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ロジャー・ベーコンは、王水にとけた金は、生命の秘薬エリクシル(錬金薬)であると信じた。アルベルトゥス・マグヌスは、当時の実験化学にひじょうに精通していた人物のひとりであった。イタリアのスコラ哲学者聖トマス・アクィナス、スペインのカタルニャの聖職者ライムンドゥス・ルルス、15世紀の初めドイツで活躍した修道僧ウァレンティヌスが、アンチモンの医薬品としての利用、アマルガムの製造、エチルアルコールの単離などをおこなった。これらは、あくまでも錬金術的なものではあったが、化学の発展に大いに寄与した。 この時代の秘法や技術に関する重要な著作としては、イタリアの冶金技術者バノッチョ・ビリングッチョの「火工術」(1540)、ドイツの鉱山学者ゲオルギウス・アグリコラ(本名ゲオルグ・バウアー)の「デ・レ・メタリカ(金属について)」(1556)、ドイツの自然学者・化学者アンドレアス・リバウィウスの「アルケミア」(1597)などがある。
錬金術の世界でもっとも有名なのが、16世紀のスイスの医師フィリップス・パラケルススであった。パラケルススは、医学の分野に錬金術的な考えをとりいれた。彼は、物質を構成する根元物質は塩、硫黄、水銀であり、この3者はそれぞれ土、空気、水に対応している。火については重さがない、非物質的なものであると考えた。しかし彼は、すべてに共通する未知の元素が存在し、古代の四元素はこれからみちびきだされたものにすぎないと信じていた。パラケルススはこの万物をうみだす本源的な元素をアルカエストと名づけ、もしこれが発見されれば、これこそが賢者の石、万能の医薬、至高の溶媒であることが証明されるであろうと主張した。 パラケルスス以後、ヨーロッパの錬金術師は2つのグループにわかれていった。そのひとつは、新しい化合物や反応を発見しようと科学的な研究にうちこんだグループで、このグループの科学者たちが、フランスの化学者アントワーヌ・ラボワジェの業績をそのさきがけとする近代化学の正当な先達となった(→ 化学)。もうひとつは、錬金術の幻視的、形而上学的な面を継承し、これを呪術的、魔術的、詐術的な実践術へと発展させたグループである。錬金術に対する現在の大方の見解は、神秘主義がすなわち錬金術である、という観念に大いに影響されている。
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