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アングロ・サクソン族によって古英語がもたらされた5世紀に生まれ、現在までイングランドで発展してきた文学。アイルランドやスコットランド、ウェールズ出身の作家の作品でも、イングランドの生活および文芸と密接にむすびついている場合はイングランド文学の一部とみなされる。アイルランド、スコットランド、ウェールズの他の作家たちについては、アイルランド文学、スコットランド文学、ウェールズ文学を参照。また、他の英語圏の諸国の文学については、アメリカ文学、オーストラリア文学、カナダ文学を参照。
450年ごろから、ノルマン人がイングランドに征服王朝を樹立した1066年までの時代である。ローマ人の撤退後、5世紀にイングランドを征服したゲルマン民族がアングロ・サクソン語をもちこんだ。これが、現代英語の基礎となる古英語である(→ 英語)。また、この民族はさらに特異な詩的伝統をももたらした。
古英語の詩の多くはおそらく、吟唱詩人がハープを伴奏として朗詠するものとしてつくられたと考えられる。その主題となるのは、現世のむなしさと、運命の力を前にした人間の無力さである。これらの詩の多くに共通する形式上の特徴のひとつに、頭韻の使用がある。 古英語の詩を代表する最大の作品が、8世紀の叙事詩「ベーオウルフ」である。スカンディナビアのあらあらしい自然を背景に、怪物や竜を退治する英雄ベーオウルフの壮大な物語は、きわめてゲルマン的な骨格をもっている。しかし、「ベーオウルフ」の最大の特徴は、ゲルマンの精神風土がキリスト教的な理念によって修正されている点である。たとえば、人間の運命を自在にあやつる決定的な力に対する畏怖(いふ)は弱まり、かわりに「神への信頼」というキリスト教的宗教観が注入された。 このように、異教の文化にキリスト教の価値観がはいりこんでいくようすは、他の古英語文学にも共通してみられる。この点については、ほとんどの作品が修道院の写字生(写字を職業とする人)によってつたえられたこととも関係があろう。ゲルマン的な文化・習俗をキリスト教的な価値観でぬりかえたのちは、多くの場合、実際の聖職者が文学作品の作者になった。 宗教的な物語や伝説を「ベーオウルフ」のようなかたちの詩に最初にまとめたのは、7世紀後半のキャドモンである。「イギリス史の父」ともよばれるベーダによれば、「キャドモンは神から歌の才をさずかった」。8世紀のアングロ・サクソン人の詩人キネウルフとその一派は、より華麗な文体でキャドモンと同様の題材をあつかい、情熱的な「十字架の夢」などの作品をのこしている。 古英語の詩人たちは、とくにキリスト教の教義をふくまない、比較的短い抒情(じょじょう)詩ものこしている。あらあらしい自然と人間のかなしい定めをアングロ・サクソン的な感覚でうたうそれらの作品の中でも、「さすらいびと」と「海ゆくひと」はとりわけうつくしい。
古英語による散文はだいたいが宗教的な作品である。9世紀、アルフレッド大王は、学者をまねいてラテン語文献の英訳をすすめた。この事業によって、ベーダがラテン語であらわした731年までの「イギリス教会史」や、ボエティウスの「哲学の慰め」などの重要な作品が古英語に翻訳された。ベーダの「教会史」は、7世紀末から8世紀にかけての北部イングランドの修道院における研究成果の頂点といえる著作である。また、プラトン哲学に根ざしたボエティウスの作品は、キリスト教思想にもなじみやすく、イングランド文学に大きな影響をあたえた。
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