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特定の刺激に反応して自動的におこる、一定方向への生まれながらの動き。刺激源にむかう動きを正の向性、刺激源から遠ざかる動きを負の向性という。同じ個体でも、刺激の強さや体内の生理状態により、同じ刺激に対して正負両方の向性をしめすことがある。向性(tropism)は、以前には動物体とか単細胞生物の全体の位置移動についても、もちいられた。現在では、移動は走性(taxis)として区別される。またtropismは、方向性の反応運動である「屈性」をも意味する。
植物の屈性については、ダーウィンが先駆けとなる研究をおこない、1880年に、植物の茎の成長点が光源のほうにまがることを実証している。この現象は正の屈光性として知られている。ダーウィンはまた、陰生植物について、明るい光源の反対をむく負の屈光性も観察している。屈曲は、細胞の伸長をひきおこす植物ホルモンであるオーキシンの作用による。 光のあたる側ではオーキシンが不活性化され、光のあたらない側が伸長する。そのため、光のほうにまがろうとするのである。正の屈光性があるために、植物はほかの植物の陰からのがれることになる。日光を刺激源とする正の屈光性は、向日性とよばれる。 植物の成長には、これ以外の反応もみられる。種子が発芽する場合、幼根は下にむかう。これは、正の屈地性または向地性として知られている。このおかげで、植物は土壌中に固定されるのである。幼茎は重力にさからって上方にのびる。これは負の屈地性または背地性とよばれる。根の向地性も、土壌の深いところより地表近くに水が豊富にあるときにはかわることがある。この場合、根は水源にむかってのびようとする屈湿性をしめすことになる。 つる植物が接触に対して反応する性質は、正の屈接性あるいは向触性として知られている。つる植物の伸び方には、次のような方式がある。(1)キンレンカやネナシカズラのように、ほかの植物や物体に茎をまきつけるもの。(2)スイートピーやツタのように、葉が特殊化した巻きひげで付着するもの。(3)キヅタやビロードカズラのように、成長するとともに気根をだしていって付着するもの。 つる植物の先端が、もっとも暗い方向に、地上をはいのびていくことも観察されている。この反応は、負の屈光性または向暗性と名づけられている。
化学物質が刺激となる反応は、走化性あるいは向化性とよばれる。ハエやその他の昆虫は、腐敗(→ 腐敗と分解)した肉など卵をうむのに好適な場所からただよってくる特定のにおいにひきつけられ、そうした場所に卵をうむように刺激される。同じ昆虫が、ある種の煙や煙霧には負の走化性をもっているので、おいはらうのに利用される。 生物個体の内部では、化学的な誘引物質によって、個々の細胞や細胞塊がひきつけあったり、排斥しあったりしている。こうした細胞の特徴は細胞向性とよばれている。ほかによくみられる走性には、電流に反応してうごく走電性や、水流に反応して自分の向きをきめる走流性、あるいは流れ向性がある。流れが風であれば、走気性あるいは向風性となる。また、温度の差に応じた走温性もある。 多くの下等動物では、走触性によって、このましい部分にたどりついたり、なめらかな部分とそうでない部分を区別したりする。神経向性は、神経線維が再生していく方向が特定の物質によってひきつけあうか、あるいは反発するかによる。再生している神経線維がある部分のほうへ成長し、あるいは部分的にはいりこめば、その部分に対して正の神経向性をもち、神経線維がそれをさければ、負の神経向性をもっていることになる。
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