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赤色の金属元素で、和名のあかがねはその色からきている。日常生活の中でもっともひろく利用される金属のひとつである。 銅の使用は先史時代にさかのぼり、おそらく人類が金とともにもっとも古くから使用してきた金属である。銅製品はエジプト、小アジア半島、中国、ヨーロッパ南東部、キプロス島、クレタ島などの古代文明の遺跡からも発見されている。銅はやわらかすぎて道具や武器には適さなかった。古代の人々は初歩的な鍛造によって簡単な細工をしていた。前3600年ごろ、シュメール人が銅にスズをくわえて青銅(ブロンズ)をつくるようになった。青銅はかたく、道具や武器としてじゅうぶんに役にたち、やがて青銅器時代がはなひらいていく。 キプロス島に採取場があったため、銅はローマ時代にcyprum aes(キプロスの金属)とよばれていた。英語名copperはこれに由来する。銅は純粋な自然銅の状態でも産出する。コロンブス到達以前のアメリカ北部でも採掘されていた。とくにスペリオル湖岸は自然銅の宝庫で、周辺の先住民はそれを鍛造して武器をつくっていたという。やがてアメリカの銅鉱石は、ヨーロッパの探検家に知られるようになった。
電気伝導性と熱伝導性が高い、展性・延性(→ 延性)にとみ加工が容易である。見た目がうつくしい、など数多くの長所があるため、銅はさまざまな用途に利用されてきた。高い電気伝導性をもち、延性にとむのでひきのばして針金状に加工でき、電線の材料としてよくつかわれる。引っ張り強さも大きいので、銅線は、野外の送電線、海底電線や、家庭の配線、電灯線として、また発電機、モーター、制御装置、信号装置、電磁石、通信機といった電気・電子機器の配線に利用される。 有史以来、貨幣金属として流通し、また調理器具、容器、装飾品などの素材に利用された。電気めっきが容易であり、銅めっきやクロムなどほかの金属めっきをほどこすための下地めっきとして利用される。めっき用に消費される銅はかなりの量になる。 銅鉱石から銅をとりだす方法は、鉱石の組成によってさまざまである。あまり多くないが、自然銅は粉砕され、選鉱されたのち地金に鋳造される。多くは黄銅鉱CuFeS2などの硫化物やクジャク石(孔雀石)Cu2(OH)2CO3として産出する。硫化物の鉱石はシリカをくわえて鉄をのぞき、コークスなどで還元(→ 化学反応)して精錬する。純度の高い銅をえるには、硫化物の鉱石を電気分解して還元する。 純粋な銅はやわらかいが、加工によってある程度までかたくできる。銅合金(→ 合金)にした場合、強度や硬度は純粋な銅よりも高くなるが、電気抵抗がますので電気関係の用途に適さなくなる。銅合金は工作機械で簡単に加工できる。よく知られている銅合金は、亜鉛との合金の黄銅やスズとの合金の青銅である。金、銀、ニッケルなども銅合金に利用されており、砲金(銅、スズ、亜鉛)、洋銀(銅、亜鉛、ニッケル)などの合金の成分となる。 銅には2つの系統の化合物がある。1つは第一銅化合物で、1価の原子価をもつ。もう1つが第二銅化合物で、原子価は2価である。第一銅化合物の多くは空気にさらされただけで酸化され、第二銅化合物に変化する。工業的には、第一銅化合物の重要性は小さい。第二銅化合物は安定な物質である。ある種の銅溶液にはセルロースを溶解する作用がある。天然セルロースから再生繊維を製造するレーヨン工業では、大量の銅をセルロースの溶解に使用する。緑青(ろくしょう)の名で知られる銅化合物は青緑色の顔料となる。近年は有機系の薬剤にかわりつつあるが、ボルドー液などの殺虫剤や殺菌剤にも、銅がつかわれている。
地殻中に存在する銅は55ppm(100万分の1)。通常は金、銀、ビスマス、鉛などのほかの金属とまじりあって、あるいは岩石中に分散する細粒として存在する。しかし420tもの自然銅の塊として発見されることもある。アメリカのミシガン州北部のスペリオル湖付近では自然銅が産出され、重要な産業となっている。小規模な自然銅の鉱脈は世界各地に分布している。銅の主要な鉱石は黄銅鉱と斑銅鉱Cu5FeS4で、硫化銅と硫化鉄の混合物である。硫黄との化合物である輝銅鉱Cu2Sも重要な鉱石で、アメリカやイギリスに産出する。藍銅鉱Cu3(CO3)2(OH)2は銅の塩基性炭酸塩で、フランスとオーストラリアに産出する。クジャク石も銅の塩基性炭酸塩でロシアに産出する。赤銅鉱Cu2Oは、キューバに産出する。
日本では弥生時代の遺跡から銅鐸(どうたく)や銅剣などの青銅製品が土出している。銅鉱石という名が歴史上はじめてあらわれるのは、7世紀後半になってからのことである。「日本書紀」や「続日本紀」に銀鉱や銅鉱の記述がはじめてあらわれる。重要なのは「続日本紀」にみられる、708年(慶雲5)、武蔵国秩父郡から和銅の献上があったという記述である。いわゆる秩父銅の発見である。元号は和銅元年とあらためられ、銅貨である和同開珎が多量につくられ、流通するようになった。752年(天平勝宝4)には、座高約16mの青銅に金で仕上げをした奈良の大仏の開眼供養がおこなわれた。 その後、鋳銭が下火になり、中国から銅銭が輸入されるようになった。平安末期から鎌倉時代にかけて、宗銭が輸入され、流通した。室町時代には明銭(おもに永楽通宝)が輸入されて流通した。その一方で、採銅事業が活発になり、銅が重要な輸出品となった。 その後豊臣秀吉、徳川家康が鉱工業に力をいれたため、17世紀中期以降銅鉱業が飛躍的に発展し、銅は長崎貿易の重要な輸出品となった。明治期にはいって溶解炉製錬法などがとりいれられ、産銅量はさらにふえ、日本はアメリカ、チリにつぐ銅産出国となった。反面、水質汚染による足尾鉱毒事件や、日立、別子、小坂などでおきた製錬所の排煙による被害が深刻になり、その解決が大問題となった。第1次世界大戦後は電力業の発展による電線などの需要が多くなり、銅の輸入国となった。第2次世界大戦後は国内の資源がさらに枯渇し、銅生産はスクラップの再利用と輸入鉱石の精錬にかわった。1991年の総需要量は約260万tで、うち約30%が銅プリント基板やそのエッチング液、加工くず、廃くずなどのリサイクルによっている。 元素記号Cu。原子番号29。原子量63.546。周期表(→ 周期律)の11族に属する遷移元素である。融点1084°C。沸点2580°C。密度8.95g/cm³(20°C)。
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