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もともとセメントとは、やわらかな状態で塗布または充填(じゅうてん)したのち硬化し、強力な接着力をもつ無機質材料すべてをいう。セメントという用語は、糊(のり)や接着剤の同意語としてもつかわれるが、土木や建築では、水と混合すると硬化する石膏(せっこう)プラスターやポルトランドセメントからなる細かい粉末状に加工された製品をさす。一般には、この中でも石灰石を原料とする各種の材料のみをセメントとよぶ。 セメントの硬化は、水やアルコールや石油成分のような軟化剤の蒸発、内部的な化学変化、鉱物と水の化学的結合反応である水和作用、結晶の結合の成長などによる。また、大気中の酸素や炭酸ガスに反応して硬化するものもある。セメントは次のような用途につかわれる。たとえば、ポルトランドセメントと砂や砂利をまぜてコンクリートをつくったり、いろいろな材料の表面を結合したり、化学的な腐食をふせぐために材料の表面をコーティングする。また、用途にあわせてさまざまな材料を配合したものがつくられている。
人類がセメントを利用しだした歴史は古く、古代エジプトの建造物として有名なピラミッドなどでもすでに石材の目地に焼石膏(→ 石膏)が利用されている。また石灰岩を焼成した消石灰(水酸化カルシウム)や焼石膏などが古代ギリシャやローマの建築物につかわれていた。これらは、気硬化セメントの一種である。現代的な意味でのセメントは、1756年にイギリスのJ.スミートンが粘土をふくむ石灰岩を焼成したものがセメントに利用できることを発見したのが最初だといわれている。これは従来の気硬化セメントではなく水硬性セメントであった。その後、97年にイギリスのJ.パーカーが粘土質石灰を焼成したのちに粉砕してつくるローマンセメントを開発し、1818年にはフランスのL.J.ピカットが、石灰岩と粘土をこまかく粉砕してまぜあわせ高温で焼成、粉砕する高級ローマンセメントを考案した。現在、もっとも一般的なポルトランドセメントは、24年にイギリスのJ.アスプディンにより発明された。
セメントには、消石灰や石膏、マグネシアセメントなどのような空気中で硬化する気硬性のセメントと、ポルトランドセメントなど建築土木工事に利用される水硬性のセメントがある。なお、硬化したのちは水中でも利用できる水硬性セメントとちがい、気硬性セメントは水中では使用できない。現在、セメントといえば水硬性セメントのことである。日本では、各種ポルトランドセメント6種と混合セメント3種に関してはJISで規定がもうけられている。
一般の土木建築工事やセメント製品など、もっとも多く使用されている普通ポルトランドセメントは、セメントの総生産量の8割近くを占めている。そして、混合物の割合をかえることによって特徴のある各種のポルトランドセメントがつくられている。 普通ポルトランドセメントよりもケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2)を多くふくむ早強ポルトランドセメントは、初期強度が大きいという特徴がある。この特徴を生かし、冬季の工事や緊急工事などに利用されるほか、コンクリート製品工場などにも使用されている。また、水和熱(気体イオンが水溶液となるときのエネルギーの減少)を低くした中庸熱ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントにくらべてケイ酸三カルシウムとアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al2O3)を少なくし、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2)を多くしている。これは乾燥による収縮も少なく、長期強度にすぐれている。そのため、ダムなどのマスコンクリート工事や道路舗装などにつかわれる。このほか、アルミン酸三カルシウムを少なくして硫酸塩に対する抵抗性を高めた耐硫酸塩ポルトランドセメントや、中庸熱ポルトランドセメントよりもさらに水和熱の低い低熱ポルトランドセメント、低アルカリ形のポルトランドセメントなどがある。
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