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1868年、フランスの天文学者ピエール・ジャンサンらが、インドでの皆既日食(→ 食)の際に太陽コロナのスペクトルを分析した結果、ヘリウムを発見した。その直後、イギリスの化学者フランクランドと天文学者ロッキャーが元素であることを確認、太陽を意味するギリシャ語heliosにちなんだ元素名をつけた。95年にはイギリスの化学者ラムゼーが、ウラン鉱石の一種であるクレーベ石からヘリウムを分離し、地球上にも存在する元素であることを証明した。同じ95年、スウェーデンの化学者クレーベらも、クレーベ石からヘリウムを分離している。 天然に存在するヘリウムは、質量数4(中性子2、陽子2)の4He(ヘリウム4)であるが、ごくわずかに同位体の³He(中性子1、陽子2)が存在する。人工的につくられたものとしては6Heや8He、10Heなどがある。 元素記号He。原子番号2。原子量4.002603。周期表の18族に属する。大気中の存在量は5.24ppm。安定同位体の質量数と存在比は、³Heが、3.016029で0.000134%。4Heが4.002603で99.999866%、融点-272.2°C(26気圧)。沸点-268.934°C。密度0.1785g/リットル(気体、20°C)、0.125g/cm³(液体、-268.9°C)、0.19g/cm³(固体、-273°C)。
ヘリウムは単原子の気体で、1個の原子がそのまま分子となっている。ほかの希ガスと同様に、ヘリウムは化学的に不活性である。ヘリウム原子では電子軌道が電子で完全にみたされているため、ほかの元素との反応はおこりにくい。ただし、ごくまれに、ひじょうに不安定な化合物を形成することがある。これまでにネオンなどの希ガスや、水素と結合したヘリウム化合物の分子が発見され、そのほかの化合物が存在する可能性もみとめられている。 ヘリウムは宇宙では水素についで豊富に存在する元素であり、宇宙発生の最初の段階では大量のヘリウムが生じ、そこから各種の元素が生成したと考えられている。太陽系では太陽の大気にかなりの量がふくまれる。そのほか木星や土星などの大型惑星では、水素とともに大気の主成分を構成する。ごくまれに発見されるヘリウム化合物の存在は、宇宙の誕生や進化を解明する宇宙論にとって重要である。→宇宙の「宇宙の進化」 ヘリウムの融点は絶対零度(-273.16°C)に近く、すべての気体の中でもっとも液化が困難である。1908年、オランダの物理学者カメルリン・オンネスが、はじめてヘリウムの液化(凝縮)に成功した。液体ヘリウムは極低温の研究実験にかかせない冷却剤となる。液体ヘリウムを急激に気化すれば、蒸発によって熱をうばうので、常圧でもほぼ絶対零度に近い超低温がえられる。 液体ヘリウムは絶対零度0K(ケルビン:→ 絶対温度)付近で、超流動性とよばれる特異な現象をしめす。液体ヘリウムは2.17K(-270.98°C)以上では通常の液体(ヘリウムI)だが、それ以下に冷却されると超流動性ヘリウム(ヘリウムII)となる。超流動性ヘリウムは粘性がゼロの液体で、通常の液体ではとおれない微小なひびや小孔も、たやすく通過する。また容器の壁面をはいあがり、外に流出していく。この超流動性は量子論の助けがあって、はじめて説明できる現象である。 アメリカやカナダ産の天然ガスには平均0.4%のヘリウムがふくまれ、ヘリウムの工業的な供給源として利用される。少量のヘリウムの移送はボンベでおこなわれるが、大量のヘリウムでは輸送費を軽減するために、断熱容器に封入した液体ヘリウムとして輸送される。
ヘリウムは軽く、不燃性の気体なので、気球や飛行船の充填(じゅうてん)ガスに利用される。爆発しやすい水素よりも取り扱いが安全である。 アルミニウムやマグネシウムなどの軽金属の合金は、通常では酸素とはげしく反応してしまうので、これを保護するため不活性ガスのヘリウムやアルゴンなどをふきつけながらガスタングステンアーク溶接をおこなう。→溶接の「アーク溶接」 深海潜水やケーソン(→ ケーソン工法)内の作業において減圧症(潜水病)を予防するため、ヘリウムを酸素と混合した人工空気を使用する。 ヘリウムには、不活性であること、中性子の吸収で放射性をおびないことなど、原子炉の冷却材にふさわしい性質があるので、高温ガス炉などに利用される。→原子炉の「ガス冷却炉(GCR)」 ほかに、極低温研究用、ヘリウム・ネオン混合気体レーザーなどの用途がある。ヘリウムの利用は、技術の進歩とともに多方面に広がっている。
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