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  • 対位法 - Wikipedia

    対位法 (たいいほう)( 英: counterpoint 。対旋律を表す語でもある。)は、 音楽理論 のひとつであり、複数の 旋律 を、それぞれの独立性を保ちつつ互いによく調和させて重ね合わせる技法である。

  • 対位法入門(in鶴原研究室)

    はじめに 「対位法」とは作曲技法の一つで、「2声部以上の旋律がそれぞれの美しさを保ちなが ら同時に鳴り響いてもバランスがとれている」という状態を作り出す技術を指す。対位 法の技術を駆使した曲にはバッハが確立した「Fuga」という形式 ...

  • 対位法

    フーガの技法に見られる対位法 ... 対位法的技術 「フーガの技法」においては、各曲に付けられたContrapunctusという タイトルが示すように、様々な対位法技術が用いられています。

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対位法

対位法 たいいほう Counterpoint
百科事典項目
項目構成
I

プロローグ

2つ以上の旋律(メロディ)を同時に進行させる作曲技法。語源のラテン語punctus contra punctumは「点対点」、つまり音符対音符のことだが、実際には旋律対旋律を意味する。複数の旋律が同時に進行する点ではポリフォニー(多声音楽)と同じだが、2つの用語の使い方には多少の違いがある。一般的に、ポリフォニーが「ホモフォニー」と対立する概念として音楽の構成を問題にするときや、中世の多声音楽をさすときにつかわれるのに対して、対位法はそれよりもあとの時代の音楽、たとえばヨハン・セバスティアン・バッハの作品などのテクスチュア(構成)や、多声音楽の作曲技法である16世紀の対位法をさす場合につかわれる。

身近な対位法のひとつに、単純なタイプのカノンである輪唱がある。イギリス古謡の「こげこげボートを」(譜例1)にみられるように、輪唱では曲が一巡するまで全声部(パート)とも同一の旋律をたどるが、各パートは時間をずらして歌にくわわる。1声だけのモノフォニーや、1つの旋律に和音の伴奏がつくホモフォニーの音楽では、聞き手の関心はつねにいちばん上の声部の旋律にむけられる。しかし輪唱では、時間をおいて次々にあらわれる旋律に聞き手の関心がむけられる。

ある意味では、複数の声部を同時にならす音楽すべてが、大なり小なり対位法を内包している。ホモフォニー音楽においてさえ、旋律と伴奏声部の間で対位法が成立する。しかし厳密には、ことなった声部の旋律が対等な力関係にあり、しかもそれぞれが進行の仕方(上行、下行、同度)やリズムの刻み方で独立している音楽を、対位法音楽とよぶ。

譜例1の輪唱で対位法の特徴を観察してみよう。この場合には、どの声部の旋律も同じであるから、旋律の重要性(力関係)はひとしい。ある声部が1つの音を保持している間に(たとえば、第4小節の第1声部、第6小節の第2声部)、ほかの声部の音はしばしばうごく(上行ないし下行する)。このような同度進行と上行または下行の組み合わせを、斜進行('*-,)とよぶ。1つの声部が上行(第6小節の第3声部)または下行し、ほかの声部がそれとは逆の方向へうごく進行(第6小節の第1声部)は、反進行(+&)である。2つの声部がともに上行ないし下行する進行(第7小節の第1、2声部)を、平進行()()というが、これはめったにみられない。旋律と同様、各声部のリズムもつねに独自の動きをする。

対位法は、さまざまな形で音楽に活気をあたえてきた。たとえば、中世フランスの作曲家ペロタンによるリズムを反復する初期ポリフォニー、イタリアのパレストリーナやフランドルのラッススら、16世紀の作曲家による旋律と和声のバランスがとれた盛期ポリフォニー、18世紀初期にバッハがつくりだした壮麗な音の大伽藍(がらん)、古典派時代(18世紀末~19世紀初め)に、いきいきとした対位法的な構成を推移部や展開部にもちいた、モーツァルトハイドンベートーベンの楽曲、旋律同士が不協和にぶつかりあうハンガリーのバルトークやロシア出身のストラビンスキーらの20世紀音楽、ベースの旋律を土台に自由に展開されるジャズの即興演奏など、対位法をもちいた作例は数限りない。

II

模倣対位法

対位法には、模倣的なものと、そうでないものがある。模倣対位法では、さまざまな声部が1つの旋律型あるいは旋律動機を共有し、カノンにみられるようにたがいに模倣しあう。模倣対位法は主としてカノンとフーガでもちいられ、西洋音楽史においては、特定の時代(おもに16~18世紀)を特徴づける技法となっている。模倣的でない対位法では、各声部がそれぞれ独自の旋律動機をもつ。

