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日本では、サイコセラピー(psychotherapy)という語は精神医学の立場では「精神療法」、また心理学の立場では「心理療法」と2通りに翻訳されてもちいられているが、もともとは同じ意味である。しかし、治療者が医師免許をもつかもたないかは、クライアント(患者)にとっても治療者(セラピスト)自身にとっても無視できない問題であり、クライアント(患者)との出会いの場面における治療の実際の内容は同じであっても、その周辺のすそ野まで考えにいれて同じであるといいきれるかどうかはむずかしい問題である。 ただし、ここでは治療者(セラピスト)と患者(クライアント)の出会いの場面における療法そのものに話を限定し、精神療法が心理療法と同義語であるという立場から解説する。
精神療法とは、治療者とクライアントの間に生まれる人間関係によって、クライアントの心身の問題にこのましい変化がもたらされるような心理的治療一般をさす。精神療法の対象者としては、なんらかの心理的な問題をかかえ、仕事や生活上の不適応にくるしんだり、なやんだりしていて、ほかの人に精神的援助をもとめている人のすべてが該当する。 クライアントの立場からみれば、治療者の精神的援助によって、自分が今おかれている現状になんらかの納得の様式をもつことができ、それによって自分の無力感にうちかち、自分が自分自身の人生の真の主人公になれるように心理的に成長できることが治療である。 これを治療者の側からみれば、クライアントの問題に真摯(しんし)に忍耐強く耳をかたむけ、クライアントとの対話的場面でおこっている言語的、非言語的なさまざまな表現に細心の注意をはらい、クライアントのかかえている問題を洞察する。そのようにしてえられた理解をクライアントに適時につたえていくことによって、クライアントが主体的に自分の問題を把握できるようにもっていくのが心理的治療の内容になる。
精神医学者の笠原嘉が日常の精神療法における留意点としてあげたいくつかの点は、どのような療法をとるにせよ、治療者が常に留意しなければならないことである。それを参照することが、外来における精神療法のおおよその輪郭を知ることにもなる。 (1)クライアントが言語的、非言語的にみずからを表現できるように種々の配慮をする。(2)治療者は基本的に非指示的な態度をとり、クライアントの心境や苦悩をそのまま受容し、了解することに努力をおしまない。(3)クライアントと協力してくりかえし問題点を整理し、クライアントの内的世界の再構成をうながす。(4)治療者の人生観や価値観をおしつけない範囲で、必要に応じて日常生活上の事柄に関する指示、激励、啓蒙をおこなう。(5)治療者へのクライアントの転移現象(→ 精神分析)に常に目をむける。(6)短期の奏功を期待せず、変化に必要な時間をじゅうぶんにとる。
精神療法は、統合失調症や躁うつ病(→ うつ病)などの精神病に対しても、薬物療法や作業療法とくみあわせてもちいられることがあるが、一般に精神療法が主たる効果をもつのは、強迫神経症、不安神経症、恐怖症、ヒステリーなど、心因性の心の病である神経症圏の種々の問題に対してである。さらに境界例、心身症、非行、自閉症などにも精神療法がもちいられることがある。
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