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放送

放送 ほうそう
百科事典項目
項目構成
1

地方局

アメリカでは地方局は放送産業の核になっている。ニュースを別にすれば、地方局が自社の番組をつくることはほとんどない。地方のラジオ局は収録済みの音楽を放送し、テレビ局はまずネットワーク番組をながすほかは、再放送番組や古い映画を放送するのみである。しかし、地方局は番組の最終責任をもち、視聴者とのかかせない接点となっている。

1980年代後半、アメリカでは9000以上あるラジオ局のうちAM局(振幅変調)とFM局(周波数変調)がおよそ半々であった。約4分の1のFM局が非商業的で、地方自治体、聴取者の寄付、全国公共ラジオの共同基金からの援助をうけていた。テレビ局は1300以上あり、その半分以上はVHF局であった。商業テレビ局が全テレビ局の75%を占め、約98%の視聴者がみている。ほとんどの商業局は3大ネットワークのいずれかに加盟している。

日本でも、東京のキー局を頂点とするピラミッド型のネットワーク構造の中にあって地方局が独自に編成する枠は小さい。ある地方局の場合、1週間の放送時間のうちネットワークからの番組は71%、ローカルニュースとローカル番組をあわせても自社制作番組の比率は6.4%にすぎない。

日本の民間ラジオ局はAM局47、FM局48、短波放送1、民間テレビ局はVHF局48、UHF局65、衛星放送1となっている。NHKは5000億円の受信料収入をえて、全国をカバーする巨大メディア法人である。その電波数はラジオのAM放送2波、FM放送1波、国際放送用短波2波で、テレビではVHF2波、衛星放送2波と1社で9波を専有している。

2

全国ネットワーク

アメリカの全国ネットワークの間でも視聴率競争ははげしい。調査会社ニールセンの視聴率上位10番組の発表がこの競争に拍車をかける。しかし、ネットワークが19時から23時までのプライムタイムに放送する番組をつくることは少なく、独立制作会社から番組を買い、競争上最大の効果を発揮するように編成するのである。

NBC、CBS、ABCの3大ネットワークは企業本部をニューヨークに、主要都市に自社所有局をおいている。テレビ・ネットワークはラジオ・ネットワークからでてきたもので、NBCはRCAの1部門である。なお、RCAは1986年にゼネラル・エレクトリック社に買収されている。

CBSはもとは小さなラジオ・ネットワークだったが、1929年にウィリアム・S.ペイリーに買われ、彼の経営手腕によってレコード、楽器、出版にまで事業範囲が拡張された。CBSは95年、ウェスティングハウス・エレクトリック社により54億ドルで買収された。

3大ネットワークの中でもっとも新しいABCは、1943年、最高裁判所の命令でNBCのもつ2つのラジオ・ネットワークのうち1つを売却することになり、これを買いとった製菓業者エドワード・J.ノーブルがABCと名づけたものである。ABCは30年間以上、最低の視聴率と最少の加盟局しかもっていなかったが、70年代後半には視聴率第1位に躍進し、映画館、録音録画会社、出版社をかかえる大企業となった。しかし95年には、ウォルト・ディズニーにより190億ドルで買収された。

第4のネットワークのフォックス放送会社は、オーストラリア生まれのメディア王ルパート・マードックの所有で、1980年代後半にはヤングアダルトにかなり食いこんでいる。

第5のネットワークは教育放送から生まれた。1967年に教育放送局を結合してPBS(公共放送サービス)が設立され、公共放送協会の共同資金をつかって全国向け番組制作を開始した。初期には教育番組を放送し、「セサミストリート」などの子供番組などをつくったが、最近では、ドラマや長時間のバラエティまで放送するようになった。

日本におけるネットワークは、1956年、大阪テレビと中部日本放送が開局に際し、先発局の日本テレビ、ラジオ東京と協定をむすんだのが始まりである。日本の場合はアメリカのようにネットワーク会社を設立することはなく、ネットワーク協定でむすばれた法人格をもたない任意の結合グループといえる。

本格的なテレビ・ネットワークの形成は、1958年から59年にかけてVHF局が大量(33局)に開局した直後である。ニュースに関するネットワークにはじまり、59年に東京放送(TBS)系がJNN(ジャパン・ニュース・ネットワーク)を結成、日本テレビ系がNNN(ニッポン・ニュース・ネットワーク)を形成した。さらに66年、フジテレビ系のFNN(フジ・ニュース・ネットワーク)、70年にテレビ朝日系ANN(オールニッポン・ニュース・ネットワーク)が発足した。ネットワークは4系列となったが、受け手の地方局は1県1局という状況であった。郵政省(現、総務省)は68年に、UHFの大量(43局)免許にふみきり、ネットワークの系列化がいっそうすすんだ。同時に、各系列はニュース協定にくわえ、基本協定から番組と営業に関する業務協定をむすび、ネットワーク体制を完成した。

ラジオ・ネットワークの形成は日本ではテレビよりもおくれた。テレビの出現によってお茶の間の娯楽の主役の座をおわれたラジオは、1965年切り札としてラジオ・ネットワークの結成に着手し、東京放送をキー局とするJRN(ジャパン・ラジオ・ネットワーク)と文化放送とニッポン放送をキー局とするNRN(ナショナル・ラジオ・ネットワーク)を発足させた。

V

放送に対する規制

アメリカの放送政策は1934年の通信法にもとづいている。連邦通信委員会(FCC)の免許によって私的所有の放送局の設立がみとめられるが、一方で放送局は公共の受託者として、公共の利益と便宜と必要とにつくすことが義務づけられており、憲法第1条修正条項に違反する行為を禁止し、FCCによる放送内容の検閲をさだめている。

日本の放送制度は電波法と放送法によって枠組みがつくられている。電波法は放送局をふくむ無線局の免許や無線施設の運用に関する技術的基準などを規定し、放送法はNHKの目的、経営、運営、NHKと民放の番組のあり方を規定している。放送法は放送番組の編集の自由を保障しているが、同時に番組編集準則などをもうけ、番組編集について規制している。

1

放送行政機関

FCCは独立した政府機関で、大統領が指名した任期7年のメンバー7名で構成され、最近はケーブルテレビと通信衛星の管理がその責任範囲にくわえられた。

日本の放送行政の所管官庁は総務省で、放送行政局および各地方電気通信監理局、電波監理、電気通信技術の両審議会などが放送に直接に関係する。放送免許にかかわるのは電波監理審議会で、衆参両議院の同意をえて郵政大臣が任命する5名の委員で組織され、省令の制定および改廃、放送局をふくむ無線局の免許および取り消しなど、電波および放送の規律に関する事項を調査審議し、総務大臣に対し必要な勧告をおこなう。また電波法、放送法、有線テレビ放送法などにもとづく総務大臣の処分に対する不服の申し立てについて審査および議決をおこなうことになっている。

1 A

公正の原則

FCCは放送業者に対して、論争中の公共問題の討論に時間をさくことを義務づけ、反対意見にも妥当な発表の機会をあたえることを要求した。これは1949年につくられた「公正の原則」にもとづくもので、放送局の論説者を勇気づけ、論争を活発にしたが、言論と出版の自由を保障する憲法第1条修正条項に違反するという反対が根強く、87年、FCCはこの原則を廃止した。

日本には「公正の原則」のようなルールはないが、放送法第1条2項で放送の不偏不党、真実および自律の保障、表現の自由の確保を明記している。また放送法第3条2項で、放送番組の編集は政治的に公平であること、報道は事実をまげないこと、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることなどをもとめている。

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