模倣対位法の特徴は次のようなものである。

(1) 2つ目以降の声部は、輪唱のように、初めの声部と同じ音で開始することも、それよりも、高い、または低い音ではじめることもできる。(2) 2つ目以降の声部は、初めの旋律を正確に模倣することも、変形することもできる。(3) 応答声部では、初めの旋律を「拡大」「縮小」することがある。これはリズムをかえずに、音符の長さをかえることである。(4) 2つ目以降の声部が、ときには初めの旋律がおわる前にはじまる。このように声部の入りが重なる技法を、ストレットとよぶ。(5) 応答声部で、もとの旋律の進行を鏡にうつした場合のように完全に逆にすること、たとえばもとの旋律で上行するものを同じ音程のまま下行させることができる。このように、音の進行を反転させる技法を「転回」という。

譜例2(バッハ「フーガ」ハ短調の一部)に、これらの技法がみられる。

III

歴史

対位法の歴史は中世末期にはじまる。このころ、カントゥス・フィルムス(定旋律)とよばれる既存の旋律に、単数ないし複数の声部がつけくわえられるようになった。数世紀をかけて、作曲家たちは相互関係のない、独立した旋律でありながら、和声とリズムの点でよくなじむ旋律をつくるようになる。対位法の技法はポリフォニーの黄金時代である16世紀に完成される。パレストリーナやラッススらの楽曲では、各声部の旋律がひじょうにうまくつくられ、リズムと進行に細心の注意をはらいながら、模倣技法をつかっている。この時代の無駄のないポリフォニーは比類ない完成度に達しており、現在なお対位法をまなぶための模範である。

対位法は18世紀前半、バッハやドイツからイギリスにわたったヘンデルらによってふたたび盛んになる。しかし、彼らの対位法は長調短調を基盤とする和声にしたがっていた。古典派とロマン派の時代(18世紀後半~19世紀)の作曲家は、より直接的な感情表現をめざすようになり、そのために旋律と和声的な伴奏をもちいた。対位法は過去の学術的知識のたぐいとみなされ、副次的にもちいられるにすぎなくなった。

20世紀になると、ふたたび対位法に対する関心が高まり、過去の様式を模倣した新古典主義や、新しい方法論による音楽の中で復活する。19世紀末、長調・短調を基盤とする調性の体系が解体され、20世紀音楽はそれまでの厳格な和声規範から解放された。その結果、対位法的な書法で書かれた音楽の各声部は、それぞれがそれまでよりも自由に旋律の独自性を追求している。

IV

対位法の学習と実践

どんな様式で書くにせよ、対位法の作曲で失敗しないためには個々の声部と声部間の相互関係に細かく神経をつかう必要がある。手本としては、今日でも16世紀様式の対位法がもっともすぐれている。この様式では、全声部の音域が最大1オクターブと5度以内であり、隣接する2声部が4~5度以上にひらくことはない。各声部の旋律は順次進行したり、ある程度の跳躍進行をしたりする。跳躍は3度(たとえばハからホへの上行、イからヘへの下行など)、完全4度、完全5度の上行・下行、短6度の上行がゆるされるが、1オクターブ以上の跳躍はひかえなければならない。

各声部の音程は、特定のパターンにあらわれる不協和音(経過音、刺繍(ししゅう)音、先取音、掛留(けいりゅう)音など)をのぞいて、つねに調和的で安定した協和音程をたもつ。不協和音は、きめられた場合でのみ使用することができる。掛留以外の不協和音は、たいてい短い音価のリズムか弱拍、分割された拍の中でつかう。対位法では、協和音程をたもっている音の進行にも規則があり、完全5度とオクターブの跳躍は、2つの声部が斜進行ないし反進行する場合にのみゆるされる。各声部のリズムの流れはスムーズでなければならず、唐突な開始や終止、あるいは短いシンコペーション(アウフタクトのリズム)は、けっしておこなってはならない。

対位法は、しばしば多段譜表をもちいて段階的におしえられる(譜例3)。この方法は18世紀ドイツの作曲家フックスが考案したもので、彼の1725年の音楽理論書「グラドゥス・アド・パルナッスム」は現在でも対位法の教科書として有用である。譜表の最下段には、定旋律がすべて同じ長さの音符で書かれる。第1段階(下から2番目の譜表)では、定旋律の各音に同じ長さの1音をあてる。第2段階では、定旋律の1音に対して半分の音価の2つの音を、第3段階では4分の1の音価の4つの音をあてる。第4段階では、定旋律の1音に対して同じ長さの1音をあてるが、開始の拍をずらす。第5段階では、音符の長さも、開始の拍も変化させる。

18~19世紀の対位法は、そのころに一般的であった和声体系と対立しないようにもちいられた。20世紀になって、ドイツの音楽学者ハインリヒ・シェンカーの影響のもとに、対位法をあらゆる調性和声の基礎とする考え方が生まれる。すべての和声的手法は、対位法と同じく、声部間の相互関係で説明できるとシェンカーは主張した。いいかえれば、対位法は和声の原初的な段階であり、和声はいかに複雑な形をしていても、複数の声部を対位法的にむすびつけたものにすぎないと考えられた。

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