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ある言語の音をあらわす文字のことで、「アルファベット」という名前は、ギリシャ語のアルファベットの最初の2文字である「アルファ」と「ベータ」をならべたものからきている。 理想的なアルファベットは、1つの音に1つの文字が対応しているものであるが、このようなアルファベットはほとんどない。ただし、朝鮮語のハングルはほぼこのような対応になっており、世界のアルファベットのうちでもっとも完全な仕組みをもっている。日本語の仮名も、1つの音節に1つの文字が対応しているという点では、理想的な文字といえないことはない。しかし、アルファベットが原則として1つの音に対応するようになっているのに対し、平仮名や片仮名は1つまたは2つ以上の音からなる「音節」に対応しているという点でことなっている。また、漢字は音だけでなく意味もあらわす「表意文字」であるという点で、やはりアルファベットとは区別される。 初期の文字は表意文字であった。そのような文字としては、古代バビロニアやアッシリアでもちいられた楔形文字、エジプトのヒエログリフ、中国や日本で現在でももちいられている漢字(→ 中国語)、マヤ文字(→ アメリカ先住民の諸言語:マヤ)などがある。 表意文字からアルファベットや音節文字へとかわっていったのは、表意文字を、対象や概念をあらわすためでなく、音をあらわすためにもちいるようになったことによる。ある表意文字が1つの音をあらわすようになる場合には、その文字の発音の最初の音がえらばれるのがふつうだった。たとえば、古代セム語では、「家」を意味する表意文字はbethと発音されていたのだが、その文字は、最終的にはbethの最初の音のbをあらわす文字としてつかわれるようになった。最初は「家」を意味していて、のちにはbの音をあらわすようになったこの古代セム語の文字が、英語のアルファベットのbのもとになっている。
知られている最初のアルファベットは、前1700~前1500年ごろに地中海東部の沿岸地域で発達したと一般に考えられている。このアルファベットは北セム文字とよばれ、楔形文字とヒエログリフをくみあわせてできたものであるが、クレタ文字やヒッタイト文字のような類縁関係にあるアルファベットからとられたものもあるようである。北セム文字には子音をあらわす文字しかなく、単語の中の母音はおぎなってよまなければならなかった。 北セム文字をうけついでいる、現在のヘブライ文字の数は22、アラビア文字の数は28だが、やはり子音をあらわす文字しかない。ただし、なかには母音をもあらわすことのできる文字もあるし、子音文字の上下や横に母音をあらわす点や線をつけくわえることもできる。北セム系の文字は右から左に書かれる。→ アラビア語:セム語族:ヘブライ語 前1000年ごろに北セム文字が、南セム文字、カナン文字、アラム文字、ギリシャ文字の4つの系統にわかれたと考える学者は多い。ただし、南セム文字だけは北セム文字とは独立に発達したか、両者が共通の祖先から発達したのだという説もある。南セム文字は、アラビア半島でかつてもちいられていた諸言語や、現代のエチオピアの諸言語のアルファベットの起源である。 また、アラム文字は、西アジア全域でもちいられているセム系および非セム系のアルファベットのもとになっている。このうち、セム系の文字には、方形ヘブライ文字がふくまれるが、この文字は古代ヘブライ文字にかわってもちいられるようになり、現代ヘブライ語のアルファベットの原型となった。
ギリシャ人は、セム文字系統のフェニキア文字を採用し、もともと子音字22文字だったものを、24文字(方言によってはこれより多いものもある)にふやして、母音をあらわす文字と子音をあらわす文字を区別するようにした(→ ギリシャ語)。また前500年ごろから、ギリシャ文字は左から右に書かれるのがきまりとなった。ギリシャ文字は、地中海地域全体にひろまり、エトルリア文字、オスク文字、ウンブリア文字、ラテン文字などのもととなった。とくにラテン文字は、ローマ帝国の言語であるラテン語をしるすための文字だったため、西ヨーロッパで話されているすべての言語のアルファベットの基礎となった。
後860年ごろ、コンスタンティノープルからきたギリシャ人の宣教師たちが、スラブ人をキリスト教に改宗させ、彼らのためにキリル文字といわれる文字を考案した。「キリル」という名称は、その宣教師たちの1人であるキュリロスの名前からきている。キリル文字は、ラテン文字と同じくギリシャ文字に由来しており、文字の形は9世紀の様式にもとづいている。ただし、スラブ語にはあるがギリシャ語にはない音をあらわすために、いくつかの新しい文字がつけくわえられた。 キリル文字は現在、ロシア語、ウクライナ語、セルビア語、ブルガリア語でもちいられているが、同じスラブ語でも、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語、スロベニア語では、ラテン文字がもちいられている。バルカン半島で話されているセルビア・クロアチア語では、カトリックのクロアチア人はラテン文字をもちいているが、ギリシャ正教のセルビア人は、同じ言語でありながらキリル文字をもちいている。→ スラブ語派
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