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項目構成
ベートーベンは9曲の交響曲を作曲して、交響曲形式を巨大化するとともに、苦悩や歓喜などの、さまざまな内面的感情を描写した。このような表現力は最初の2曲にすでにある程度みとめられるが、「英雄」のタイトルで知られる第3番変ホ長調(1803)でとくに顕著になる。この作品は、創造的エネルギーにみちあふれる長大な第1楽章、葬送行進曲の形式をとる緩徐楽章、活力にとんだスケルツォ楽章、主題と変奏がおこなわれる終楽章の順に構成されている。 第5番ハ短調(1808。いわゆる「運命」)では、4つの音符からなる冒頭の動機を発展・再構成することによって曲に統一をあたえている。第6番ヘ長調「田園」(1808)は、田園風景を回想するベートーベンの心象を描写している。ここには標題音楽の技法がもちいられ、鳥の鳴き声や雷鳴を模倣した音楽がつかわれたり、標題によって簡単な筋立てが示唆されたりする。最高傑作ともいわれる第9番ニ短調(1824)では、終楽章にドイツの詩人シラーの詩「歓喜に寄す」にもとづく合唱がはいる。
音楽におけるロマン主義の台頭は、交響曲に2つの対照的な潮流を生じさせた。ひとつは標題音楽の要素を交響曲にもりこむものであり、もうひとつは、19世紀的な旋律・和声をもちいながら、古典的な形式理念を尊重するものである。 前者を代表する作曲家は、フランスのベルリオーズとハンガリーのリストである。彼らの交響曲には、それぞれ固有の文学的内容があり、交響詩の要素がとりいれられている。 これとは対照的に、オーストリアの作曲家シューベルトの交響曲は、本質的には古典派的な形式にしたがっているが、旋律と和声は、まぎれもなくロマン派のものである。彼の交響曲では、第7番(第8番説もあり)「未完成」(1822)と第8(9)番「グレート」(1828)がもっとも名高い。 ドイツのメンデルスゾーンとシューマンの交響曲は、ロマン派特有の豊かな和声を特色とする。メンデルスゾーンの作品としては、第3番「スコットランド」(1842)、第4番「イタリア」(1833)、第5番「宗教改革」(1830)が有名で、タイトルが示唆するとおり、標題音楽の要素をもつ。シューマンは第1番「春」(1841)、第3番「ライン」(1850)など、4曲の交響曲をのこした。彼の形式は比較的に自由で、うつくしい旋律にあふれている。 古典派の交響曲形式とロマン派様式の融合にもっとも成功したのが、ブラームスである。彼は4曲の交響曲をのこした。ロシアのチャイコフスキーは6曲の交響曲を書き、ロシア民謡風の旋律をもちいて濃密な情感を表現した。とりわけ後期の3曲では、音楽の展開に綿密な計算がうかがえる。 オーストリアのブルックナーとマーラーの2人は、ドイツのワーグナーの楽劇に多大な影響をうけた。ブルックナーの9曲の交響曲は、オーケストラのぶあつい響きを活用し、特定の旋律型やリズム・パターンを反復使用して曲に統一感をあたえている。マーラーは交響曲の長さをさらにひきのばし、しばしば長大な声楽部分を導入した。 チェコのドボルザークは、代表作の第9番「新世界から」(1893)にみられるとおり、民謡のメロディの巧みな活用で知られる。フランスのダンディ、サン・サーンス、ロシアのボロディン、リムスキー・コルサコフも、それぞれ交響曲の名作を書いた。ベルギー系フランス人のフランクは、交響曲ニ短調(1888)で19世紀に流行した循環形式の典型的な例をしめした。循環形式とは、全楽章で同じ主題または動機を反復使用し、全体に統一感をあたえる作曲法である。
20世紀にはアメリカのアイブズ、フィンランドのシベリウス、デンマークのニールセンなど、多くの作曲家がきわめて個性的かつ革新的な姿勢で交響曲の作曲にとりくんだ。その一方で、新古典主義の理念にしたがいながら、20世紀的感覚の和声やリズム、構造を交響曲の形式にくみこんだ作曲家もいる。新古典主義の作例は、ロシアの作曲家プロコフィエフの「古典交響曲」(1917)や、ロシア出身のストラビンスキー、アメリカのコープランド、ロイ・ハリス、ウォルター・ピストン、ロジャー・セッションズらの交響曲にみることができる。フランスのルーセルの4曲の交響曲は、印象派の作品である。 オーストリアのウェーベルンは、12音技法をもちいて約11分で演奏できる交響曲を書いた。同郷のシェーンベルクの「室内交響曲」(1906)と同様に、ウェーベルンの短い交響曲は、形式と響きの簡潔さを追求する20世紀の傾向を端的にしめしている。 ロシアのラフマニノフの交響曲は、それとは対照的に、伝統的形式によるロマン派的な作品である。同じロシアのショスタコービチの交響曲は、より革新的で、しばしば大規模な構造をとるが、曲によっては標題音楽の性格が強い。
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