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    石炭 (せきたん、coal)とは、 古生代 の 植物 が完全に 腐敗 分解 する前に地中に埋もれ、そこで長い期間 地熱 や 地圧 を受けて 変質 (石炭化)したことにより生成した 物質 の総称。見方を変えれば植物 化石 でもある。

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石炭

石炭 せきたん Coal
百科事典項目
項目構成
1

石炭化学工業

石炭をエネルギー源としてだけ利用するのではなく、石炭を出発原料とする各種の化学原料や化学製品をつくる産業分野を石炭化学工業という。石炭化学工業を大きくわけると、石炭を乾留してできる石炭ガス、コークス、コールタールを原料とする分野と、石炭をガス化してこれを原料とする分野がある。乾留による石炭ガスからは窒素肥料合成樹脂の原料となるアンモニアやメタノールが生成され、カーバイドからは塩化ビニル酢酸メラニンなどの原料となるアセチレンや石灰窒素(カルシウムシアナミド)が、コールタールからは染料や医薬、合成樹脂、炭素材の原料となるベンゼントルエンキシレンナフタレンフェノールなどが生成される。

また石炭のガス化からは、やはり窒素肥料や合成樹脂、アルコール類の原料となるアンモニアやメタノール、さまざまな合成液体が生成され、石炭の水素化分解による液化でも同じく多数の工業原料が生成される。さらに酸化分解からは芳香族カルボン酸(可塑剤などの原料:カルボン酸)やニトロフミン酸(泥水処理剤や肥料の原料)が、溶剤抽出法からはコークス用バインダーや膨潤炭が、燃焼によるガス化からはセメント原料やゲルマニウムを抽出できる灰が生成される。

2

石炭化学工業の変遷

石炭化学工業は、歴史的に近代有機化学工業の基盤をつくり、これにつづく石油化学工業の発達に道を開く存在であったことは確かだが、第2次世界大戦後の石油化学工業の躍進によって1960年代にはその地位をうばわれてしまった。その後、2度の石油危機をへて石炭化学工業の見直しがおこなわれてはいるが、現在でも世界の有機化学製品の多くは石油系の原料が占めている。

石炭化学工業の発展がむずかしかった理由としては、石炭の化学構造が石油と比較してきわめて複雑であり、産炭地や炭層によってもかなりことなっていること、また石炭は固体であるため石油や天然ガスにくらべてとりあつかいにくく、無機化合物をふくんでいるために排煙など環境汚染の点でも問題があること、さらに石炭化学によって生成できる芳香族化合物は石油化学から大量に、しかも安価にえられること、などがあげられる。

石炭が資源として有利な点は、石油とちがって一定の地域や国に偏在せず、埋蔵量が多いということにある。また石油危機以来、石油資源の有限性とともに、今後化学工業が成長を確保・維持していくためには、エネルギー源と原料の多様化、新規材料の導入が必要であることが認識され、石炭はその価値がみなおされるようになった。少なくとも発熱量基準においては石油よりも石炭が有利であることから石炭火力発電所の建設が提唱され、さらに石炭化学の分野でも石炭の流体化と無公害化を同時に達成できる液化・ガス化の研究開発などが強力に推進されてきた。そこには石炭化学の基礎である石炭の化学構造の解明が以前よりもましてすすんでいるという背景もあり、これにもとづく石炭の化学的な処理技術の発展もみることができる。

IX

石炭利用の歴史

石炭が燃料としてつかわれたのは、先史時代からである。東ヨーロッパでは後期旧石器時代(石器時代)の遺跡から石炭の燃え殻が出土し、イギリスの青銅器時代の遺跡には石炭が火葬(葬制)につかわれた跡がのこっている。歴史時代に入ると、古代ローマ帝国支配下のブリタニア(現、イギリス)で、露天で集団的採掘がおこなわれ、調理、暖房、鍛冶(かじ)、火葬などに石炭が使用されていた。前3世紀の古代ギリシャの哲学者テオフラトスの著作には、「北イタリアのリグリア地方やギリシャのエリス地方では木炭()のようにもえる黒い石を産し、鍛冶屋がこれをつかっている」という内容の記述がある。また中国では、三国時代(3世紀)に出版された「水経」に石炭という言葉があらわれる。

5世紀ごろのイギリスでは、すでに商業的な石炭採掘がはじめられていたという。12~13世紀にはイギリスやドイツのルール、ザール地方(ザールラント)などヨーロッパ各地で本格的な石炭の採掘がおこなわれ、高温を必要とする作業、たとえば製鉄、鍛冶、染物、石灰焼き、醸造陶器ガラス煉瓦の製造などで加熱用燃料として利用された。しかし、当時はまだ燃料としての木材が豊富だったため、石炭は一般にはかえりみられなかった。煉瓦が普及するようになった16世紀になると、煉瓦焼成用として大量の石炭が必要とされ、また煉瓦づくりの暖炉や煙突の普及によって家庭用燃料として石炭の需要もふえて、1600年当時にはイギリスの石炭産出量は年間100万tに達していたといわれる。

1

コークスの登場から石炭化学へ

17世紀にコークスを製鉄用燃料にする方法が考案されると、工業用燃料としての石炭需要は急速に増大した。さらに18世紀後半、産業革命期における蒸気機関の出現は、動力源としての石炭の役割を拡大し、石炭産業を飛躍的に発展させた。またコークス製造の副生成物である乾留ガスは、照明(ガス灯)や家庭用燃料として広く利用されるようになり、石炭を出発原料とする都市ガスが、20世紀前半までに一般化した。一方、コークス製造によるもうひとつの副生成物であるコールタールは、19世紀後半に主成分である芳香族化合物の有効利用法が考案されると、染料の合成をはじめ多くの有機合成化学製品の原料として注目されるようになった。

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20世紀の石炭産業

19世紀後半からは石炭の競争相手というべき石油が登場し、内燃機関の発達によって石油の需要が高まった。しかし、当時は石油がごくかぎられた地域でしか産出しないきわめて希少な資源と考えられていたため、世界じゅうにほぼ均一に分布する石炭の液化から燃料を生産することが着目されていた。また当時は電力も大部分は石炭を燃料とする火力発電と水力発電でまかなわれており、エネルギー供給の面でも有機合成化学工業の面でも、石炭産業はまだ主役だったといえる。ところが、第2次世界大戦後にこの事情は一変する。中東における大規模な油田開発とともに石油が安価に大量に供給されるようになると、エネルギー源や有機化学原料としての石炭利用だけでなく、石炭化学の主流だった製鉄やガス生産のための乾留工業でさえ産業の片隅においやられてしまったのである。

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