてあつかわれ、使用後の再利用も、ゴム工業の初期から研究されていた。1877年ごろ、アメリカのC.ミッチェルは、使用後のゴムを加熱した硫酸で分解したのち、原料として再利用する方法を開発した。1905年ごろには、アメリカの化学者A.H.マークスが、使用したゴムを塩基(アルカリ)で処理する方法を開発し、より劣化の少ない再生ゴムの生産に成功した。
1905年ごろ、マークスの設立したゴム研究所につとめる化学者G.オーエンスレーガーは、アニリンなどの化学物質が加硫を促進することを発見した。加硫促進剤の使用によって、硫黄の添加量や加硫時間は大幅に低減し、同時にゴム製品の品質も向上した。同じころ、アメリカのW.グッドリッチは、炭素粉末(カーボンブラック)をゴムに添加して強度を高める方法を発明した。カーボンブラックは12年ごろから自動車タイヤに使用されはじめ、タイヤの耐久度はそれまでの10倍ほど高くなった。酸化防止剤など各種の添加剤も開発され、ゴムの耐用年数も延長された。
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