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本州の深山に生えるマツ科の常緑針葉樹。栃木県から紀伊半島大台ヶ原の山地の上部に分布する。高さはふつう20~25m、大きいものは40m、直径1.3mになる。葉はやや扁平な線形で先はするどくとがり、上面は緑色、下面は粉をふいたような白色。果実(球果)は円柱形で長さ3~6cm、はじめは紅紫色だが熟すと緑色になって、枝先からたれさがる。用途は庭木、公園樹に植えられるほか、材質に弾力があり、建築、器具、船舶、楽器などにつかわれる。
トウヒ属は日本に7種が自生する。エゾマツはトウヒの母種にあたり、北海道の渡島半島をのぞく全域に自生するほか、植林も多い。アカエゾマツは岩手県の早池峰山と北海道に分布し、球果の種鱗(しゅりん)のすきまがエゾマツよりせまいことで区別できる。 ハリモミは日本特産種。福島県から鹿児島県のおもに太平洋側の山地に分布し、トウヒ属ではいちばん低い所まで生える。 ヤツガタケトウヒも日本特産種で、八ヶ岳にのみ分布し、西岳の標高1500mをこえる一帯に自生するまれな種類。球果は光沢のある褐色になる。 このほかヒメマツハダとヒメバラモミが、八ヶ岳から南アルプスの山地にかぎられて分布している。
トウヒ属はおもに北半球に約40種が分布する。以前はモミ属といっしょにされていたが、モミとの違いは、球果がぶらさがっていること、木質の葉の根元がおちないこと、4つのかどのある葉がまばらにあらゆる方向にむかって生えていることである。 トウヒはふつうの木よりかなり北で生育し、北極圏で森林を形成し、南ではとくに山岳地を中心にヨーロッパのピレネー山脈、アジアのヒマラヤ山脈に生育する。アメリカにおける南限はノースカロライナ州、アリゾナ州である。シロトウヒとクロトウヒはカナダの広大な地域を占め、ほかの木はほとんどみられないほどである。ヨーロッパでは、ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ)が同様の分布をしている。木材は燃料や建材として価値が高く、帆船のマスト用として、ノルウェー、スウェーデンから輸出される。ドイツトウヒは日本での植林もたいへん多く、とくに降雪地帯の防雪林、防風林によくもちいられる。
北アメリカでもっともひろく分布する優勢種は、シロトウヒとクロトウヒであるが、この2種の材木はほとんど区別されない。シロトウヒはニューヨーク州からブリティッシュコロンビア州にかけて、また北ではニューファンドランド、ハドソン湾、アラスカにかけて生育する。白材は軽くてやわらかく、きめが細かい。無臭に近く、ほとんど辺材と見分けがつかない。一般的な建築資材として利用され、トウヒゴムも多少出荷されている。 クロトウヒもシロトウヒとほぼ同じ分布をしめすが、ただ山地沿いにバージニア州まで生育している。やや小振りなこと以外は、シロトウヒとほとんど同じである。メーン州、ニューヨーク州、カナダをはじめいたるところで深い森林を形成し、木材パルプや紙の原料としてひろく利用される。3番目の種、アカトウヒは貴重な材木で、本来はニューイングランドだけに自生していたが、アパラチア山脈沿いに、南はジョージア州までの一帯でみられる。 分類:マツ科トウヒ属。トウヒの学名はPicea jezoensis var. hondoensis。エゾマツはP. jezoensis。アカエゾマツはP. glehnii。ハリモミはP. polita。ヤツガタケトウヒはP. koyamai。シロトウヒはP. glauca。クロトウヒはP. mariana。アカトウヒはP. rubens。ドイツトウヒはP. abies。
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